いやーなんだろうね。
なんで何度も何度も読んじゃうんだろうね。
コールセンターで働いている女性「大島さん」=大島藍(32)が主人公。風俗で働いていたことがある。そして、大島にはコールセンターの中は特にひどい人間関係というわけではないのに、なぜかみんなと気が合わず、あまり友達がいないのに、唯一できた友達の「小松さん」=小松萌(34)もやはり風俗で働いていたことがあった。
本作は、大島が女性向け風俗にハマっていく様子を描いている。
要旨を書くと「よくある物語」のような気がしてくるのだが、冒頭に書いたようにそれなのになぜこんなに何度も読み返してしまうのか我ながら不思議である。
まず絵がいい。
特に、SD化された時の下膨れた顔で会話している時が総じて大好物だ。
どちらかというと、小松が青い顔をして絶望したり慌てている顔にトリビャルな生活感が漂っていて、なおかつアヒル口っぽい「むにゅっ」とした感じがかわいくて仕方ない。どうしてお前はそれをそう思うんだと言われていろいろ理屈を考えてみたが、どれもしっくりこない。とにかく見入ってしまうんだからしょうがねえだろ。


まあ、それでもなんとか自分で必死で考えてみるのだが、会話・起きる事件・二人の思考のバランスなどが、一見「極端」なように見せながら、実は良い方にも悪い方にも一方的に振り切れず、そこがリアルさを醸し出しているんじゃないだろうかと思っている。
例えば、大島は欲望に忠実でコンサート行くついでに名古屋で「旅の恥はかき捨て」的に女風初体験をする。そこに来た「セラピスト」、つまり風俗従業員のオトコ・桐人は
- ノリは嫌いだが、「嫌な人」ではない。
- 「とりあえずネイルは褒めとけ」みたいな対応だが会話でずっと膣キュンしている。
- マッサージで股間に当たる男根にドキドキするが手マンがガシマンで痛くてたまらない。
- オトコはなんの配慮もなく(つまりナマで)大島の本番要求にいきなり応じたが、大島本人はいたって満足(首絞めをしてくれた♡)。
など、「いいところと悪いところ」が交錯する。しかし結果的には非常に高い満足を得るのである。その後のコンサートなど頭に入らないくらいぼーっとしてしまい、お金がないのにATMでお金をおろして2日連続で桐人を呼んでしまい、セッ◯スしまくる。だが、性病ではないがカンジダを伝染されてしまう。
全体こんな感じなのだ。
上記の図2で、小松が青い顔をして対応しているのは、自分が前日に送ったファックスが実は番号違いで届いていない状況で、相手先はもう10分後にはそのファックスで送ったはずの資料を持って出かけないといけないが、再送しようにも小松のコールセンターのプリンタが一斉に出力できないトラブルに見舞われ、しかもコルセンのSEが事情で出勤が遅れ、進退極まるキツい状況下なのである。そこで、大島が前にSEから聞いたプリンタの動かし方のメモを使って「勝手に」トラブルをシューティングしてプリンタを動かしてしまう。プリンタが動いたため、小松も大喜びなのだが、コルセンの上司から大目玉を食ってしまうのである。勝手に機器に触ることで、全体が深刻なトラブルに陥ったらどうするのだ、少なくとも一言言って対応しろ、と。
これ、プリンタが出力できない焦りはものすごくよくわかる一方で、上司もそういう小言は言うわなと思う。小言自体には道理があるのだ。しかし、そこまで一方的にガミガミ言うことなのか、とも感じる。
上司を一方的に悪く書かないものの、気持ちとしては現場の小松・大島に読者は絶妙に同情してしまうのである。読めばそのシチュエーションの全体性が丁寧に描写されていると言える。
コルセンの、小松以外の職場の他の同僚たちが大島にとって「悪人」ではなく、むしろ善人であるのだが、しかし馴染めない、という設定も同様の「中途半端さ」を感じる。
ありがちなのは物語の都合上どちらかに極端に振れさせようとするものだが、本作では「禍福は糾える縄の如し」的な中庸さで幸せ(欲望の充足)と不幸(トラブル)がキャラクターを襲い、キャラクターはその「いいこと」と「悪いこと」を、自身の的確な欲望の言葉や批評の言葉で受け止めていく。登場人物は欲望まみれでどこか壊れているのだが、決してマッドではない。「常識の範囲で欲望のドレイ」なのであり、その自分のドレイっぷりをどこかで自覚し、自分で批評しているのだ。その自己批評性の高さに読者たるぼくはヤラれているのかもしれない。
図3の葛藤とかものすごく直截で素晴らしいと思う。

これ読んでいてクンニの女風における誘引力ってすごいんだな…と改めて実感するが。
ぼく的には、このマンガに出てくるようなセリフの「こういう鋭さと、楽しさと、エグさで日常の会話・ラインのやり取り・自分内経験批評をやりたい」という気持ちにさせられるのである。
そして1巻のラストの何かを暗示させるナレーションが微妙に怖い。微妙に笑える。
2巻も期待して待つ。













