書評

稲垣公雄+三菱総合研究所「食と農のミライ」研究チーム『日本人は日本のコメを食べ続けられるか』

1月11日付の「しんぶん赤旗」に小松泰信の書評が載っていたのをみて、ぜひ読んでみたいと思った。 日本人は日本のコメを食べ続けられるか (KAWADE夢新書) 作者:稲垣公雄+三菱総合研究所「食と農のミライ」研究チーム 河出書房新社 Amazon 小松の書評は、本書…

江原慶『資本主義はなぜ限界なのか——脱成長の経済学』

なんでこの本を買ったのか、を記しておくことは、たぶんちくまの編集者や営業の方にとって有益かもしれないので書いておく。 資本主義はなぜ限界なのか ――脱成長の経済学 (ちくま新書) 作者:江原慶 筑摩書房 Amazon まず『資本主義はなぜ限界なのか』という…

否定疑問文と『アーロン収容所』

森沢洋介『スラスラ話すための瞬間英作文シャッフルトレーニング』をやっていると、否定疑問文の例文がほぼ毎回出てくる。 Isn't this book difficult for you? (この本はあなたにとって難しくないのですか?) No, it isn't. (はい、難しくないです。) D…

古賀文健『集団浅慮——「優秀だった男たち」はなぜ道を誤るのか?』

優秀な人もたくさんいただろうに、どうしてこんな愚かしい判断を組織としてやってしまうのだろう…という事実によく出遭う。 歴史書でも、メディアでも、身近でも。 特定の組織、例えば利潤追求に必死な資本主義企業体とか、軍国主義的な国家とか、社会進歩を…

台湾有事答弁の「撤回」?

共産党の地方議員からの「抗議」 数年前の話だが、ぼくが日本共産党を応援する演説例をつくったとき、対米従属の危険性を暴くくだりで、台湾をめぐりアメリカと中国が戦争になったら、日本がまきこまれる、という趣旨のことを書いたら、共産党の地方議員から…

有田光雄『未来に生きる 「老コミュニスト」の残し文』

11月14日の東京堂書店における、ぼくと斎藤美奈子さんとのトーク&サイン会には、参議院議員衆議院議員*1の有田芳生さんも来てくれていた。 有田さんはもともと斎藤さんのファンでもある。同時に、最近読んだ拙著『正典で殴る読書術 「日本共産党独習指定文…

不破哲三『科学的社会主義と執権問題』

私こと・紙屋高雪と斎藤美奈子さんとのトーク&サイン会は本日(2025年11月14日金曜日)午後6時からです。拙著『正典(カノン)で殴る読書術』と斎藤さんの『絶望はしてません』のことだけでなく、幅広く政治・社会・文学について語り合います。 オンライン…

村上研一『日本経済「没落」の真相』

リモートの読書会のテキストになったもので、ぼくはこの著作を全然知らなかった。 日本経済「没落」の真相: 貧困化と産業衰退からどう脱却するか 作者:村上 研一 旬報社 Amazon 読後「これはとてもいい本だ」と思った。 一言で言えば、ぼくにとっては「共産…

山内聖子『BARレモンハート 意外に知らない酒の基本知識』(古谷陸監修)

酒を飲みにいける健康はまだある。 なので、気の合う人たちと飲みにいく。 だいたい1軒目はいいんだけど、2軒目以降のバーとかにいくと、自分が飲んでいる蒸留酒系の酒について何を飲んでいるのか全然知識がない。 昨日も飲みにいったところで、よく飲む……

社会はそんなふうに変わるのか?

日本共産党が『資本論』の…というか志位和夫の『Q&Aいま『資本論』がおもしろい』(赤本)の一大学習運動を始めている。 www.jcp.or.jp どんな本であっても読むこと自体でその人の幅は広がる うん、『資本論』の学習運動をすること、そのために志位の解説本…

後房雄『日・伊共産党の「民主集中制」格闘史』

「みんなで話し合あってみんなで決める」が民主集中制なのか 民主集中制を議論する際に日本共産党はどのようにこの組織原則を説明するだろうか。例えば2024年の入党の呼びかけではこう説明している。 暮らしでも平和でも、希望がみえる新しい政治へ あなたの…

サン=テグジュペリ『夜間飛行』

この小説は航空輸送会社の話である。 飛行機が世界に登場してしばらくして輸送にも使われるようになった時代の話だ。スピードを考えれば、船や鉄道よりも速く貨物を届けることができるという利点がある。しかし、夜間飛べないということがその利点を帳消しに…

松代大本営と『スターリン秘史』と終末期の戦争指導

知り合いの招きで長野を訪れ、その人の案内で松代大本営跡に行く機会があった。 松代大本営跡(象山地下壕、イ地区) 市民グループが資料館までつくって計画の全容を示す地図を張り出していた。 その中に「賢所」という記述があった。 松代大本営追悼碑を守…

小川雄『徳川権力と海上軍事』&「今川氏発祥の地」

なぜか愛知の西尾出身だというと「小笠原水軍を知っているか」と言われ、「知らない」と言ったので、小川雄『徳川海上権力史論』(講談社選書メチエ)を読めと友人から命じられた。 全く知らなかったので、ググってみると幡豆(旧幡豆郡幡豆町)の在地勢力だ…

日本政府は“原爆投下は戦争を早く終わらせた”論を裁判で主張していた

今年は戦後80年である。 日本反核法律家協会が監修の『「原爆裁判」全資料』(かもがわ出版)が刊行される。 三淵嘉子をモデルにしたNHKドラマ「虎に翼」で有名になった「原爆裁判」の全資料が初めて活字になった貴重なものだ。 本にする作業としては、AIやO…

「排外主義とのたたかい」に部落運動の歴史からどんな教訓が得られるか

2月のドイツ総選挙で、左翼党が躍進した。 左翼党議員であるハイディ・ライヒネックが、極右との協定を結ばないとしてきた戦後ドイツの伝統を大政党であるメルツの党(キリスト教民主同盟)が破ったことを厳しく批判した国会での演説がSNS(Tiktok)で大反響…

ジョージ・オーウェル『パリ・ロンドン放浪記』

はてなブックマークで誰かが紹介していて、ぼくは知らなかったので読んでみたのだが、面白くてあっという間に引き込まれてしまった。 パリ・ロンドン放浪記 (岩波文庫) 作者:ジョージ・オーウェル,小野寺 健 岩波書店 Amazon 1933年に書かれたジョージ・オー…

斎藤環・水谷緑『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』

白石正明『ケアと編集』を読んでいるときにこの本が紹介されていて、それで知った。 斎藤環・水谷緑『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』は精神医療の方法の一つだが、本書にはそういう断り書きが全くない。 まんが やってみたくなるオープンダ…

川端康雄『ジョージ・オーウェル——「人間らしさ」への讃歌』

あなたは以前のように共産党や左翼、社会主義についての未来を信じられるんですか、と聞かれることがある。 うんそうだね、以前のようにはもはやいかないね、と答えざるを得ない。 以前ももちろん自分なりに距離はとってきたつもりではいる。 批判的に見るべ…

高校の政経の教科書から考える——志位和夫の『資本論』ゼミを聞いて思ったこと

日本共産党の志位和夫議長による『資本論』ゼミ(「いま『資本論』がおもしろい」)が行われた。3時間半もあるが、聴講させてもらった。 www.youtube.com ぼくは若い人たちと長年地道に学んでいた『資本論』ゼミを組織側の弾圧により解散させられた側である…

太田啓子『100年先の憲法へ 『虎に翼』が教えてくれたこと』

太田啓子弁護士が2019年に『宇崎ちゃんは遊びたい!』の「献血ポスター」に「環境型セクハラしてるようなもの」と批判したツイートについて、ぼくはその当時その批判を検証し、太田弁護士を(ある程度の範囲においてですが)批判し、それを本にまとめたこと…

根岸康雄『だから、お酒をやめました。 「死に至る病」5つの家族の物語』

お酒は好きな方だと思う。 仕事をすべて取り上げられて自宅に閉じ込められるという嫌がらせを受けたとき、そして不当解雇をされて新たな職場が見つからない今のようなとき、「規則正しい生活」をすることが奪われがちで、飲酒へのハードルも低くなることへの…

斗比主閲子『ふつうの会社員が投資の勉強をしてみたら資産が2億円になった話』

富裕層の定義は何だろうか。そう言われてみるとあまり考えたことはなかったのだが、本書を読むと「現金や投資資産を1億円以上持っている人のこと」(p.3)だそうである。野村総研の定義っぽいな…。*1 ふつうの会社員が投資の勉強をしてみたら資産が2億円に…

久保田貢『ロールアウト新自由主義の主体形成 学習指導要領の「ことば」から』

「自立」とか「ボランティア」とか「食育」とか「持続可能」とか「安全」とか「主権者教育」とか——その言葉だけ聞くと「いいこと」だとしか思えないよな。 だから、左翼であってもそのまんま使っちゃうことがある。まあ、ぼくもそうだ。 だけどそこには「込…

井原西鶴『好色五人女』 牧美也子『好色五人女』

落語の語り口。いいですね。ぼくは好きです。 小さい頃から落語は聞いている。 と言っても本物の寄席に行ったのは20代の終わりになってから。 ずっとテープとレコードで繰り返し聞いてきた。 初めてラジオで聞いて(小学3年生くらいだっただろうか)そいつ…

マンスーン『無職、川、ブックオフ』

ぼくは今50代であるが無職である。 組織から仕事を取り上げられるというパワハラを受けている最中に、よく海に行った。泳ぐわけではない。昼間とか夕暮れ時、これからどうなるんだろうという不安な気持ちで海を眺めていたのである。 そして、今よく図書館に…

江森百花・川崎莉音『なぜ地方女子は東大を目指さないのか』

ぼくは高校のとき模試で第一志望の国立大学についてE判定をもらったことがある。自分でも「うわー」と思ったが、なぜかそのままあきらめずに受験し、合格した。まあ、その大学のその文科系学部にはなぜかその年だけ受験科目に数学がたまたまなかったというめ…

『小泉悠が護憲派と語り合う安全保障』

この本を作るにあたって、少しだけお手伝いをした。 小泉悠が護憲派と語り合う安全保障 作者:小泉悠 かもがわ出版 Amazon サブタイトルが「『日本国憲法体制』を守りたい」。 日本国憲法第9条そのものについては改憲すべきではないかという意見を持ちながら…

ジェフリー・ロバーツ『スターリンの図書室 独裁者または読書家の横顔』

いやあ、面白い本だった。 スターリンの図書室:独裁者または読書家の横顔 作者:ジェフリー・ロバーツ 白水社 Amazon スターリンの印象が覆る 率直に言ってスターリンの印象が覆った。 オビに「血まみれの暴君は『本の虫』でもあった」とあるんだけど、すっご…

ハン・ガン『少年が来る』

光州事件を自分が小説にするとしたらどうする? …という不遜きわまることを考えてみた。 たぶん事件の全体像を先に書いてしまう気がする。または、無意識にそのことを考えて時系列で書いてしまうんじゃないだろうか。 つまりどうしても鳥瞰——巨視的なものか…