マンガ

亜月ねね『みいちゃんと山田さん』のこと

亜月ねね『みいちゃんと山田さん』のアニメ化についてネット上で議論がかわされている。結論から述べておけば、議論が進行中で、さまざまな立場のものを読む中でどの立場にも「なるほど」と思わせられながら読んでいるというほどのものだ。そして(原作であ…

『お紅茶オブ・ザ・リビングデッド』1

えっ、あの『山賊ダイアリー』の岡本健太郎が原作なの…。 という感想をまずは持った。 お紅茶・オブ・ザ・リビングデッド : 1 (アクションコミックス) 作者:岡本健太郎,ショルダー肩美 双葉社 Amazon そう知ると、主人公の神代の風貌からして「岡本自身だろ…

創作物に没入している顔

『海が走るエンドロール』を読み返していて、7巻で、PFF(ぴえフィルムフェスティバル)のプロデューサーをしている古田という女性に目がいく。 海が走るエンドロール 7 (ボニータ・コミックス) 作者:たらちねジョン 秋田書店 Amazon シゴデキ感がある女性…

品田遊・南十字明日菜『そういう人もいる』

前に何度かこのブログには書いたが、「数学の宿題をやっていない夢をよく見る」と時々書いているが、また最近よく見るようになった。 それだけでなく、連続して「自分が通った大学の入試の願書を自分だけ出していないことが当日わかって受験できない」という…

『海が走るエンドロール』と「とうもろこしご飯」

たらちねジョン『海が走るエンドロール』が完結した。 このマンガに励まされることが多く、今も励まされ続けている。 高齢になってから映画作りを始め、大学に入り、若い人たちと交流する中で触発されていくという「物語」がなんとなく自分を刺激するのであ…

水谷緑『大切な人が死ぬとき』

サブタイトルは「私の後悔を緩和ケアナースに相談してみた」。著者水谷の父ががんを告知され、亡くなるまでの記録、そして考えたこと、いくつか残った後悔を描いたのが前半。そのことを緩和ケアナースに相談し、さまざまなケースやナースとのやり取りを記し…

南Q太『ボールアンドチェイン』5

読んでいて涙が出てしまった。 ボールアンドチェイン 5 (SHURO) 作者:南Q太 マガジンハウス Amazon 夫婦の不和で母親と一緒に実家に連れて行かれた主人公・けいとの幼少期が描かれる。 優しくはあるが世間の常識をまとい、その人の前ではどことなく緊張感が…

『ユリイカ』2026年5月号「特集*魚喃キリコ」 に寄稿しました

『ユリイカ』2026年5月号「特集*魚喃キリコ」 に「『南瓜とマヨネーズ』を今読んで抱く違和感とそれを超える普遍的な価値」というタイトルでぼくも寄稿しています。 natalie.mu タイトルの通り、魚喃キリコの本全般ではなく、『南瓜とマヨネーズ』に特化し…

よしながふみ『タレント』1

いやあ、文句なしに面白い。 Talent―タレント― 1 (マーガレットコミックスDIGITAL) 作者:よしながふみ 集英社 Amazon 西暦2000年のドラマに出演した4人の俳優がどうなるかを描く物語だが、冒頭に一人一人の俳優としての可能性や特徴、水準を、やや過剰と思…

路田行『のんのんの日常チャンネル』

「実は私はこんなことをやっているYouTuberなんです」という「裏の顔」があるというのはネット社会では結構あることだ。 ぼくの親類でも「えっそんなYouTubeやって…しかも稼いでますよね…!?」という人がいてびっくりしたし、そもそもぼく自身だって、もと…

西原理恵子『ねこいぬ漫画かき』

西原理恵子が引き取った保護犬(と猫)のコミックエッセイである。 ねこいぬ漫画かき 1 作者:西原理恵子 新潮社 Amazon 65ページに西原の「保護犬猫里親探しをしている先パイ」の「おもーい言葉」が紹介されているが、 100%見た目でもらわれてくで ものごっ…

冬川智子『45歳の線香花火』

最近の自分のマンガの読み方…と言っても意図的にそういう手法を選んでいるわけではないけど、結果的にそうなってしまう読み方として、「マンガで描かれている、登場人物の、ごく部分的な行動・決意・セリフに感じ入ってしまう・突き動かされてしまう・それを…

高妍『隙間』

『隙間』は、台湾の学生が沖縄の芸術系大学に短期の交換留学をしたことを描いたフィクションである。 隙間 1 (ビームコミックス) 作者:高 妍 KADOKAWA Amazon 主人公は楊洋(ヤンヤン)という女性だ。社会運動の中で台湾についての歴史を学ぶうちに、台湾独…

もりぐちあきら『やめろ好きになってしまう』

それほどイケてない男子高校生(松浦)に、からんでくる女子(厳木・きゅうらぎ)の言動の一つひとつが、実は自分に対する好意ではないかということを確信させられていくマンガが本作である。 やめろ好きになってしまう 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)…

 『このマンガがすごい! 2026』&『隙間』&日本共産党の「一つの中国」論の転換(?)

『このマンガがすごい! 2026』(宝島社)で「オンナ編」のアンケート選者をつとめた。 このマンガがすごい! 2026 宝島社 Amazon 自分が選んだ5本のうち、1本は「オトコ編」で4位に入り、もう一つは「オンナ編」で29位に入った。他は圏外であったが、1本…

原夏見『彼女たちの式典』

先に紹介した『友達だった人』は、「友達」と呼ぶのがためらわれるようなSNS上だけのつながりを「友達」と呼ぶ話だった。 kamiyakenkyujo.hatenablog.com それに対してこの原夏見の作品『彼女たちの式典』は、冒頭に 何年も会ってない 会う必要もない だから…

『友達だった人 絹田みや作品集』

がんで身近な人が亡くなるという経験をこれまでいくつもしてきた。 活動家仲間が早くに亡くなる、というのもそうだし、身内では義姉がそうであった。そのことはもう十数年以上も前にブログに書いたことがある。 kamiyakenkyujo.hatenablog.com 今も身近には…

稲葉そーへー・本橋隆司『そばギャルとおじさん』1

立ち食いそばをはじめとして、「早めに食べて出る」という前提のそばが苦手である。ぼくの食事信条に反するからである。 したがって「味わう」という見方が全くできなかった食事の一つだ。 時間がなくてやむを得ないなら入るけど、そうでもなければまず避け…

批評という行為

11月14日に東京堂書店で開かれたぼくと斎藤美奈子さんとのトーク&サイン会に、いっぱいお運びいただきましてありがとうございます。 斎藤さんとの「かけあい」はジャズのセッションのようだと思った。 前にもそういう比喩で書いたことがある。それは全然別…

『小学館版 学習まんが 日本の歴史12 開国と幕末の動乱 江戸時代Ⅳ』

『小学館版 学習まんが 日本の歴史12 開国と幕末の動乱 江戸時代Ⅳ』を読む。 慣習が高埜利彦・学習院大学名誉教授、マンガが新井淳也である。 小学館版学習まんが 日本の歴史 12 開国と幕末の動乱: 江戸時代IV (小学館学習まんがシリーズ) 作者:日笠 由紀 小…

藤原ハル『元気でいてね』

それから 幼少期に親から言われたこと すべて忘れた方が いいですよ 何の役にも立たない 「すべて」ですか。 「何の役にも立たない」ですか。 すごくシンプルな方針だけど、それくらいシンプルにすると、逆に実践できてしまうかもしれない。 作中で、エレベ…

山内聖子『BARレモンハート 意外に知らない酒の基本知識』(古谷陸監修)

酒を飲みにいける健康はまだある。 なので、気の合う人たちと飲みにいく。 だいたい1軒目はいいんだけど、2軒目以降のバーとかにいくと、自分が飲んでいる蒸留酒系の酒について何を飲んでいるのか全然知識がない。 昨日も飲みにいったところで、よく飲む……

Sanho著・古川綾子訳『幽冥パティスリー 煉獄堂』1

ファンタジーを読むとき、その世界に連れて行かれるまでがなかなか難しかったりする。凝った設定の説明が長々と始まり、最初でいきなりやめてしまうこともある。かと思えば、印象的なエピソードをぶつけようとして、なんとなく白けてしまい、うまく連れて行…

ヤチナツ『真・女性に風俗って必要ですか?』

(以下、性的な話題がありますので、苦手な方はあらかじめ注意してください) 『このマンガがすごい! 2023』でこの前作に当たる『女性に風俗って必要ですか?』を選ばせてもらった。 本作は同じ題材(女性風俗)で似た設定なのだが、違う話としてイチから作…

辺見じゅん・河井克夫『ラーゲリ〈収容所から来た遺書〉』

テレビで映画「ラーゲリより愛を込めて」をやっていたので、ごく一部分だけ観た。 www.youtube.com 「一部分」っていってもホントに一部分だけで、収容所で野球をやるシーンだけである。 実は、原作のマンガ化作品である辺見じゅん・河井克夫『ラーゲリ〈収…

後藤ねぎ『僕の彼女は春を売る』

元AV女優がウエディングドレスを着た件について少し話題になっている。 togetter.com anond.hatelabo.jp それは差別ではないんですかという批判からつながって、AV女優とか風俗嬢とか性産業に携わることの是非へ問題は延焼していく。 「色々いうけど、あなた…

斎藤環・水谷緑『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』

白石正明『ケアと編集』を読んでいるときにこの本が紹介されていて、それで知った。 斎藤環・水谷緑『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』は精神医療の方法の一つだが、本書にはそういう断り書きが全くない。 まんが やってみたくなるオープンダ…

「ユリイカ」2025年6月号の「特集=カレー沢薫」に執筆

「ユリイカ」2025年6月号の「特集=カレー沢薫」でぼくも執筆させていただきました。 ユリイカ 2025年6月号 特集=カレー沢薫 ―『クレムリン』『負ける技術』『ひとりでしにたい』…メシアの華麗なる人生譚― 作者:カレー沢薫,春田武彦,田川亞希,武田砂鉄,冬野…

ヨネマイ『幸せになりたいマサムネ君』1

(以下の記事に性的な記述があります) ヨネマイ『幸せになりたいマサムネ君』の主人公は26歳・男のマサムネ。大学時代にブログをもとにした小説が爆売れしてそれで食いつないでいる作家…というかフリーターだ。10年付き合っている彼女がいて、マサムネ自身…

岩浪れんじ『バルバロ!』1

フーゾクをどういう温度感で描くのか、というのはなかなか難しいところである。 エロの角度から描く…というマンガもそれなりにあるが、人によってはフーゾクに行くことがエロという目的を達するものだからそれを客観視したってしょうがあるまいという冷めた…