旧ホームページから移転

雁須磨子『いばら・ら・ららばい』

倉庫作業という肉体労働に従事するバイトの茨田あいは、空気が読めない。美人でスタイルもいいだけに、そのギャップがひとを驚かせる。不倫で居られなくなった前の職場(デパート)では、「肉食恐竜」とか「レックス」などと同僚の女子社員たちに陰口を叩か…

秋山はる『オクターヴ』vol.4

宮下雪乃が新たに担当することになった、同い年の女性タレント「しおり」の造形がすばらしい。 オクターヴ(4) (アフタヌーンコミックス) 作者:秋山はる 講談社 Amazon 本作は元アイドルだった宮下雪乃が再度上京し、やはり元歌手だった作曲家・岩下節子と…

一条ゆかり『プライド』12巻

※ネタバレがあります。 プライド 12 (クイーンズコミックスDIGITAL) 作者:一条ゆかり 集英社 Amazon 12巻にて完結。 この終わり方はねえだろ。 有名歌手の娘として明るさ、ポジティブさ、まっすぐな性格をもつ史緒と、貧困の中に生まれ育ち、暗さ、ネガテ…

青桐ナツ『flat』

従弟である幼児の秋(あっくん)を、しばしば家で面倒をみることになった高校生・平介の物語である。 flat 1巻 (コミックアヴァルス) 作者:青桐ナツ マッグガーデン Amazon 平介のようになりたい、と思う。 3巻の裏表紙には「超マイペースな高校生」と書か…

きづきあきら+サトウナンキ 『セックスなんか興味ない』

セックスにまつわる9つのエピソードが収録されている。1巻ってことはさらに出るんだろうな。期待。同じ作者の『うそつきパラドクス』(白泉社)も非常によかった。きづき+サトウがセックスの話を描こうとしている時期なんだろうか。そうだとすると嬉しい…

南Q太『ぼくの家族』

これは南Q太の新境地と言ってもいいかもしれない。 南は私生活において結婚・出産・離婚を経て、作風が少し変わってきていた。その違和感について、ぼくは南の『地下鉄の風に吹かれて』の書評で次のように書いた。 〈南は、ふつうの人は捨象したり、省略し…

施川ユウキ『え!? 絵が下手なのに漫画家に?』

『サナギさん』で知られる施川ユウキの「マイまんが道」。と、もろもろの小作品群。 え!? 絵が下手なのに漫画家に? (ヤングチャンピオン・コミックス) 作者:施川ユウキ 秋田書店 Amazon いろいろあるんだけど、ファーストキス体験するシーンがいいよ。 施…

『このマンガがすごい! 2010』のアンケートに答えました

今年もやってきましたこの季節。今回も『このマンガがすごい!』のアンケート回答を務めさせていただきました。 このマンガがすごい! 2010 作者:このマンガがすごい!編集部 宝島社 Amazon 今回はかなり満足です。 ランキングに満足というより、自分のした回…

藤子・F・不二雄『エスパー魔美』

「藤子・F・不二雄大全集」が出たのをきっかけに、『エスパー魔美』を20年ぶりくらいに手にとった。 エスパー魔美(1) 藤子・F・不二雄大全集 (てんとう虫コミックススペシャル) 作者:藤子・F・不二雄 小学館 Amazon もう細部も結末もほとんど覚えて…

あずまきよひこ『よつばと!』9巻

5歳児のよつばと、そのとうちゃん、近所の3姉妹が繰り広げるただの日常の物語も9巻に入った訳ですが。 よつばと! 9 (電撃コミックス) 作者:あずま きよひこ 角川グループパブリッシング Amazon いやー、久々に1巻からずーっと読み直したんですがね。 い…

ヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ』

『ドラえもん』の「ホラふき御先祖」は、小学生だったぼくらの間で登下校のときに何度も話題にのぼったエピソードだった。 どこがそんなに気に入ったのかといえば、のび太がタイムマシンで自分の先祖を現代につれてきたとき、自動車を「鉄のイノシシ」だと言…

加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』

指導者層からみた戦争史 刺激的なタイトルの本で、この前朝日新聞の広告をみたら12万部とあったので、売れているのだろう。大手の新聞でも書評でとりあげてられていた。 高校生を相手に、歴史学者の加藤陽子が近現代の日本の戦争史を講義するというスタイル…

藤原カムイ『卑弥呼 週刊マンガ日本史01』

朝日新聞で広告を見て、執筆陣の豪華さに惹かれていたのであるが、何よりもつれあいの食指が動いていた。「あんた、学習漫画で歴史を勉強したって言ってたよね」と言いながら、娘のために買うのだと叫ぶ始末。 週刊マンガ日本史01号 (卑弥呼) 女王、倭国に立…

益田ミリ『週末、森で』

翻訳の仕事をして都会から田舎へ引っ越した早川さんと、そこを週末の休日に訪ねてくる、出版社の経理をしているマユミちゃん、旅行代理店に勤めるせっちゃんの物語である。3人とも30代半ばの独身女性だ。 週末、森で (幻冬舎文庫) 作者:益田 ミリ 幻冬舎 Am…

押切蓮介『ピコピコ少年』

保育園に行っていると、子どものためにいい環境をどうつくるか、という情報が洪水のように押し寄せてくる。この前保育園の懇談会でやった学習会はこうだ! 「きゅうしょくだより」の見出しを紹介しよう。 〈ジュースの中身は砂糖だらけ??〉〈砂糖(糖分)…

後藤羽矢子『後藤羽矢子の裁判びゅー日記』

北尾トロ『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』のAmazonカスタマーズレビューは60件(09年9月23日時点)もついているが、「のぞき見的面白さ」と「不謹慎」の間で評価が揺れていることがよくわかる。 裁判長! ここは懲役4年でどうすか (文春文庫) 作者:北…

小熊英二『1968』

1968〈上〉若者たちの叛乱とその背景 分厚い。分厚いね、と思っていたら「上」である。「下」もあるのかよ。上巻で1000ページ、下巻で1000ページ。電話帳である。いや、昨今の電話帳はこんな厚くないし。しかも上下巻で1万3600円。誰が買うんだ…

朔ユキ蔵『セルフ』

〈この年齢〔3〜4歳——引用者注〕の自慰(オナニー)は指しゃぶりとまったくおなじにかんがえればよい。指しゃぶりにたいして、気にせずにおきなさいというのには、母親は納得する。しかし、自慰にかんしては、いくら気にしなさるなといっても、母親は容易…

磯谷友紀『本屋の森のあかり』

書店労働(という言い方があるのかどうか知らないけど)というもののイメージを鮮明にし、ある意味で塗り替えたのが、久世番子『暴れん坊本屋さん』(新書館)だった。 書店とは実にマッチョで苛酷な労働である(という一面がある)ということを世に知らしめ…

吉村昭『漂流』 『サバイバル』『まだ、生きてる…』にもふれて

すこぶる有名な小説だそうだが、ぼくは知らなかった。これほど面白い小説を読んだのは久しぶりだ。かなり気が滅入ることがあったときにこの小説を手に入れたのだが、その憂さを晴らすには十分な魅力をもっていた。 漂流(新潮文庫) 作者:吉村昭 新潮社 Amaz…

茨木保『まんが 医学の歴史』

『理論劇画 マルクス資本論』の発刊記念の講演会が終わった。来てくれたみなさん、深く感謝。個人的には終わった後の質疑応答が刺激的だった。大喜利とは言わんけども、考える時間があまりなく次々質問されることにどう答えるか、こっちは緊張するし、相手も…

『続・資本論 まんがで読破』

前作は完全なる失敗作であった 前作『資本論 まんがで読破』について、ぼくは酷評しようとしたが、「いや、ひょっとして制作者の深慮遠謀なのかもしれない」とあれこれ悩み「評価は微妙」と書いてしまったのである。 資本論 (まんがで読破) 作者:マルクス,バ…

こうの史代『この世界の片隅に』下

戦争を戦後世代としてどう描くか 広島から呉に嫁ぎ、そこで戦争と空襲に出遭う北條すずの物語は完結した。 この世界の片隅に【新装版】 (上) (ゼノンコミックスDX) 作者:こうの史代 コアミックス Amazon この世界の片隅に【新装版】 (下) (ゼノンコミックスD…

唯川恵『永遠の途中』 ささだあすか『永遠の途中』

なかなか面白かった。 まず漫画版(ささだあすか)を読んだ。それが面白かったので小説(原作=唯川恵)へすすんのだが、漫画版以上によかった。 永遠の途中 (光文社文庫) 作者:唯川 恵 光文社 Amazon 永遠の途中 (MFコミックス) 作者:原作/唯川恵・作画/さ…

益田ミリ『ふつうな私のゆるゆる作家生活』

あいかわらずである。何が「ふつうな私」だ。何が「ゆるゆる」だ。そんなタイトルにだまされてヌルい内容を想定して読み始めるととんでもないことになる。 イラストも描き、漫画も描き、エッセイやその他の文章も書く著者のいわば作家生活の自伝であり、コミ…

久保ミツロウ『モテキ』1巻

この本のオビにはモテ期を「都市伝説」と書いている。無論(なにが無論だ)、モテ期とは人生において突然モテるようになる時期のことである。オビは「人間誰しにも訪れるという」との形容句がついており、これが「都市伝説」だと述べているのである(※ちなみ…

加賀乙彦『死刑囚の記録』 郷田マモラ『モリのアサガオ』にもふれて

『モリのアサガオ』のよさと不満点 死刑を描いた漫画といえば郷田マモラ『モリのアサガオ』がある。文化庁メディア芸術祭の大賞を受賞している。 モリのアサガオ―新人刑務官と或る死刑囚の物語 (1) (ACTION COMICS) 作者:マモラ, 郷田 双葉社 Amazon ぼくは…

秋山はる『オクターヴ』

『すずめすずなり』のひとであったか。 すずめすずなり(1) (アフタヌーンコミックス) 作者:秋山はる 講談社 Amazon 最初は『すずめすずなり』のひとだとは気づかなかった。 『オクターヴ』は、本屋で面陳されていたのを手にとったのがきっかけだった。試…

『ワーキングプア脱出(得)大作戦』

『萌え単』全盛期のころ……といっても最近も『元素周期 萌えて覚える化学の基本』が「人気本」「昨秋の発売後すぐにネットで話題になり、3カ月で予想を上回る2万8千部が売れた」「秋葉原の書店では平積みになった」として朝日(09年2月21日、25日)でとり…

『理論劇画 マルクス資本論』を出します

以前紹介したことのある門井文雄氏が漫画を手がけた『劇画カルチュア 資本論』が「復刊」します(後述しますが、厳密にいいますと「復刊」ではありません)。今度はかもがわ出版からです。 4月中旬に刊行の予定です。 理論劇画 マルクス資本論 作者:門井 文…