2013-01-01から1年間の記事一覧

人工知能学会誌の表紙のこと

くだんの人工知能学会誌の表紙の件。人工知能学会の表紙は女性蔑視? - Togetterまとめ ぼくのスタンスは、基本的にツイートで書いたとおり。 激萌えする。だが女性差別という批判もわかる。ぼくにも性意識の歪みってあるもん。どんな表現(とその支持)も大…

中川剛『町内会 日本人の自治感覚』

1980年に出た本で、今では新刊として手に入らない。 ぼくも図書館で借りて、その後、古本として購入したものである。 古本についていたオビが非常に要領よく本書の問題意識をまとめているので、そのまま紹介しよう。 昭和二十二年訓令によって廃止された…

犬上すくね『アパルトめいと』1巻

本巻の前半に収録されている連作短編『100×200』についてだけ書こう。 週末同棲している社会人男女が、週末にだらだらしている、あるいはいちゃいちゃしている、あるいはちょっとしたきっかけでセックスになだれ込んでいってしまう様子を、短編で描い…

竹信三恵子『家事労働ハラスメント 生きづらさの根にあるもの』

家事労働と聞いて、「あ、おれ関心ない」という男は多いだろう。ぼくもそのクチであった。著者も苦労したらしい。本書の発端となる連載には反響も大きかったのに、 出版社へ企画を持ち込むと、反応はさっぱりだった。(本書p.234) 家ではカミさんに感謝して…

海野つなみ『逃げるは恥だが役に立つ』

週刊プレイボーイの先週発売分に、海野つなみ『逃げるは恥だが役に立つ』の書評を書いた。 このマンガは25歳の女性・森山みくりが主人公で、大学卒業時にも就職できず、大学院にすすんだがその後も就職できず、派遣の仕事もやがて切られて無職になってしま…

國分功一郎『来るべき民主主義』

この本は簡単に言えば、行政に対する国民のコントロールの強化を訴えている本である。 立法権だけでなく、行政権にも民衆がオフィシャルに関われる制度を整えていくこと。これによって、近代政治哲学が作り上げてきた政治理論の欠陥を補うことができる。(國…

自分の商品価値を落とさないためだろ

ちきりんが「ネットでは議論しない」と言っているんだけど、 http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20120813その理由は“議論して結論を一つに決めるのは多様性の否定だから”ということだそうで…。 単純に、ちきりんが議論しない=本体サイトのコメント欄を非表示…

松田奈緒子『重版出来!』

オリンピックをめざすほど柔道バカだった黒沢心が出版社に入ってマンガ編集部に配属される。黒沢が主人公というより、マンガ業界全体にかかわる人の労働を1話ごとに扱っていくオムニバスであり、黒沢の存在はそういう業界の人々を何かしら刺激していく触媒…

國分功一郎・古市憲寿『社会の抜け道』

革命と改良 社会問題の解決、ということについて、古市と國分が語り合っている本。一言で言って、國分が論じて古市が突っ込んでいる。だから國分の本だといえる。この本は社会問題の解決、ということがテーマで、オビにあるように、「あらゆる社会問題は『解…

週刊プレイボーイなどで書評したもの一覧

週刊プレイボーイの「この漫画がパネエ!!」のコーナーで隔週にて書評をさせてもらってますが、この間扱った作品を載せておきます。いずれも2013年です。 オジロマコト『富士山さんは思春期』(双葉社) 6月17日号 藤堂あきと『カブルモン』(芳文社)…

本を出します 『超訳マルクス』

本を出すことになりました。 『超訳マルクス ブラック企業と闘った大先輩の言葉』(かもがわ出版)です。 http://www.kamogawa.co.jp/kensaku/syoseki/ta/0645.html超訳マルクス ブラック企業と闘った大先輩の言葉紙屋 高雪 かもがわ出版 2013-10-25売り上げ…

浜谷直人編著『仲間とともに自己肯定感が育つ保育』

保育園で娘が積極的に挑戦しない、ということが問題視されている。いや「問題」というと、非行少女みたいだけど、そういうことではない。問題のある典型、みたいな感じ。 うちの娘は6歳で、マンガが大好き。だからマンガばかり読んでいるし、マンガばかり描…

『放浪息子』逐巻的精読(4) 13〜14巻

こちらの続き 紙屋A いよいよラストですね。 紙屋B そうですね。別にたいしたオチもありませんが。 A 紙屋Bさんは、高槻さんには全然反応してませんね。 B そんなことないですよ。普通にかわいい。かわいいんだけども、特にこの13〜14巻っていうの…

『放浪息子』逐巻的精読(3) 11〜12巻

※こちらのつづき 紙屋A 11巻でわからないのは、二鳥修一が、中学最後の文化祭でファッションショーに出る決意をして、千葉さおりに女の子の衣装を借りるシーンなんですよね。 紙屋B 何がわからないんですか? A 千葉さおりに衣装を借りた後、修一の夜の…

『放浪息子』逐巻的精読(2) 9〜10巻

こちらのつづきA いきなり「しーちゃん」と「ユキさん」を間違えたわけですが。 B 精読でもなんでもないね。 A 今日、出張だったんだけど、飛行機の中で『放浪息子』読み直していて、気づいて、大声あげそうになったもん。 B それ、航空法のなんかにひっ…

『放浪息子』逐巻的精読(1) 7〜8巻

というわけで、『放浪息子』完結を祝い、巻ごと、話の区切りごとの、感想を垂れ流していく。 シーンの説明を省くので読んでない人にはちんぷんかんぷんだろうし、こういう自意識のだだ漏れぶりに耐えきれない人もいるかもしれないが、しばらく辛抱しろ。お国…

志村貴子『放浪息子』

うぉぉぉ……『放浪息子』が終わってしまった。 ぼくの一番好きなマンガの一つが……。 疎外 志村貴子の短編集『どうにかなる日々』には、中学生のとき家庭教師の男と性行為していた少女・琴子の話が出てくる。琴子は、陰毛が生えてくるので自分が「先生」に嫌わ…

映画「風立ちぬ」を批判する

宮崎駿監督の『風立ちぬ』を観た。お盆で帰省し、子どもを見てもらっている間に夫婦で。 ちょっと長くなると思うので、最初に結論書いておこうか。 恋愛要素は男目線で気持ちがノッた。 飛行機にかける夢についてはロジックがまったく詰め切れられておらず、…

内海隆一郎・谷口ジロー『欅の木』

小説家である内海隆一郎の原作を谷口ジローがコミカライズしたもの。いや、発行はもう2010年のものだから何を今さらという感じだが、部屋を整理していて久々に読んで、泣いてしまったので書いておく。 家族をめぐる短編集である。 どれも文句なしによか…

麻生発言はナチ肯定なのか?

また雑感。雑感ばっかりですいません。 麻生太郎のいわゆる「ナチス」発言についての、見事な分析。麻生太郎のナチス発言を国語の受験問題的に分析してみる: ナベテル業務日誌 リンクを読むのが面倒なお前らに簡単にまとめを書いといてやる。 「冷静に、静か…

義務や強制のない、自治会費ゼロの自治会をつくったよ

※このエントリをきっかけにして、本を出しました。 http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784098252077 http://d.hatena.ne.jp/kamiyakenkyujo/20140921/1411290361 ごみ収集のサービス(の一部)を受けるには、自治会に加入しないといけないと…

共産党は癌なのか

参院選の結果を受けての、東浩紀のこの発言。 共産党は日本の癌だ。共産党の主張が悪いというのではない。絶対に為政者にはならないという安心感のもとに、為政者への不満だけを吸い上げる党という存在がある、その事実が日本の政治をひどく損ねている。共産…

選挙における気になる思考方法

参院選も最終盤だけど、「●●という仕事がすばらしかったから」という1つや2つの理由で、候補者Xを推している人がときどきいる。最近とみに増えてるな。 そいつをAとしよう。 もちろん、それは自由だよ。どういう理由でAが候補者Xを推すのかは自由だよ。 …

これが本当の連呼だ

選挙の季節である。 「連呼」する候補への批判は相変わらずだ。 しかし、お前らに聞きたい。 お前らは、「名前だけをくり返して叫ぶ行為」がダメだと言っているのか、それとも「名前でも政策でも短くくり返す行為」がダメだと言っているのか、それとも「拡声…

友寄英隆『「アベノミクス」の陥穽』

アベノミクス本の紹介もそろそろ終わりです。今回が最後になるでしょう。 最後は、友寄英隆『「アベノミクス」の陥穽』(かもがわ出版)です。「え、誰……?」と思ったあなた、心配いりません。その反応がふつうです。知らなくて当たり前です。小さな本屋には…

転職しやすい社会

もうだいぶ前の記事なんだけど、メモ的に。朝日新聞デジタル:(雇用のあり方:3)大久保幸夫さん 自分生かす転職とは 40歳・60歳が転機 - ニュース リクルートワークス研究所所長の大久保幸夫が朝日(2013年5月10日付)のインタビューで、述べ…

『かくかくしかじか』2 『アオイホノオ』10

漫棚通信で書かれていたこの話題。青春彷徨と転落の物語『かくかくしかじか』『アオイホノオ』: 漫棚通信ブログ版 ぼくやつれあいも、この2作を並べて考えた。 『かくかくしかじか』は、東村アキコの自伝的物語で、2巻は美大に合格してからの話。なーんも…

吉本佳生『日本の景気は賃金が決める』

また、アベノミクス本の紹介です。 たらたらと書いているうちに、アベノミクス自体がどうなっちゃうかわからないんですが、つづけます。 今回は、吉本佳生『日本の景気は賃金が決める』(講談社新書)です。 以前、小幡績『リフレはヤバい』をいちばんわかり…

藤子不二雄『フータくん』

小さい頃、友だちのNという家にいくと、コロコロコミックがあった。というか、その家にしかコロコロコミックはなかった。さらに、その言えには『モジャ公』や『21エモン』など藤子不二雄のマンガがたくさんあった。そして、Nの家以外ではそんなものは見た…

週刊プレイボーイで書評したもの一覧

週刊プレイボーイの「この漫画がパネエ!!」のコーナーでときどき書評をさせてもらってますが、この間扱った作品を載せておきます。いずれも2013年です。 白山宣之『地上の記憶』(双葉社) 2月18日号 冬川智子『水曜日』(小学館) 3月4日号 福満…