書評

久坂部羊『老乱』

80を超える父母が旅行したいと言い出したので宿の手配などした。ぼくは参加せず、父母だけが行ったのである。 帰る日の前日になって「新幹線の切符が取れないか」と電話で依頼された。 それを受けてぼくがネットで取ったものの、予約した新幹線の時間、号車…

ニコ・ニコルソン、佐藤眞一『マンガ 認知症』

久坂部羊『老乱』をリモート読書会で読むことになったので、それを読んだ後、本作を読み直す。以前読んだことがあったが、問題意識を持って読むと染み通り方が違うなと思った。 『老乱』を読みたいと言ったAさんは「自分では理解できない病気・症状の人の意…

「風刺は引用する作品全体の意味を理解したうえでこそ力をもつ」で思い出す筒井康隆

www.kaiseisha.co.jp これを読んで当然この箇所に目がいく。 風刺は引用する作品全体の意味を理解したうえでこそ力をもつのだと思います。 そこにこの記事。 m-dojo.hatenadiary.com 筒井康隆の風刺・パロディ論争を思い出す(「笑いの理由」/筒井『やつあ…

夏目漱石『吾輩は猫である』

リモート読書会は夏目漱石『吾輩は猫である』だった。 吾輩は猫である 作者:夏目 漱石 Amazon この超有名な小説、ぼくは読んだことがなかった。 つーか、中学生、高校生時代に何度か読もうとして途中で挫折している。 「面白くなかった」からである。 11章あ…

英語を勉強しているんだが

英語を勉強している。 なんのために? いや…別に…意味もなく。 『超訳マルクス』*1をやった時には、辞書を引き引きという具合だった。 サラサラ読めたらカッコいいかな、くらいに。 しかし英語というものはいったん始めたら日課にしないといけない。 筋トレ…

藤丸篤夫「ハチという虫」/『月刊たくさんのふしぎ』

今月(2021年6月号)の『月刊たくさんのふしぎ』は藤丸篤夫「ハチという虫」。ハチを進化の角度で切り取っていて、大変わかりやすく、読み応えがあった。 ハチのイメージが変わった。 ハチという虫 (月刊たくさんのふしぎ2021年6月号) 作者:藤丸 篤夫 発売日…

不破哲三『激動の世界はどこに向かうか』ノート

先日『資本論』について講師を務める機会があった。 その時、社会民主主義政党の見方やヨーロッパの到達の見方について質問があった。 ぼくなりの答えをその時はしておいたけど、以下は日本共産党の幹部の一人である不破哲三はどのように見ているか、という…

坂口安吾『戦争と一人の女』『堕落論』

リモート読書会は坂口安吾『戦争と一人の女』『堕落論』。 ファシリテーターは、以前ブログでエントリも書いたことがあるぼくである。 参加者の一人、Aさんが事前に「『戦争と一人の女』って読み終えたけど、『なに、これ…』みたいな感じだった…。どういう感…

上西充子『政治と報道 報道不信の根源』

本書は、第一に、マスコミの政治報道への違和感から出発してそれを市民による権力監視の方向で正そうとしている。第二に、マスコミとは別のジャーナリズムの姿を見せて、政治報道のオルタナティブを示している。 政治と報道 報道不信の根源 (扶桑社新書) 作…

ジェニファー・エバーハート『無意識のバイアス――人はなぜ人種差別をするのか』

リモート読書会は、ジェニファー・エバーハート『無意識のバイアス――人はなぜ人種差別をするのか』(明石書店、山岡希美訳、 高史明解説)。 無意識のバイアス——人はなぜ人種差別をするのか 作者:ジェニファー・エバーハート 発売日: 2021/01/08 メディア: K…

田川建三『イエスという男』

リモート読書会では田川建三『イエスという男』を読んだ。 イエスという男 第二版 増補改訂 作者:田川 建三 発売日: 2004/06/10 メディア: 単行本 もちろんなんでもハイハイと言う「イエスマン」のことではなく(笑)、キリスト教の始祖とされているイエスの…

斎藤幸平『人新世の「資本論」』

リモート読書会は、斎藤幸平『人新世の「資本論」』だった。 人新世の「資本論」 (集英社新書) 作者:斎藤幸平 発売日: 2020/10/16 メディア: Kindle版 その中身は、 気候変動が人の生活に与える影響はこのままいくと限界になる。 気候変動はSDGsやグリーン・…

村崎一等兵のセリフを読む

ここ数年続いていることは毎日の筋トレと、風呂場での大西巨人『神聖喜劇』の朗読である。 対馬での軍隊生活を描いた『神聖喜劇』の方は、もう何べんも読み返しているが、今は光文社版文庫本の第2巻、主人公の東堂が対馬には大きな軍隊が駐留しているのにな…

ヴィトルト・ピレツキ『アウシュヴィッツ潜入記』

まもなくアウシュヴィッツが解放された記念日(国際ホロコースト記念日)である1月27日である。 私はアウシュヴィッツで危険なゲームをやっていた。いや、この文章は現実を正しく伝えているとはいえない。実際、私の経験は世間の人々が考える危険をはるかに…

スポーツの本質的暴力性とどうつきあうか

リモート読書会は、川谷茂樹『スポーツ倫理学講義』を取り上げた。 この本についてはすでに2005年に書評を書いている。 kamiyakenkyujo.hatenablog.com 例えば写真は、今年11月28日付の西日本新聞夕刊の記事であるが、柔道の1984年五輪における山下・ラシュ…

伊東順子『韓国 現地からの報告』

リモート読書会で伊東順子『韓国 現地からの報告──セウォル号事件から文在寅政権まで』(ちくま新書)を読んだ。 韓国 現地からの報告 (ちくま新書) 作者:伊東 順子 発売日: 2020/03/06 メディア: 新書 韓国に住んでいる著者が話題ごとに書いた短い文章の集…

星乃治彦『赤いゲッベルス ミュンツェンベルクとその時代』

学生運動をしていた頃の友人に勧められて読む。 赤いゲッベルス ミュンツェンベルクとその時代 作者:星乃 治彦 発売日: 2009/12/18 メディア: 単行本 ヴィリー・ミュンツェンベルクの評伝である。 ミュンツェンベルクは、ナチス期のドイツでコミュニストの側…

石牟礼道子『苦海浄土』

リモート読書会は石牟礼道子『苦海浄土』だった。 新装版 苦海浄土 (講談社文庫) 作者:石牟礼 道子 発売日: 2004/07/15 メディア: 文庫 水俣病について書かれたということは有名な本だが、果たしてこれはノンフィクションなのか、小説なのか。石牟礼は「新し…

山田昌弘『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』

タイトルに惹かれて読んだ。 日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?~結婚・出産が回避される本当の原因~ (光文社新書) 作者:山田 昌弘 発売日: 2020/05/29 メディア: Kindle版 山田がいうには、 日本はスウェーデン、フランス、オランダの対策をモデルにし…

藤野裕子『民衆暴力』

藤野裕子『民衆暴力 一揆・暴動・虐殺の日本近代』(中公新書)についての感想です。

シーナ・アイエンガー『選択の科学』

今度のリモート読書会で取り上げたのは、シーナ・アイエンガー『選択の科学』(文春文庫、櫻井祐子訳)である。 選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義 (文春文庫) 作者:シーナ アイエンガー 発売日: 2014/07/10 メディア: 文庫 アイエンガーの…

『こわい顔じゃ伝わらないわよ』『二月の勝者』

「勉強が全然楽しくない」と泣く 田舎の中学校とはいえ、自分が「優等生」であったものだから、自分の物差しで子どもを測ってしまう。定期考査で平均点とか取ってくると、正直がっかりする。しかも全教科そんな具合だからなおさらがっかりする。点数亡者めと…

文学は国語にとってどう役立つのか

議論になっているこれだが。 ozean-schloss.hatenadiary.org 本論の前に一つ。 そもそもこのブログが批判している元記事「『本が読めない人』を育てる日本、2022年度から始まる衝撃の国語教育」は一体誰が書いた記事なのか? diamond.jp 署名が「榎本博明」…

「社会を明るくする運動」の宿題作文のこと

中1の娘の短い夏休みの宿題の一つが「社会を明るくする運動」作文である。学校が配布した課題一覧表には「1年生は全員取り組むこと。2・3年生は自由」とされている。選択課題でなく必須なのである。 「社会を明るくする運動」の概要がプリントに書いてあ…

坂田聡『苗字と名前の歴史』

2006年に出ていた本であるが、最近福岡市の博物館の1階にある小さな書店に立ち寄った際に立ち読みし、面白そうなので購入した。 苗字と名前の歴史 (歴史文化ライブラリー) 作者:坂田 聡 発売日: 2006/03/01 メディア: 単行本 ぼくの問題意識は「氏と苗字は…

「ペストで農業労働者の賃金が高騰した」っていうけど農奴なの? 労働者なの?

「パンデミックは世界を変えるきっかけになる」という命題があって、ペストが中世を大きく変えた話は、いろんな人がしているよね。 ペストがヨーロッパ社会に与えた影響は、少なくとも三つあった。第一に、労働力の急激な減少が賃金の上昇をもたらした。農民…

山本太郎『感染症と文明 共生への道』

新型コロナウイルスが広がって被害を及ぼしているから、こんなウイルス滅ぼしてしまえばええやん、と思う。ほら、天然痘とかポリオみたいにさ。 しかし、そうでもないらしい。 あるウイルスが消えた後のポジション(生態学的地位)を埋めるように、新たなウ…

レベッカ・ソルニット『説教したがる男たち』

Zoom読書会でレベッカ・ソルニット『説教したがる男たち』を読んだ。 説教したがる男たち 作者:レベッカ・ソルニット,ハーン小路恭子 発売日: 2018/11/15 メディア: Kindle版 女性を何も知らない無知な存在と見下して説教したがる男性仕草を「マンスプレイニ…

宮本常一『忘れられた日本人』

宮本常一『忘れられた日本人』をZoom読書会でやるというので関連本を読む。 忘れられた日本人 (岩波文庫) 作者:宮本 常一 発売日: 2017/04/20 メディア: Kindle版 素人として、この本をどう扱ったらいいのかが少し戸惑ってしまう。 解説の網野善彦の読み方は…

戦争とコロナは同じか。「新しい生活様式」は吐き気がするか。

大塚英志のこの記事を読んで思ったこと。 www.webchikuma.jp 戦争とコロナは同じか 第一に、戦争と感染症(ペストとかコロナ)は同じだろうかという問題。 大塚が「同じ」と言っているかどうかは後で触れる。 まずぼくはマルキストであるから、人間が起こし…