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小熊英二『1968』

1968〈上〉若者たちの叛乱とその背景 分厚い。分厚いね、と思っていたら「上」である。「下」もあるのかよ。上巻で1000ページ、下巻で1000ページ。電話帳である。いや、昨今の電話帳はこんな厚くないし。しかも上下巻で1万3600円。誰が買うんだ…

茨木保『まんが 医学の歴史』

『理論劇画 マルクス資本論』の発刊記念の講演会が終わった。来てくれたみなさん、深く感謝。個人的には終わった後の質疑応答が刺激的だった。大喜利とは言わんけども、考える時間があまりなく次々質問されることにどう答えるか、こっちは緊張するし、相手も…

東村アキコ『ママはテンパリスト』 ――佐田静『いっとけ! 育児』にもふれて

東村「仕事の方が子育てより1000倍楽」 最近、明らかにこのサイトの更新頻度が落ちている。 仕事の内容が変わったこともあるが、それはどちらかというとささいなことで、子育てにエネルギーを吸い取られるからである。 保育園に子どもを迎えにいくのはもっぱ…

杉本亜未『ファンタジウム』

「主人公に弱点をもたせると個性が出る」というキャラクター作りのイロハがある。才能を輝かせる主人公を描くとき、その秀才・天才ぶりを描くだけでは平板になってしまうので、弱点を何か加味することで途端に愛らしい、共感がもてる存在になる、というわけ…

松田道雄『定本 育児の百科』

育休が今月いっぱいでおわります 電車に乗っていたら初々しい高校生カップルが! その初々しさがたまらんなーと思って見ていたのだが、後でつれあいに話すと、「そんなふうに見てたら、絶対にあやしいと思われたんじゃないの?」。 ふふふ、さにあらず。 な…

山本直樹『レッド』1巻

『ビリーバーズ』で果たせなかったもの 最初にちょっとおさらい。 【合本版】ビリーバーズ (ビッグコミックス) 作者:山本直樹 小学館 Amazon すでに山本の『ビリーバーズ』についての感想のところで書いたとおり、山本はオウム事件に際して、「一連のオウム…

山本直樹『ビリーバーズ』

『ビリーバーズ』はオウム事件を描いたものか 新興宗教っぽい団体に入っている男2人、女1人の計3人が孤島で独特の修行をする顛末を描いた物語である。 評論家の呉智英は山本直樹『レッド』の書評で「テーマは連合赤軍事件である。既に七年前の『ビリーバ…

三好徹『チェ・ゲバラ伝』

「ゲバラ」という非日常、「日本」という日常 週刊誌「SPA!」で、911事件直後、ビンラディンに賞金がかけられたこともあって、「ビンラディンが日暮里に潜伏していたとしたらどこに通報したらいいのか」、という記事が載ったことがある。 この記事が何となく…

宮本顕治君のこと

などと書くと、「そうそう、宮本君はいつも……」と回顧談でもしそうな感じでちょっといい。 この文章の後につけたものは何でも回顧録っぽくなる。「そうそう、宮本君はいつも『きょうは「かみちゅ!」の発売日だ』と言って、早々に常任幹部会を抜けていったね…

佐藤和夫『仕事のくだらなさとの戦い』

本書の中心点は、効率優先の近代的な労働を批判し、労働の核に「コミュニケーション」をおくことによって、人間らしい労働(心の生活のための労働)の回復をめざす、というものである。なんかこう書くと、ものすごく平凡な本みたいだなあ。 仕事のくだらなさ…

川谷茂樹『スポーツ倫理学講義』

ぼくが小さいころ、兄と卓球をしていて、縁をねらった球をうつと、「丸紅打ち」と兄に非難された。打球自体はセーフなのだが、ボールが縁にあたると、異常な角度をつけてボールが飛んでいき、ほぼ確実に打てなくなる。 当時ロッキード事件がおきており、総理…

福満しげゆき『僕の小規模な失敗』

福満しげゆき本人の自伝的漫画。 工業高校を中退。女性にも縁がない。 送る漫画もボツ。「まったくホントにぜんぜんダメだった…」。 僕の小規模な失敗 (ヤングマガジンコミックス) 作者:福満しげゆき 講談社 Amazon 「僕はそもそも何が描きたいとかそーゆう…

矢口高雄『9で割れ!』

矢口高雄『9で割れ!』は、高度成長期、矢口が漫画家になる前の銀行員時代のことを描いた自伝的漫画である。 9で割れ!!―昭和銀行田園支店 (1) 作者:矢口高雄 eBookJapan Plus Amazon 銀行がシャッターを閉めてから出納と伝票の結果をあわせて一致してい…

岩田靖夫『ヨーロッパ思想入門』

あるMLで、ぼくの「フリーター漂流」についての解説の感想がのっていて(ぼくの解説についてではなく、おそらく番組への感想であろうけど)、“自分より下がある、という安心を与えるもの”などという感想があったのを見た。 苛酷な搾取にさらされる請負労働…

中沢新一『はじまりのレーニン』

知り合いの左翼の女性に、「もし子どもが生まれたらどんな名前をつけたいか、あるいは、その名前にどんな人生の期待をこめるのか」と聞いたとき、彼女は「この世界が美しいと思ってくれる子になってほしい」と答えた。 いい答えだ、と感心した。 左翼や共産…

J.ジグレール『世界の半分が飢えるのはなぜ?』

入門の本はないかとおもって、よく、子どもむけの本を買う。 子どものむけの本は、「わかりやすい」、ということもあるが、しばしば「本質的」であるからだ。 世界の半分が飢えるのはなぜ?―ジグレール教授がわが子に語る飢餓の真実 作者: ジャンジグレール,J…

久野秀二「環境問題と史的唯物論」

ある有名なモノ書きのメールに、「マルクスは合理的な資本主義をめざしていたと思う」という一文があった。それはちがうだろう。 この人は、おそらく旧ソ連の実態から直接にマルクスをイメージし、「どちらも同じ19世紀思想」と考えて、「大量生産、大量消費…

北原みのり『フェミの嫌われ方』

フェミニストである筆者・北原みのりが批判する、つんく『LOVE論』をまずごらんください(北原の引用より孫引き)。 「おかんな女の子〔母親っぽい女、の意〕とつきあったら、きっと一緒にご飯食べるときなんかも知らないうちに人の箸を取ってくれちゃったり…

浅尾大輔「家畜の朝」

第35回新潮新人賞を受賞した小説(「新潮」2003年11月号に掲載)。こういう人。 言葉というものを、貧しいながら、多少は武器にできるおかげで、ぼく自身が救われた、ということは少なくない。言葉によって、世界というものを再構成できるからだ。 もう少し…

橋本毅彦・栗山茂久『遅刻の誕生』

ああ、もう。ぼくにとって、遅刻は高校以来の宿敵だ。 長時間電車通学によって始まった「時間との闘い」は、やがて、小中学校時代は(わが家において)絶対に許されなかった「遅刻」というものを体験させた。 次第にひどくなっていくぼくの遅刻。日中はほと…

司馬遼太郎『覇王の家』

愛知出身なのだが、「ああ、名古屋のかたですか」などと言われると、腹が立つ。 名古屋じゃない。尾張ではない。三河の出なのだ。と、心の中で小さく訂正する。 親戚が名古屋にいるが、話をするほどに、言葉がちがう。日本全体からみれば、やはり名古屋も中…

小原愼司『菫画報』

佐倉高校の新聞部の星之スミレを主人公とし、その友人琴子、後輩の上小路、先輩の「部長」などとの日常(非日常)を描く。1話完結形式。 作者は黒田硫黄の友人だときくけど、黒田硫黄が大学の寮的空気を濃厚にまとわせて登場してきたのにたいして、小原愼司…

深見じゅん『おとぎ話つづく』

登場人物の服装にどれくらい気をつけているか、ということは、女性漫画家によってずいぶんちがうと、つれあいから教えられたことがある。 もともと、男性系アニメに出てくる女性の服装とか髪型があまりにも浮き世離れしていて、街でこんな格好をしている若い…

ほったゆみ・小畑健『ヒカルの碁』

ぼくは少年漫画は長い間ひかえてきた。しかし、小学生のあいだに碁ブームを巻き起こしている漫画として、この『ヒカルの碁』だけは一度読んでみようと常々思っていた。が、なかなか手がのびなかった。 ヒカルの碁 全23巻完結セット (ジャンプ・コミックス) …

山本文緒・海埜ゆうこ『紙婚式』

『紙婚式』のオビにはこうある。 紙婚式 (Feelコミックス) 作者:山本 文緒,海埜 ゆうこ 発売日: 2003/10/08 メディア: コミック 「結婚しました。だけど…… 結婚は幸せばかりではなく、 辛いことばかりでも、ない。 ずれながらも交錯する、6組の夫婦それぞれ…

たなかじゅん『ナッちゃん』

(第7巻までしか読んでいないという前提ですが) 学生のとき、小関智弘のルポ『春は鉄までが匂った』を読もうとして、挫折した。しかもかなりとっかかりの部分である。あのとき、思想とか世界観とか、いわば「形而上」のものに心を奪われていて、現実の物質…

あずまきよひこ『よつばと!』

榛野なな恵『Papa told me』にたいして、関川夏央は、妻を亡くした文筆業の父と娘、という人物配置に次のようなコメントをくわえている。 Papa told me 1 (マーガレットコミックスDIGITAL) 作者:榛野なな恵 発売日: 2016/12/01 メディア: Kindle版 「娘は、…

とよ田みのる『ラブロマ』

ぼくの高校時代の友人に、好きな女の子に校庭で「好きだー」と大声で叫んだやつがいた。 ぼくは、この感性を、「キモい」といって遠ざけるほど冷笑的に見ることはできないし、かといって「それこそ正しい青春だ」と過度の思い入れを託すこともできない。その…

つげ義春『リアリズムの宿』

ここでとりあげた「リアリズムの宿」というのは、主人公の言い分を借りれば、主人公は鄙びた秘湯をたずねたりする旅行が好きなのですが、そこにその土地の“生活の臭い”がしてしまうことをたいへんきらっていて、その生活の臭いを「リアリズム」と主人公独特…

木村千歌『ずるずるマイラブ』

「他人の不幸は蜜の味」ということばの親せきみたいなもんで、他人の悪口を言うのが快感だという感情がある。ぼくの友人グループのなかである一人(Aとしよう)の悪口を言ったりすることがあって、Aがいかにダラしないやつか、それが倫理的にみていかに悪…