共産主義では労働時間の抜本的短縮がどうして可能なのか

どうして共産主義では労働時間の抜本的短縮が可能になるのでしょうか。 いろんな説明があります。 3つの説明 一つ目の説明。労働時間が「必要労働時間」(自分が生きるための衣食住を生産する労働)と「剰余労働時間」(それを超える分)に分かれ、「剰余労…

桐野夏生『燕は戻ってこない』

本作はオンライン読書会で読んだ。 燕は戻ってこない (集英社文庫) 作者:桐野夏生 集英社 Amazon NHKでテレビドラマにもなっている。やっていることは知っていたが、読書会が終わった後で、一度だけ観た。 www.nhk.jp 桐野夏生の原作についての感想をここで…

矢寺圭太『ずっと青春ぽいですよ』

こりゃあいい。 最近本作を何度も見返してしまっている。 高校のアイドル研究会に集うさえない3人の男子生徒(山田・杉森・河野)が、ギャル2人(渡辺・鯖戸)をアイドルとしてプロデュースさせてくれないかと頼み込むところから唐突に物語は始まる。 もち…

斎藤幸平+松本卓也編『コモンの「自治」論』

本書は、「自治研究会」と題された研究会のなかで、各章の著者がそれぞれの現場の「自治」論をもちより、討論を行って完成させたものである。(本書p.277) 現代資本主義が地球をはじめ人民の共有物=コモンを食いつぶし、切り売りしながら「略奪による蓄積…

『室外機室 ちょめ短編集』『人はどう死ぬか』

タイトルの通り、著者ちょめの短編集である。初出を見ると5編のうち「個人出版物」が4編だから、ほとんど同人誌からのものであろう。 室外機室 ちょめ短編集 (アクションコミックス) 作者:ちょめ 双葉社 Amazon 軽い気持ちで読む。 2つ目の短編「21gの冒…

澤田誠『思い出せない脳』

リモート読書会で澤田誠『思い出せない脳』を読む。 思い出せない脳 (講談社現代新書) 作者:澤田誠 講談社 Amazon 研究関係の人が参加していて、「またどうせわかってもいないことをわかったように素人相手に書いた本だろ…」的に思って読み始めたそうである。…

KUJIRA『ハグ キス ハグ』

既婚者との不倫に始末をつけた木原蓉子が、同じマンションに住む(そしてかつて同じ職場で働いたことがある)年下の男性・藤原広海と新しい恋愛をはじめる話である。 ハグ キス ハグ(1) (BE LOVE KC) 作者:KUJIRA 講談社 Amazon KUJIRAはさあ、『ホンノウス…

「楽待」の自治会問題記事にコメントが載りました

不動産投資新聞「楽待」で2024年5月25日付、編集部執筆の「謎の組織『自治会』、加入強制が退去の原因に…大家vs自治会のトラブル勃発 加入は義務じゃない、それでも「自治会」トラブルが減らない理由は」という記事で、取材を受けて、ぼくのコメントが載って…

池辺葵『ブランチライン』6巻

共産党の志位和夫は、社会主義——生産手段の社会化によって労働(賃労働)の性格は変わるという話をマルクスを引いて語っている。 労働の性格も大きく変わるでしょう。マルクスは、1864年に、労働者の国際団体――国際労働者協会(インタナショナル)を創立…

頼清徳の演説の評価

台湾の新総統・頼清徳の就任演説。 長くはないので全文を読んでしまった。 www.yomiuri.co.jp 日本の新聞はどう評価しているのかなと思っていたが、 (1)「現状維持」 (2)中国との対立を意識してかなり踏み込んだ表現をした という二手の解釈に分かれた…

運動の習慣をつけるには

たまたま目についたこの話題(すでに4月のエントリだが)。 blog.hatenablog.com 自重の筋トレを初めて7年目になる。 効果があるかどうかは別にして、続けていることは間違いないから「なぜ続いているか」について少しくらい書いてもいいだろう。 といって…

「台湾住民の民意尊重」と「一つの中国」原則

5月20日に台湾新総統の就任演説への注目 5月20日に台湾の新総統(頼清徳)の就任演説がある。 そこで何が語られるかが注目されている。 中台関係の緊張が高まるかもしれないからだ。 頼氏の当選阻止を狙い、「トラブルメーカー」などと名指しし、警戒して…

伊集院静『海峡』

原爆の写真を子どもに見せるべきかどうかについての話題。 digital.asahi.com ジョージア駐日大使のティムラズ・レジャバさん(36)は2月末、家族で広島平和記念資料館(広島市)を訪れました。原爆で黒く焼け焦げた弁当箱を見つめる長女(当時4)の写真を、…

ケアの社会化

記事は、斎藤真緒(立命館大学教授)のオンライン講座の概要を伝えるものだ。『福祉のひろば』(総合社会福祉研究所編集)2023年7月号に掲載されていた。 sosyaken.jp 「ケアラー支援」と聞けば「あ、ヤングケアラーへの支援の話ですね?」と思ってしまう人…

『明日、私は誰かのカノジョ』と『青にふれる』の主人公の母親

をのひなお『明日、私は誰かのカノジョ』が完結した。 本作はテレビドラマにもなったが、自分なりのコンプレックスを抱えている女性(あるいは男性)が登場し、パパ活、美容、ホスト狂い、スピリチュアルなどにハマりそれと格闘する、オムニバス形式の物語だ…

Central Japan Railwayと『テツぼん』

英語の勉強…というほどではないが、毎週水曜日の日経の夕刊に載る「Step up English」の経済記事をわりと楽しみに読む。経済ニュースってあまり読まないので英語を読みがてらその種の話題を知ることになり、「へえ、そんなことが流行ってんの」とか素直に感…

政治家としての大局観・歴史観

「読売」はウクライナ戦争について識者に意見を聞いているのだが、今日(2024年4月17日付)載っていた横手慎二のインタビューが面白かった。 www.yomiuri.co.jp 横手の本については以前感想を書いたことがある。 kamiyakenkyujo.hatenablog.com 横手のインタ…

伊藤整「組織と人間」

「組織のようなものにしばられたくない」と若い人たちがどんどん表明しだしたのは、大学での学生運動が下火になりつつあった1970年代後半以降だろう。1980年代は「政治の季節」が去って、個人主義・消費社会へ…と総括されることがあり、そういう単純な総括自…

志村貴子『おとなになっても』1-10巻

志村貴子『おとなになっても』が完結した。 おとなになっても(10) (Kissコミックス) 作者:志村貴子 講談社 Amazon 休職に追い込まれて家にいる間よく読んでいた。 たまたま飲みに入ったお店で知り合った平山朱里と大久保綾乃は一夜で恋に落ちてしま…

「不適切にもほどがある!」を観ての感想

ドラマ「不適切にもほどがある!」を娘が観ていて、家族で観るともなしに観ていた(最近このパターン多し。「光る君へ」もそうだ)。 www.youtube.com 昭和末期の体育教師・小川が令和にタイムスリップしてくるという設定のドラマで、初回を観た時、ぼくはバ…

石井遼介『心理的安全性のつくりかた』

リモート読書会の次のテキスト。ぼくはファシリテーターである。 心理的安全性のつくりかた 「心理的柔軟性」が困難を乗り越えるチームに変える 作者:石井遼介 日本能率協会マネジメントセンター Amazon ハラスメントは、それをやってしまったら人権侵害にな…

ハラスメントは組織の外で認定してもらうべきだ

ハラスメント問題の処理——認定や救済は、組織や団体の中で閉じ込めて、外に漏らしてはいけないだろうか? ハラスメントは日本では現在違法——犯罪扱いされていない。 しかし、ハラスメントの中でも例えば刑法に触れる性暴力に該当する場合は、さすがに組織内…

ハラスメント被害者を「厄介者」扱いする組織

しんぶん赤旗1月22日付 しんぶん赤旗1月22日付に「自衛隊セクハラ 深刻さ告発」「現役隊員の国賠訴訟」という記事が載った。 航空自衛隊那覇基地でベテラン隊員から受けたセクハラに対して組織が不利益防止措置などをとらなかったとして、昨年2月に国を相手…

山崎聡一郎『こども六法』

山崎聡一郎『こども六法』を娘と読んでいる。 夕食が終わり、こたつでぼくがゆったりとしていると、保育園のころに「絵本を読んでほしい」と言ってきたときのようなのと同じニュアンスで、高1の娘が本を持ってやってくるのだ。 別に「勉強しよう!」とかそ…

『ねじ式 紅い花 漫画アクション版 つげ義春カラー作品集』

奥付には「2024年2月24日」発行とある。 ねじ式 紅い花 漫画アクション版 つげ義春カラー作品集 作者:つげ 義春 双葉社 Amazon 本書は、1969年に刊行された「漫画アクション」誌に加え、「ゲンセンカン主人」(アクションコミックス)「ガロ増刊号・つげ義春…

鈴木透『食の実験場アメリカ』

リモート読書会で読んだ。 食の実験場アメリカ-ファーストフード帝国のゆくえ (中公新書 2540) 作者:鈴木 透 中央公論新社 Amazon サブタイトルが「ファーストフード帝国のゆくえ」なので、ははあ、アメリカ=ファストフード帝国批判なんだろうなと思って読…

ローズマリー・サリヴァン『スターリンの娘 「クレムリンの皇女」スヴェトラーナの生涯』

スターリンの娘、スヴェトラーナ・スターリナあるいはスヴェトラーナ・アリルーエワの生涯を知ったとき、その激しさと寂しさに、複雑な思いがこみ上げてくる。 スターリンの娘(上):「クレムリンの皇女」スヴェトラーナの生涯 作者:ローズマリー・サリヴァン …

ASEANは「反共の砦」だったか? 民青新聞を読んで

共産党を「相談相手」にしている民青(日本民主青年同盟)が出している新聞(機関紙)に「民青新聞」がある。その2024年2月12日号を興味深く読んだ。 というのは、「ASEAN(東南アジア諸国連合)は『反共の砦』として出発したのではなかった」という歴史観が…

『ニッポン政界語読本 単語編』『会話編』『公務員の議会答弁言いかえフレーズ』

政治家や役人が使う言葉の異常さ・奇妙さは、日々SNSで指摘され、ネタにされている。中には「ご飯論法」のように、公式の答弁としての基礎を破壊してしまうような重大性を抱えている言葉の使い方さえある。 本書はイアン・アーシーという、一見すると「ずい…

おづまりこ『ゆるりより道ひとり旅』

40代女性のコミックエッセイである。表題の通りだ。 本作では、京阪神の各所に出かけて食べ歩きをしている。 ゆるり より道ひとり旅 (文春e-book) 作者:おづまりこ 文藝春秋 Amazon この作者については、つれあいの方がよく知っていた。彼女がネットでよく見…