2004-01-01から1年間の記事一覧

小川洋子『博士の愛した数式』

やあ! よいこのみんな。夏休みの宿題はちゃんとやってるかな? そんなわけないよね! きょう(8月14日)あたりが、ハッキリ言って、焦りを覚えはじめる、まさにそのときだよね。 そんな後先を考えずに「キリギリス」生活を送ってきた君のために、きょうは…

中沢新一『はじまりのレーニン』

知り合いの左翼の女性に、「もし子どもが生まれたらどんな名前をつけたいか、あるいは、その名前にどんな人生の期待をこめるのか」と聞いたとき、彼女は「この世界が美しいと思ってくれる子になってほしい」と答えた。 いい答えだ、と感心した。 左翼や共産…

中村隆英『昭和経済史』

講義をまとめたシリーズで、口述の親しみやすさと、それが卑俗に流れず、その道の権威らしく、本質的な問題を実に簡単明瞭に、しかもわかりやすい例で解説する。 たとえば高度成長期に電力の発展がおいつかずに、それがボトルネックであったことを、“計画的…

J.ジグレール『世界の半分が飢えるのはなぜ?』

入門の本はないかとおもって、よく、子どもむけの本を買う。 子どものむけの本は、「わかりやすい」、ということもあるが、しばしば「本質的」であるからだ。 世界の半分が飢えるのはなぜ?―ジグレール教授がわが子に語る飢餓の真実 作者: ジャンジグレール,J…

久野秀二「環境問題と史的唯物論」

ある有名なモノ書きのメールに、「マルクスは合理的な資本主義をめざしていたと思う」という一文があった。それはちがうだろう。 この人は、おそらく旧ソ連の実態から直接にマルクスをイメージし、「どちらも同じ19世紀思想」と考えて、「大量生産、大量消費…

北原みのり『フェミの嫌われ方』

フェミニストである筆者・北原みのりが批判する、つんく『LOVE論』をまずごらんください(北原の引用より孫引き)。 「おかんな女の子〔母親っぽい女、の意〕とつきあったら、きっと一緒にご飯食べるときなんかも知らないうちに人の箸を取ってくれちゃったり…

浅尾大輔「家畜の朝」

第35回新潮新人賞を受賞した小説(「新潮」2003年11月号に掲載)。こういう人。 言葉というものを、貧しいながら、多少は武器にできるおかげで、ぼく自身が救われた、ということは少なくない。言葉によって、世界というものを再構成できるからだ。 もう少し…

橋本毅彦・栗山茂久『遅刻の誕生』

ああ、もう。ぼくにとって、遅刻は高校以来の宿敵だ。 長時間電車通学によって始まった「時間との闘い」は、やがて、小中学校時代は(わが家において)絶対に許されなかった「遅刻」というものを体験させた。 次第にひどくなっていくぼくの遅刻。日中はほと…