2013-01-01から1年間の記事一覧

本田悦朗『アベノミクスの真実』

アベノミクス本の紹介が続きます。 アベノミクスをどれくらいシロートにわかりやすく説明してくれているか? 景気がよくなるメカニズム、とくに賃金があがるメカニズムをどうやって説得しているか? あるいは批判しているか? という点に重点をおいて読んで…

中野純子『Say,good-bye』

45歳で急逝した中野純子の短編集である。 個人情報誌ってなに? 冒頭の短編「アタシに愛を!」は、もはや男子高校生ですらなく、結婚しているサラリーマンが主人公である。 個人情報誌に「アタシに精子を!」と題して「子供が欲しい。けど結婚したくない。こ…

岩田規久男『リフレは正しい』

ひきつづき、アベノミクス本の紹介です。 今回はリフレ派の本、岩田規久男の『リフレは正しい』(PHP)です。 岩田は、いまや日銀副総裁になった人で、日銀におけるアベノミクスの実行者です。 がんばって書いたけど、やっぱり学者的 岩田のこの本は、タイト…

山口かこ・にしかわたく『母親やめてもいいですか』

週刊アスキー2013年5月7-14日合併号に、「私のハマった3冊」を書いた。 【私のハマった3冊】母親の孤独と暴走が重い 今年一番衝撃を受けた1冊 その記事で「今年一番衝撃を受けた1冊」と4月早々に書いてしまった、その作品が本作、山口かこ・にしかわたく『…

小幡績『リフレはヤバい』

アベノミクス本の紹介を続けます。 評価の基準を再掲しておきますが、 アベノミクスの第一の矢である金融緩和について、どれくらいわかりやすく書いているのか、ということ。 次に、どういう理屈で経済が上向いていくか、そこを庶民・シロートにも説得的かつ…

あずまんの不幸

橋下市長の「慰安婦は必要だった」について東浩紀氏「問題発言なのか?」 - Togetter 東浩紀は、「問題発言なのか?」と言っている。こういう書き方をすれば「問題発言のはずがない」という反語に聞こえてしまうのはしょうがないと思う。 だけど、そのあと、…

アベノミクス本を読む

アベノミクスがにわかに注目されだして、すでに半年近くがたちます。しかし、ぼくは、原発事故のときに原発や放射能について何も知らなかったのと同じで、金融や金融政策についてほとんどドシロートの状況からこの問題に直面することになりました。 ぼくの周…

渡辺ペコ『にこたま』

※ネタバレがあります 弁理士として働く岩城晃平は10年来つきあっていた浅野温子という彼女がいるのに、魔が差したように同僚の高野ゆう子と1回だけセックスをしてしまう。そして、高野は妊娠してしまう。さらにいえば、高野は岩城と結婚する気はさらさら…

娘が絵本を読まなくなってしまった

5歳の娘は今年、年長である。絵本を読まなくなってしまった。 どうなっているかというと、マンガばかり読んでいるのである。児童マンガとしての『よつばと!』 - 紙屋研究所 実験的に与えたのだが、さすがにこれはどうなんだという不安の気持ちで見ている。…

宮田紘次『犬神姫にくちづけ』

SMと聞けば、ムチやローソク……というイメージをもつ人は、まあ、まだ一般的に多いよね。甘詰留太『ナナとカオル』を読んでも、こうした「道具」が最初は前面に出てくるから、そういう印象をはじめに持っちゃう人はけっこう多い。 もともと「攻め」と「受け…

待機者にもなれません

ぼくの娘はなぜ「待機児童」になれなかったか きょう(2013年4月3日付)の朝日新聞に「待機児童 数え方変だよね」という記事があった。朝日新聞デジタル:(くらし時々?)待機児童、数え方変だよね 育休延長も認可外利用も含まず - ニュース 保育園の待機…

土山しげるを語る

「FRIDAY Dynamaite」の2013年3月14日増刊号で土山しげる作品の魅力について語りました。土山本人のインタビューの上に、載ってます。 そう。この号は、今井メロの「特別付録DVD&スクープ袋とじカラー」がついている号です。ええ。 ぼくなりに土山作品につ…

今泉忠明『外来生物 最悪50』

『外来生物 最悪50』とあるので、もう完全に外来生物の話かと思うわけだけど、全然そうじゃない。最悪の50の動物、第3位とか野イヌですよ、野イヌ。どこが「外来」なのって感じです。 というか、この50の中に入っているものは、いくつも「これ、外来……

山崎童々『BET.』

※以下、一部ネタバレがあるわけですが。 週刊アスキー2013年3月12日号に「私のハマった3冊」を書いた。 【私のハマった3冊】ハンパな自分を殴りつける 仕事の厳しさがわかるマンガ 3冊のうち2冊までが山崎童々。どんだけ好きなんだってことですが、あー…

幕内秀夫『実践・50歳からの少食長寿法』

沖縄の長寿県転落についての2つの記事 沖縄県が長寿県から転落したことについての解説的記事が、今日(2013年3月20日付)の「朝日」「毎日」と同じタイミングで出た。 沖縄県が長寿県から転落したというのは、男性はすでに2000年には26位に転落してお…

竹内文香『カテメン』

表題の「カテメン」とは、「家庭メンター」の略で、生徒がかかえる主に人間関係上のさまざまな問題をいっしょに解決していくための助言者、つうかコーチみたいな人のことである。 「人のことである」なんつって今書いたけど、もちろん架空の職業である。 勉…

『40歳からはじめる健康学』『一生太らない体のつくり方』『40歳からの元気食「何を食べないか」』『「リスク」の食べ方』

つれあいが、夜中にコーラ(キリンメッツコーラ)を飲んでいた。なんか、ぼくのつれあいはいつも夜中に何か食べているように書いているので、空前のデブのように思っている人もいるかもしれないが、中肉中背の女性である。食べたものが一体どうなっているの…

秋☆枝『伊藤さん』

『伊藤さん』はラブストーリーの短編集である。 『煩悩寺』とあわせて、この短編集のどれをぼくが気に入ったかを拾い上げていけば、ぼくがなぜ秋☆枝をいいなと思ったのかがおのずと見えてくるはずだ。 『伊藤さん』は表題作がまずよかった。全体の3分の1を…

「週刊プレイボーイ」で秋☆枝『煩悩寺』を書評しました

2月4日号の「週刊プレイボーイ」の「このマンガがパネェ!!」のコーナーで……って言う前にちょっと聞いてくれよ。 ツイートもしたけど、地域の自治会の連合会みたいな会議があった。会議中に突然、その連合体の部会みたいなところに欠席つづきだったことを…

神田英雄「幼児期の文字と数」

5歳の娘を通わせている保育園では、英語とかはもちろん、「あいうえお」などは教えていない。しかし、生活発表会でしりとりをしたりする。このあたりのところをどう考えたらいいのか、よくわからなかった。 この保育園に来ている父母のかなりの部分は、早期…

山本おさむ『今日もいい天気』

山本おさむを最初に知ったのは、学生時代。学生運動仲間から「最近注目している漫画家がいる」といって、『遥かなる甲子園』を見せられたのである。いいなとは思ったけど、その友人が強烈にプッシュするほどにはのめりこめなかった(よくあることだ)。 その…

左派は成長が嫌いか?

何で日本の左派なひとは「成長」が嫌いか: hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳) (日本の)左派って成長が嫌いなの? まず日本の代表格的左派の一つである共産党はどうか。 大企業応援から くらし応援へ 日本共産党の「成長戦略」 http://www.jcp.or.jp/toku…

週プレで『アンモラル・カスタマイズZ』を書評しました

「週刊プレイボーイ」1月21日号でカレー沢薫『アンモラル・カスタマイズZ』(太田出版)について書評を書いた。↓『アンモラル・カスタマイズZ』はここで試し読みができる。 http://www.poco2.jp/comic/unmoral/ 風俗とかトラックとか、男臭い雑誌ばかり出…

茂木久美子『人の5倍売る技術』

5倍売るとは需要が5倍になること 人の5倍売る技術だそうである。 5倍か。 5倍売るってどういうことなんだ。 買い手の側からみると、需要が5倍になることだ。ほしいって人が5倍もふえることか。すごいよね、それって。 市場経済って、需要と供給にもと…

ふみふみこ『ぼくらのへんたい』

テーマに「性」がどっかりと座る それぞれの思惑と動機で女装をはじめた3人の男子中学生がオフ会を開くところから物語が始まる。 ふみふみこのマンガは、何と言っても絵柄に特徴がある。絵本めいていて、絵柄だけ単体でそこにおかれたら、現実の生々しさは…

「週刊プレイボーイ」『このマンガがすごい!』などに掲載

また、紙の媒体で書いた文章をお知らせするのを忘れた。前も言ったように、ログとして残す意味でも書いておく。 お知らせしてあるもの一覧は、 http://d.hatena.ne.jp/kamiyakenkyujo/archive で「紙媒体」をクリックしてもらうと出てくる。または、 http://…

適菜収『キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』』

適菜収によるニーチェ『アンチクリスト』の現代語訳『キリスト教は邪教です!』を読んだ。 ニーチェが言いたいのは、イエス本人はまあまだいいとしても、そのあとを受けたパウロが、そのイエスの考えをイエスと似ても似つかぬものにつくりかえてしまい、それ…

坂口安吾『堕落論』

あと、『戦争と一人の女』と坂口の『堕落論』とのかかわりについても書いておこう。 私は偉大な破壊が好きであった。私は爆弾や焼夷弾(しょういだん)に戦(おのの)きながら、狂暴な破壊に劇(はげ)しく亢奮(こうふん)していたが、それにも拘らず、このときほど…

『戦争と一人の女』続論

近藤ようこ・坂口安吾『戦争と一人の女』についての感想は書いたとおりだけども、坂口の『戦争と一人の女』の原文を読んでいていろいろと思うことはあった。 坂口の『続戦争と一人の女』には次のようなくだりが出てくる。 私はだいたい男といふものは四十ぐ…

クリストファー・ロイド『137億年の物語 宇宙が始まってから今日までの全歴史』

歴史とは論理である 歴史は中学生までは「得意」で「好き」なものであり、そういう意識でずっときていたけど、高校・大学・社会人になってロクに知識の更新をしなければ、「得意」で「好き」なものではなくなる。まあ、「えーっと南北朝時代って鎌倉時代の前…