2005-01-01から1年間の記事一覧

『このマンガを読め! 2006』

漫画のムックにたいする注文の原点 いまから10年ほど前。 ぼくがまだいまのような、ウェブで感想を書きなぐるというヤクザなことをしていなかったとき。漫画のランキングや年鑑を読むとその「専門家臭」に不満があったものである。 市井の実感とかけ離れたラ…

川谷茂樹『スポーツ倫理学講義』

ぼくが小さいころ、兄と卓球をしていて、縁をねらった球をうつと、「丸紅打ち」と兄に非難された。打球自体はセーフなのだが、ボールが縁にあたると、異常な角度をつけてボールが飛んでいき、ほぼ確実に打てなくなる。 当時ロッキード事件がおきており、総理…

福満しげゆき『僕の小規模な失敗』

福満しげゆき本人の自伝的漫画。 工業高校を中退。女性にも縁がない。 送る漫画もボツ。「まったくホントにぜんぜんダメだった…」。 僕の小規模な失敗 (ヤングマガジンコミックス) 作者:福満しげゆき 講談社 Amazon 「僕はそもそも何が描きたいとかそーゆう…

きらたかし『赤灯えれじい』

一週間ばかり「矢沢あい」漬け。 来る日も来る日も「みんな…大好き!」「ねえハチ あの頃のこと覚えてる?」とかいう世界に浸っていて、脳が砂糖菓子のようになってしまった。 そこへきて、この『赤灯えれじい』だ。 海外でバタくさいものばかり食べていて、…

矢口高雄『9で割れ!』

矢口高雄『9で割れ!』は、高度成長期、矢口が漫画家になる前の銀行員時代のことを描いた自伝的漫画である。 9で割れ!!―昭和銀行田園支店 (1) 作者:矢口高雄 eBookJapan Plus Amazon 銀行がシャッターを閉めてから出納と伝票の結果をあわせて一致してい…

日中韓3国共通歴史教材委員会『未来をひらく歴史』

未来をひらく歴史 : 東アジア3国の近現代史 : 本・中国・韓国=共同編集 GENERIC Amazon 未来をひらく歴史―日本・中国・韓国=共同編集 「新しい歴史教科書をつくる会」の「歴史教科書」にたいする危機感をきっかけに、日中韓で歴史認識を共有させようというこ…

司馬遼太郎と田中芳樹 『坂の上の雲』と『銀河英雄伝説』

司馬遼太郎の『坂の上の雲』を読んでいる。 昨年は日露戦争100年ということもあって、この小説の政治利用がさかんで、「ボクたち悪くないの。侵略とかそういうつもりはなかったの。坂の上の雲を見てただけなの」というカマトト発言のオンパレードのひとつ…

米田憲司『御巣鷹の謎を追う』

川上証言がしめす事故調報告の矛盾 今年(2005年)で20年目をむかえる日航123便墜落事故について、ぼく自身何冊か本を読んだし、概要はおさえているつもりだったので、米田の本書が出たときも、それを読もうという気はなかった。 御巣鷹の謎を追う -日航123…

石川雅之『もやしもん』

短い期間だったが、大学に入ってすぐにぼくは自治寮で暮らした。 部屋がまだ割り振れぬというので、大部屋で雑魚寝をさせられていると、夜中いきなり上回生(上級生)が大量に入ってきて酒をのみだす。まだ入学式前、寮に来て1~2日の新入生を肴に、である…

高橋哲哉『靖国問題』

数ある人力検索の政治カテゴリなかでも、一番質が悪いのがおそらく「Yahoo!知恵袋」であろう。2chのようだ、というと2chに失礼で、2chほどの論理体裁や情報武装もない、なんの遠慮もてらいもない排外主義と国粋主義の排泄場になっている。 靖国問題 (ちくま…

藤原彰『南京の日本軍』

南京の日本軍: 南京大虐殺とその背景 作者:藤原 彰 大月書店 Amazon 『国が燃える』事件での“巧妙さ” 本宮ひろ志『国が燃える』が南京事件を描いたとき、自民党や民主党の地方議員などから集団でクレームがついた。集英社は結局それに屈し、大幅な描き直しを…

岩田靖夫『ヨーロッパ思想入門』

あるMLで、ぼくの「フリーター漂流」についての解説の感想がのっていて(ぼくの解説についてではなく、おそらく番組への感想であろうけど)、“自分より下がある、という安心を与えるもの”などという感想があったのを見た。 苛酷な搾取にさらされる請負労働…

NHKスペシャル「フリーター漂流」

土曜日(2005年2月6日)に放映されたNHKスペシャル「フリーター漂流」を観た。 フリーター漂流 作者:松宮 健一 旬報社 Amazon フリーターのなかでも、モノづくりの現場での「請負」と呼ばれる種類の労働にしぼって描いたもので、監督官庁もなく法規制も弱い…