マンガ

岡田索雲『ようきなやつら』

短編集である。 ようきなやつら (webアクションコミックス) 作者:岡田索雲 双葉社 Amazon この中の『追燈』は、関東大震災における朝鮮人虐殺を描いた短編だ。 「あとがき」で岡田自身が 関東大震災の発生から今年で99年になりますが、その際、起きた朝鮮人…

松田舞『ひかるイン・ザ・ライト!』3

中学生がオーディションを受けアイドルをめざす物語、松田舞『ひかるイン・ザ・ライト!』は、ぼくの最近のお気に入りである。 なんども見返す。 それは好きなコマが多いからである。 主人公と同じ地元で年上の友人であり、かつアイドル経験者でもある西川蘭…

いしいひさいち『ROCA』

ネットで話題になっている、いしいひさいち『ROCA 吉川ロカ ストーリーライブ』を読む。朝日新聞を購読していたときにごく一部を読んだ記憶がある。 高校生だった吉川ロカがポルトガルの国民歌謡「ファド」の歌い手として、世界に発見されていくまでを、いし…

『マルクス「資本論」に脱成長のヒントを学ぶ』

最近でた『資本論』入門書シリーズの2つ目。 斎藤幸平+NHK「100分de名著」制作班監修『マンガでわかる! 100分de名著 マルクス「資本論」に脱成長のヒントを学ぶ』(宝島社)である。 マンガは前山三都里。「編集協力」は山神次郎、「取材・文」は乙野隆彦…

的場昭弘監修『マンガでわかる資本論』

ある出版社の出している『資本論』を手に入れようと大手書店の経済書のコーナーに立ち入ったら、しばらく見ないうちにずいぶんいろんな『資本論』入門書が出ているじゃないか…!? というわけでその中から3冊ほど感想を書いてみたい。 最初は的場昭弘監修『マ…

性風俗事業者への給付金についての共産党の態度から考える

コロナ禍での持続化給付金などの対象から性風俗事業者を排除したのは、憲法違反だとして、デリヘルの事業者(会社)が国などに支払いを求めた裁判の件。東京地裁は合憲判決を出した。 www.tokyo-np.co.jp 訴状・書面、そして判決文は、以下にある。 \東京地…

川崎昌平『売れないマンガ家の貧しくない生活』、木村イマ『シュガーレス・シュガー』1

ネットで川崎昌平『売れないマンガ家の貧しくない生活』を読んでいるつれあいは、マンガ家の妻の視点でマンガ家自身がマンガ家のことを描くというこの作品の奇妙さを口にしていた。 売れないマンガ家の貧しくない生活 (コミックエッセイ) 作者:川崎 昌平 KAD…

山口つばさ『ブルーピリオド』12

左翼運動、というか理想を掲げる社会運動にハマる理由の一つは、「たまり場」じゃないか、と1980年代に青春を過ごしたオールド左翼のぼくとしては力説したいところである(以下、年寄りの昔話っぽくなるのだが、そこはご勘弁願いたい)。 大学のサークルボッ…

民主青年新聞で「水木しげる生誕100周年」特集でコメントしました

5月16日付の民主青年新聞で「水木しげる生誕100周年」特集があり水木しげるのマンガについてコメントしています。 水木の3冊のマンガもお勧めしました。 リアルということについて 当の水木自身は、「戦争コミック」と対比して「戦争想像コミック」というも…

坂月さかな『星旅少年』1

星から星を調査目的で旅をする(星旅人〔ほしたびびと〕の)主人公(?)の物語である。 星旅少年1 作者:坂月さかな パイ インターナショナル Amazon 主人公はPGT(プラネタリウム・ゴースト・トラベル)という旅行会社の社員で、同社の文化保存局の一員だ。…

磯谷友紀『ながたんと青と』

最近よく読むマンガは、磯谷友紀『ながたんと青と いちかの料理帖』であろうか。 ながたんと青と-いちかの料理帖-(1) (Kissコミックス) 作者:磯谷友紀 講談社 Amazon 戦争から6年たった、日本の「独立」のころの京都の老舗料亭の話……と書くだけで…

志村貴子『おとなになっても』6巻、西村賢太『小銭をかぞえる』ほか

もうこの文章を書いたのも10年近く前か、と思いながら読み返す。 kamiyakenkyujo.hatenablog.com そこで「疎外」について書いている。 自分が書いたもの・描いたものが、自分から離れ、自分に対してよそよそしくなり、やがて自分に対立するようになる。 『ど…

森鷗外『山椒大夫・高瀬舟』、関川夏央・谷口ジロー『秋の舞姫』

森鷗外は高校の教科書にあった『舞姫』のイメージが強かった。 ゆえにぼくの中では森鷗外といえば「留学先で懇ろになった女性を捨てたひどい男」みたいな雑なイメージしかなかった。 ところが、今回リモート読書会で森鴎外を扱うことになって新潮文庫の短編…

新人研修を司会して思い出す『BLUE GIANT』

ずいぶん前に、ある紙媒体から依頼されたエッセイのうち、ボツにしたものを、最近の体験も交えて手を入れなおした。それをアップしてみる。 --------------- 選挙に出るという稀有な体験をした際の話である。 人前で演説をする。ぼくのファンがいるときは、…

「マンガ論争 24」で対談&木戸衛一「ドイツ総選挙をどう見るか」

「マンガ論争 24」で荻野幸太郎さんと対談した。 manronweb.com 左翼が表現の自由と表現規制についてどうしているのか、どうすべきなのかがテーマだったが、もっと言えば、表現の自由の問題と、ジェンダー平等の課題をどう両立させるのか、という問題だと感…

『このマンガがすごい! 2022』で回答&『明日、私は誰かのカノジョ』

『このマンガがすごい! 2022』(宝島社)で今年も「総勢43名 各界のマンガ好きが選ぶ このマンガがすごい! オンナ編」に回答させていただいた。 このマンガがすごい! 2022 このマンガがすごい! 宝島社 Amazon 今回はぼくが選んだものは1つも20位に入らな…

ワタナベ・コウ『漫画 伊藤千代子の青春』

戦前の官憲による弾圧で命を落とした共産党の若い活動家たちのことを知ったのは、1990年ごろだったと思う。その一人に伊藤千代子がいた。あの当時、伊藤千代子について書いた「赤旗」の記事やら簡単な伝記的紹介を読んだと思ったのだが、ほとんど忘れていた…

共産党はマンガ・アニメの規制にカジを切ったのか

日本共産党がアニメやマンガの表現規制に「方向転換」したのではないかと、ネットの一部で話題になっている。 togetter.com 共産党は今回の総選挙政策で 「児童ポルノ規制」を名目にしたマンガ・アニメなどへの法的規制の動きに反対します。 と明確に言って…

鈴木望『青に、ふれる。』4

鈴木望『青に、ふれる。』は顔に大きなアザがある女子生徒(高校生)・瑠璃子と、相貌失認という表情の識別や個人の識別に障害を抱える男性教師・神田とのラブストーリー…のようなそうでないような話である。 青に、ふれる。 : 1 (アクションコミックス) 作…

松田舞『ひかるイン・ザ・ライト!』1

「漫画アクション」で真っ先に読む作品の一つ。 ひかるイン・ザ・ライト! : 1 (アクションコミックス) 作者:松田舞 双葉社 Amazon 「歌がうまい」という中学3年生がアイドルをめざす話。 絵柄 この作品に惹きつけられた第一の理由は、やっぱり絵柄。シン…

『ペリリュー 楽園のゲルニカ』完結を受けて

戦争に参加した兵士を主人公にした物語がフィクションだというのはいくらでもあることだ。 にもかかわらず、『ペリリュー 楽園のゲルニカ』がフィクションだという前提には、やはり驚かされてしまう。 ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 1 (ヤングアニマルコミッ…

かあいそうだたほれたってことよ

英語の勉強のつもりで読んでいた一文に I believe that if Japan indeed had a few more infections in April to May, we could have seen widespread deaths, akin to what happened to our European friends. というものがあった。 前後の文章でだいたい「…

藤のよう『せんせいのお人形』についての続き

昨日書いたことのうちの、二番目のこと。 kamiyakenkyujo.hatenablog.com 二つ目は、恋愛対象として。もっと言えば性的な対象として。 ぼくが昭明の視点でスミカを性的に見るという視点について書いたわけだけど、この作品の4巻には、スミカの先輩で「天羽…

藤のよう『せんせいのお人形』

この作品をどんな気持ちで読むべきなのか。 せんせいのお人形 1【フルカラー】 (comico) 作者:藤のよう comico Amazon 本当に正直なところを言えば、とても欲望的な気持ちで読んでいる。 まともな保護者がおらず、あちこちの家を転々とさせられ、ネグレクト…

谷口菜津子『教室の片隅で青春がはじまる』

つくりごとの、そらぞらしい、窮屈で不自由な、我々の日常を取り巻く人間関係を壊してみる、その第一歩を踏み出せば、世界は変わる。人間解放の革命である。 谷口菜津子『教室の片隅で青春がはじまる』は『教室の片隅で革命がはじまる』としたほうがいい。 …

相手の雑な言い回しを心の中で噛みしめる雁須磨子の表現が好き

先日、雁須磨子『ロジックツリー』について感想を書いた。 kamiyakenkyujo.hatenablog.com 朝日新聞で南信長が同作についてレビューを書いていた。 それらを支えるのが圧倒的な会話の質と量だ。予定調和的でなく、現実の会話さながらに話が飛んだり噛み合わ…

松竹伸幸も「渋沢栄一ドラマなのに江戸時代の終わりを延々と描いている」に違和感

松竹伸幸が渋沢栄一を描いた大河ドラマ「青天を衝け」についての感想を書いている。 ameblo.jp 「感想」というか違和感だな、これは。 渋沢は「日本資本主義の父」と言われる。しかし、だ。(強調は引用者) 「青天を衝け」は日本資本主義の父が主人公である…

雁須磨子『ロジックツリー』

8人きょうだいという大家族に育つ大瀬良螢(おおせらけい)が主人公で、高校生女子だった頃から社会人になるまでの時間軸で物語は描かれている。 ロジックツリー(上) (ウィングス・コミックス) 作者:雁須磨子 新書館 Amazon 螢だけでなく、きょうだい、親…

ニコ・ニコルソン、佐藤眞一『マンガ 認知症』

久坂部羊『老乱』をリモート読書会で読むことになったので、それを読んだ後、本作を読み直す。以前読んだことがあったが、問題意識を持って読むと染み通り方が違うなと思った。 『老乱』を読みたいと言ったAさんは「自分では理解できない病気・症状の人の意…

「福岡民報」2021年7月号に「マンガから見えるジェンダー」3回目

「福岡民報」2021年7月号に「マンガから見えるジェンダー」という連載で、よしながふみ『きのう何食べた?』と『1限めはやる気の民法』を取り上げた。 同性愛が日常にドラマで描かれるようになったことと、同性愛を「気持ち悪い」とする感情をどう評価するか…