萩本創八・森田蓮次『アスペル・カノジョ』8巻のワンシーンへの違和感

『アスペル・カノジョ』は、新聞配達のアルバイトをしながら、自分の好きなマンガを細々とウェブで発表して暮らしている男性(横井)のもとに、その作品を読んでどうしても会いたくなった女性(斎藤)がやってくる話である。 横井は人付き合いが苦手でおそら…

伊東順子『韓国 現地からの報告』

リモート読書会で伊東順子『韓国 現地からの報告──セウォル号事件から文在寅政権まで』(ちくま新書)を読んだ。 韓国 現地からの報告 (ちくま新書) 作者:伊東 順子 発売日: 2020/03/06 メディア: 新書 韓国に住んでいる著者が話題ごとに書いた短い文章の集…

横山旬『午後9時15分の演劇論』1巻

美大の夜間部学生が集まって、1本の演劇を仕上げる話である。 一度も舞台経験がない2年生の古謝タダオキが自分なりにカンペキと思うビジョンをもとにいきなり演出の役割を買って出るところから物語が始まる。 根拠のない自信で出発し、空回りし、周囲から…

日米同盟=核の傘の下での核兵器禁止条約参加は可能か

核兵器禁止条約が発効の見通しとなった。日本の世論調査でも、日本政府に批准を求める声は大きい。 www.asahi.com 14、15の両日に、朝日新聞社が実施した全国世論調査(電話)で核兵器禁止条約について尋ねると、日本が条約に「参加する方がよい」は59%で、…

結びつけられない

玉虫で装飾された馬具が福岡県内(古賀市)の古墳の出土品から確認されたという記事を読んだ。 www.nishinippon.co.jp 「玉虫装飾」という見出しに何の感興ももよおさずに、ぼーっとした頭で記事を読み始めた。「国内で玉虫装飾の馬具が確認されたのは初めて…

大きな枠組みに目を向けさせないようにする

なぜ「自分のできること」の範囲に限定するのか 娘(中1)が「環境新聞」というのを学校の宿題で作っていて、横から眺めていた。 温暖化について書いている。 「結論は自分ができることを書かないといけないんだ」と言って、ムダな電気を消すとかそういうこ…

救援新聞インタビュー「検察は、何故有罪に固執するのか」

国民救援会の機関紙「救援新聞」2020年11月5日号で、「検察は、何故有罪に固執するのか」として、検事の経験のある市川寛(弁護士)が、笹倉香奈(甲南大学法学部教授)のインタビューに答え、その一部が紹介されている。 大変興味深く読んだ。 わからない人…

坂井恵理『シジュウカラ』

『シジュウカラ』は、売れなくなった40歳の女性マンガ家(佐々木忍)がアシスタントに来た22歳の男性(橘千秋)に恋をしてしまうという物語である。 …と書くと「あー、ハイハイ」と言われてしまいそうだが。 シジュウカラ : 1 (ジュールコミックス) 作者:坂…

星乃治彦『赤いゲッベルス ミュンツェンベルクとその時代』

学生運動をしていた頃の友人に勧められて読む。 赤いゲッベルス ミュンツェンベルクとその時代 作者:星乃 治彦 発売日: 2009/12/18 メディア: 単行本 ヴィリー・ミュンツェンベルクの評伝である。 ミュンツェンベルクは、ナチス期のドイツでコミュニストの側…

ユニ『憎らしいほど愛してる』

上司と部下の恋愛を描いた「社会人百合」である、ユニ『憎らしいほど愛してる』は昨年買って読み、「ほうっ…」と堪能したわけだが『このマンガがすごい!』のベスト5にはあげずに「次点」ということでコメントで紹介するにとどまった。 憎らしいほど愛して…

石牟礼道子『苦海浄土』

リモート読書会は石牟礼道子『苦海浄土』だった。 新装版 苦海浄土 (講談社文庫) 作者:石牟礼 道子 発売日: 2004/07/15 メディア: 文庫 水俣病について書かれたということは有名な本だが、果たしてこれはノンフィクションなのか、小説なのか。石牟礼は「新し…

山田昌弘『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』

タイトルに惹かれて読んだ。 日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?~結婚・出産が回避される本当の原因~ (光文社新書) 作者:山田 昌弘 発売日: 2020/05/29 メディア: Kindle版 山田がいうには、 日本はスウェーデン、フランス、オランダの対策をモデルにし…

映画『82年生まれ、キム・ジヨン』

(映画のネタバレが少しあります) リモート読書会の題材となったので、石牟礼道子『苦海浄土』を初めて読んだ。恥ずかしながらそれまで一度も読んだことはなかったのである。 新装版 苦海浄土 (講談社文庫) 作者:石牟礼 道子 発売日: 2004/07/15 メディア: …

「障害」と「障がい」

福岡県自治体問題研究所のメルマガである「福岡みやしたメールじょうほう」を読んでいたら、出し抜けに「紙屋高雪氏が近著で議論しているように…」とぼくの名前が出てきたのでびっくりした。 これは同研究所事務局長の宮下和裕の一文の表現をめぐっておきた…

高山理図・高野聖『異世界薬局』

「現代の知識で過去にすごい活躍をする」という設定はゾクゾクする。 自分の原体験は小学校の登下校中に友だちと『ドラえもん』の「ホラふきご先祖」で笑い合ったからに違いない。 この設定を作品としてちゃんと読んだ最初は、横山光輝『時の行者』である。 …

藤野裕子『民衆暴力』

藤野裕子『民衆暴力 一揆・暴動・虐殺の日本近代』(中公新書)についての感想です。

「スペリオール」2020年10月23日号をぼーっと読む

「ビッグコミックスペリオール」2020年10月23日号を読む。 ビッグコミックスペリオール 2020年21号(2020年10月9日発売) [雑誌] 作者:ビッグコミックスペリオール編集部,太田垣康男,矢立肇,富野由悠季,奥浩哉,津村マミ,久部緑郎,河合単,石神秀幸,乃木坂太郎…

「文化はぜいたく品」という気持ち

日本コリア協会・福岡の「日本とコリア」240号(10月1日号)に、「これでいいのかニッポン!」というコーナーがあり、「『文化はぜいたく品』という気持ち」という一文を寄稿しました。まあ、エッセイです。 コロナで文化芸術に支援することは「ぜいたく」…

シーナ・アイエンガー『選択の科学』

今度のリモート読書会で取り上げたのは、シーナ・アイエンガー『選択の科学』(文春文庫、櫻井祐子訳)である。 選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義 (文春文庫) 作者:シーナ アイエンガー 発売日: 2014/07/10 メディア: 文庫 アイエンガーの…

『こわい顔じゃ伝わらないわよ』『二月の勝者』

「勉強が全然楽しくない」と泣く 田舎の中学校とはいえ、自分が「優等生」であったものだから、自分の物差しで子どもを測ってしまう。定期考査で平均点とか取ってくると、正直がっかりする。しかも全教科そんな具合だからなおさらがっかりする。点数亡者めと…

やきそばかおるの「ラジオの歩き方」や沙村広明『波よ聞いてくれ』など

「しんぶん赤旗」に、やきそばかおるの「ラジオの歩き方」が連載されている。21日付でその「第28歩」が掲載された。9月に来襲した台風10号で、風変わりな宮崎放送における台風情報報道を紹介していた。 ぼくはこの宮崎放送のラジオを聴いていないので、やき…

自公政権の高支持率は野党が連立政権としての協議に入らないからではないか

安倍前首相の考えるレガシーは経済 20日付の読売に安倍前首相のインタビューが載った。 www.yomiuri.co.jp そこで彼は自分の政権のレガシーはなんだと思うか聞かれ、こう述べている。 後世に「安倍政権の時は良かった」と生活実感として言ってもらえれば、一…

『君は放課後インソムニア』と『花野井くんと恋の病』

※ネタバレがあります。 『君は放課後インソムニア』 オジロマコト『君は放課後インソムニア』は、不眠症(インソムニア)の男子高校生・中見丸太(なかみ・がんた)が、今は誰も使っていない学校の天体観測ドームで、やはり不眠症で同じクラスの女子高生・曲…

「自助・共助・公助」論について2つ言いたい

菅義偉の「自助・共助・公助」論が議論になっている。 www.huffingtonpost.jp agora-web.jp これらの記事にあるように、「自助・共助・公助」論は菅個人の主張ではない。自民党政治の根幹に座る太い考え方である。つまり菅個人の「思いつき」ではなく、イデ…

「安倍政治」は終わったのか・続くのか

安倍首相が病気を理由に辞意を表明して、安倍政権は退陣することになった。 いくつかの安倍政権論、安倍首相論が出ているけども、肝心なことは、安倍政権がやっていた政治、すなわち「安倍政治」は終わったのか・続くのか、まだ全然判断できないということだ…

渡辺ペコ『1122』を議論して夫婦で対立した日

リモート読書会は渡辺ペコ『1122』だった。(以下、一部ネタバレがあります) kamiyakenkyujo.hatenablog.com kamiyakenkyujo.hatenablog.com つれあいも参加している少人数での読書会なので、そこでこの「公認不倫」マンガを取り上げるというのはまこと…

文学は国語にとってどう役立つのか

議論になっているこれだが。 ozean-schloss.hatenadiary.org 本論の前に一つ。 そもそもこのブログが批判している元記事「『本が読めない人』を育てる日本、2022年度から始まる衝撃の国語教育」は一体誰が書いた記事なのか? diamond.jp 署名が「榎本博明」…

「社会を明るくする運動」の宿題作文のこと

中1の娘の短い夏休みの宿題の一つが「社会を明るくする運動」作文である。学校が配布した課題一覧表には「1年生は全員取り組むこと。2・3年生は自由」とされている。選択課題でなく必須なのである。 「社会を明るくする運動」の概要がプリントに書いてあ…

坂田聡『苗字と名前の歴史』

2006年に出ていた本であるが、最近福岡市の博物館の1階にある小さな書店に立ち寄った際に立ち読みし、面白そうなので購入した。 苗字と名前の歴史 (歴史文化ライブラリー) 作者:坂田 聡 発売日: 2006/03/01 メディア: 単行本 ぼくの問題意識は「氏と苗字は…

俺もヒョンビンになれる 「愛の不時着」考

熱心な同僚に勧められて「愛の不時着」を観る。 韓国の財閥の令嬢であり、有能な会社経営者である女性ユン・セリがパラグライダーの事故で北朝鮮領内に不時着してしまい、北朝鮮の将校であり実は政府高官の息子である大尉リ・ジョンヒョクと恋に陥るという物…