あいちトリエンナーレの話はどこが問題なのか

あいちトリエンナーレで「表現の不自由展、その後」の展示が中止になった事件について、いろいろ対立や分断もあるようなので、整理するために、いまぼくが理解している範囲で以下書いてみる。 構図1:脅迫者―作家 この事件のもとになっている構造は、図1で…

スターリンは意気消沈していたのか問題

大木毅『独ソ戦』には独ソ開戦時のスターリンの様子については何も書かれていない。 kamiyakenkyujo.hatenablog.com 独ソ開戦時に“スターリンが意気消沈していた”説について、不破哲三は『スターリン秘史』で批判をしようと企てていた。 スターリン秘史?巨悪…

拙著『マンガの「超」リアリズム』が大東文化大学の一般入試に

拙著『マンガの「超」リアリズム』(花伝社)の『この世界の片隅に』評が大東文化大学の2019年度一般入試「国語」の問題文として出題されました。私の町内会系新書はこれまでも入試・模試などに使われたことがありましたが、マンガ評からは初めてです。 http…

大木毅『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』

専門家でもない、当該問題のシロートであるぼくは何を期待してこの本を手にしたのか。 独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書) 作者: 大木毅 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/07/20 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る シロートであるぼくが本書…

有間しのぶ『その女、ジルバ』

「しんぶん赤旗」日曜版2019年7月28日号で今年連載している、もしくは刊行が完結した「戦争マンガ」を書評した。 以下の4作。 有間しのぶ『その女、ジルバ』 山田参助『あれよ星屑』 伊図透『銃座のウルナ』 小梅けいと『戦争は女の顔をしていない』(スヴ…

えっ、「野党5党派で政権交代を目指す」!?

これホントに言ったの? 立憲民主党の枝野幸男代表は21日夜、野党共闘について「3年前に(参院選で)初めてこういった形を取った時よりは、いろいろな意味で連携が深まっていると思っている」と評価した。そのうえで「この連携をさらに強化して、次の総選…

オカヤイヅミ『ものするひと』

あるテレビ番組に出演したとき、自分の肩書きを「作家」と紹介されたことがある。 事前に「肩書きは何にしましょうか?」と問われ、著作の名前を挙げて「『……を書いた紙屋高雪』ではどうでしょう」と提案したのだが、相手は「ご著書は紹介するんですけどね……

山本章子『日米地位協定』

この参院選でも日米地位協定は争点 日米地位協定って、実は今回の参院選挙でほとんどの政党が重点公約にかかげてるんだよな。 自民党 米国政府と連携して事件・事故防止を徹底し、日米地位協定はあるべき姿を目指します。 https://jimin.jp-east-2.storage.a…

ヤマシタトモコ『違国日記』

祖父母・父母・兄弟の6人で暮らしていた田舎の実家を「暮らしにくい」と思ったことはその当時なかったが、家を出て一人暮らしを続け、やがて家族を持つ身となってみて、今あの実家に戻りたいかといえば、やはりもう戻って生活する気はない。つうか、もうで…

災害で2階に逃げればそれでいいのか? 立退くべきなのか?

先ほどNHKスペシャル「誰があなたの命を守るのか “温暖化型豪雨”の衝撃」を見ていた。 学んだことは多かったが、疑問もいろいろ感じた。 避難情報を流しても住民が避難しない問題が取り上げられていた。 この問題は以前ぼくはブログに書いたし、同趣旨のこと…

プールカードはなぜハンコでないとダメ?と質問したらクレーマーなのか

togetter.com このtogetterについて、話に入る前に言っておきたい。 このまとめのタイトルが「電話してみた」になっているけど(2019年6月29日17時時点)、まとめを読めばわかる通り、この保護者は学校に「電話して」などいない。「担任から電話がかかってき…

デービッド・アトキンソン『新・生産性立国論』

著者アトキンソンによれば、人口減少の日本では生産性を上げる以外に未来がなく、著者はそのための3つの政策を提唱している。 デービッド・アトキンソン 新・生産性立国論 作者: デービッドアトキンソン 出版社/メーカー: 東洋経済新報社 発売日: 2018/02/2…

大島智子『セッちゃん』

誰とでも寝る「女の子」を主人公にした大島智子『セッちゃん』。 以下ネタバレがある。 本作を読んだとき、すぐに思い浮かべたのは、岡崎京子の『リバーズ・エッジ』だった。 そのことは他の人にもそうらしく、例えば、下記のインタビュー記事では、インタビ…

『家系図を作ろう!』

ぼくも家系図を作るのにハマっている。 note.mu ぼくが参考にしたのはこの本。『家系図を作ろう!』。 家系図を作ろう エイムック 出版社/メーカー: エイ出版社 発売日: 2015/12/02 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 120ページほどでイラス…

小学校の運動会は要らないなと思った理由

この記事を読んで思ったこと。 news.yahoo.co.jp 特にこの点。 ●運動会の目的と目標がきちんと明確になっていない。 関係者のあいだで(保護者だけでなく、おそらく教職員の間ですら)腹落ちしていない。 ●その目的、目標に照らして適切な手段となっているか…

西餅『僕はまだ野球を知らない』4

勝敗の明暗を残酷な形で示すスポーツというものは、どうしても「格下」と相手を見る意識が生まれるものなんだろう。 僕はまだ野球を知らない(4) (モーニング KC) 作者: 西餅 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2019/04/23 メディア: コミック この商品を含む…

FLOWERCHILD『イブのおくすり』

このマンガを何度も読み返してしまうのは、興奮する中身だったから。しみじみ、今自分は百合にエロしか求めていないなと思った。 イブのおくすり (ヤングキングコミックス) 作者: FLOWERCHILD 出版社/メーカー: 少年画報社 発売日: 2019/05/10 メディア: Kin…

大門実紀史のMMT論

共産党の大門実紀史議員がMMTについて質問をしていた。 www.jcp.or.jp えっ、共産党が? MMT? というので、質問が議事録になった機会に全文を読んでみた。 なんで関心を持っているのか。 ぼくは薔薇マークキャンペーンに賛同をしていて、薔薇マークの趣意書…

黒木智子のどこがいいのか

『私がモテないのはどう考えてお前らが悪い!』の主人公・黒木智子はずっと一人ぼっち(「ぼっち」)であることをネタにしてきたマンガ作品だが、ここへきて奇妙な形で次々と友人ができはじめる展開になっている。その様は「コミュニケーションの牢獄」である…

『響』と『月と六ペンス』

天才的な高校生の小説家を描いたマンガ、『響』について、つれあいは「たかが高校生に芥川賞はともかく直木賞を取れるような文章が書けるはずがない」「しかも本人に社会性がなく、経験もない。世事に疎そうだし」という批判をした。 響?小説家になる方法?(…

「人権=思いやり」という洪水のような「教育」

人権は道徳ではない、っていう、あの話だけどね。 fairs-fair.org 特にこの記事のこの部分。 谷口さんは「人権は道徳ではありません」と話す。 「人権啓発として『みんなで仲良くしましょう』というキャンペーンをよく見ます。これは裏返すと『仲良くできな…

永井義男『江戸の糞尿学』

なぜか連休中に、自分の娘の参加する少年団のキャンプで、江戸時代について話すことになった。 子どもたちが観た劇に江戸時代の屑屋が出てくるので、江戸時代がどんな時代で、どんなリサイクル社会だったかを子どもたちに伝えたいというのが団の意向なのであ…

日高トモキチ『ダーウィンの覗き穴〔マンガ版〕―虫たちの性生活がすごいんです』

原作はメノ・スヒルトハウゼンの同名書。*1そのマンガ版である。 ダーウィンの覗き穴〔マンガ版〕──虫たちの性生活がすごいんです 作者: 日高トモキチ 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/04/03 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る ダーウィ…

西口想『なぜオフィスでラブなのか』

タイトルを問題意識にして、11の小説とマンガからそれを考えていくという手法。 本書に興味を持ったのはタイトルからだったが、本書第5章にある綿矢りさ『手のひらの京』を題材にした記述を読んでいた時に、弁護士の牟田和恵が書いた新書『部長、その恋愛…

PTA問題に市長はどこまで首をつっこめるか

兵庫の川西市長がPTA改革のための議論の検討会を設けるという記事を読んだ。 www.asahi.com 市長選の公約だというのでみてみると、はあはあなるほど、確かに「【2019年度に】保護者の負担軽減に向け『PTAのあり方検討会』を設置します」とあるね。 koshida.n…

学研の模擬試験に拙著が

拙著『“町内会"は義務ですか? —コミュニティーと自由の実践 』(小学館新書)の一部が学研の模擬試験(地域の小論文)に使用されました。 「次の文章を読み、地域のコミュニティー意識を持つために必要なことについて、あなたの意見を書きなさい」的な設問で…

蓑輪明子「保育士の処遇の現状をどう変えていくのか――愛知保育労働実態調査を手がかりに」

統一地方選挙が始まっている。 当然そこに「保育園に入れない子どもをなくす」という公約も入ってくるだろうけど、肝心の保育士がいないという問題に多くの自治体が直面している。 「保育士は確保されている」というトンデモ認識の福岡市 すでにいろんな街で…

ナナシ『イジらないで、長瀞さん』

「スクールカースト」とまでは言わないけども、文化圏が違うクラスの女子、特にギャル的な女子から、相当にからかわれながらちょっかいを出されて「構われる」、つまりそのからかいは、実は自分への好意じゃないのか……?っていう話の作りかたは、ぼくの中学…

中原淳+パーソナル総合研究所『残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか?』

残業の削減を「データとエビデンスに基づく分析」(本書p.7)によって「具体的な解決策を提案」(同前)ことを売りとする。 残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか? (光文社新書) 作者: 中原淳,パーソル総合研究所 出版社/メーカー: 光文社 発売…

石黒正数『天国大魔境』1・2

石黒正数『天国大魔境』は何か大きなカタストロフがあった後の日本を描いている。これから解かれるべき謎(の一つ?)が2巻でようやく設定されたが、まだ設定全体さえ見えてこない。 だから評価もしようがないが、かと言って物語の切片、絵、セリフが楽しめ…