2019-01-01から1年間の記事一覧

「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」を観て

「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」を観た。 『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』予告編 広島から呉に嫁に行き、呉の空襲に遭った女性・北條すずの生活を描いた映画「この世界の片隅に」の、いわば新版である。 まずは「長尺版」ととらえていい…

高松美咲『スキップとローファー』

ぼくは地元の自治体の高校には行かず、電車で片道1時間半もかけるような、となりの大きな市の進学校に行ったので、自分と同じ中学から来ている生徒は同学年に1人もいなかった。 そこで生まれて初めて「誰も知り合いがいない」という状態を体験した。 生まれ…

『このマンガがすごい! 2020』に「オンナ編」のアンケート選者として参加

『このマンガがすごい! 2020』(宝島社)に「オンナ編」のアンケート選者として参加しています。 ebookjapan.yahoo.co.jp konomanga.jp ぼくとしては、自分の選んだものがオンナ編の3位にランクインしたのと、特別に選んだオトコ編の作品が、7位で入って…

ケン・ローチ監督「家族を想うとき」(映画)

何の救いもない映画 エンドロールが出てきたとき、「あっ、ここで終わるのかよ…」という絶望感を隠せなかった。 ケン・ローチ監督の映画「家族を想うとき」は、すばらしく何の救いもない映画である。 longride.jp 個人事業主という形で配達の仕事を請け負う…

ハルノ晴『あなたがしてくれなくても』

『あなたがしてくれなくても』はセックスレスを扱う作品だ。 あなたがしてくれなくても : 1 (アクションコミックス) 作者:ハルノ晴 出版社/メーカー: 双葉社 発売日: 2018/03/28 メディア: Kindle版 ぼくがこういう作品になぜか読む前から望んでしまう・期…

子育てにおける人生最後の瞬間

小学6年生の女の子が誘拐され、命に別状なく戻ってきたときに母親が彼女を抱きしめたというニュースを聞く。 府警によると、母親は女児を抱きしめて号泣していたという。 https://www.asahi.com/articles/ASMCS36B7MCSPTIL001.html 小6の娘を持つ身として…

倉本一宏『戦争の日本古代史』

知り合いの研究者が10年前に韓国で学会(理系)に参加したときと、今回参加したときではその水準がまるで違っていて、「ああ、日本は今抜かれつつあるというか、抜かれたんだなと思った」と話していたのを印象深く聞いた。 韓国のことに詳しい同僚が「前衛」…

『女ともだち』と『82年生まれ、キム・ジヨン』

共産党が主催するジェンダー問題の学習会に参加した。講師は共産党中央委員会 政策委員会事務局次長・坂井希である。 www.jcp-kyoto.jp (上記の京都の講演会ではないが、各地で行われている同趣旨の講演に参加した) 会場では「年配者の多い党支部では、ど…

松竹伸幸『日韓が和解する日』

本書にある、 日本は法的に立派に責任を果たした。韓国との間で日韓基本条約と請求権協定を結び、これまで忠実にそれを守ってきたというのは、法的責任を果たしたということである。「法的に解決済み」という日本政府の言い分にはいささかの間違いもない。(…

『国語 六 創造』『武器になる知的教養 西洋美術鑑賞』

前回、小6の娘の国語の教科書の話を記事にしたんだが、続きである。 高畑勲「『鳥獣戯画』を読む」の後には、「この絵、私はこう見る」という節がある。今娘はここをやっている。 「『鳥獣戯画』を読む」では、筆者は、さまざまな表現を用いて、私たちに『…

こうの史代『ギガタウン』

娘の保育園時代のクラスで毎年集まりを持っているのだが、小学校を卒業する今年で終わりとなる。 そこで記念として、カップに絵を描こうということになった。 最近は専用のマーカーがあって、電子レンジで温めるだけで絵が固定してしまう便利なものがある。 …

ぼくのかんがえたさいきょうのてんのうせい

日本国憲法第1条は 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。 っていう具合に「日本国民の総意に基く」わけだから、天皇という制度自体はそもそも基本的人権や平和主義のように「永遠に」動…

『宇崎ちゃんは遊びたい!』献血ポスター問題を考える

『宇崎ちゃんは遊びたい!』を使った献血ポスターとそれをめぐっての太田啓子弁護士のコメント・行動が炎上しているな。 togetter.com 太田は詳しくは述べていないようだが、要するに宇崎ちゃんの「巨乳」強調のイラストが「無神経」であり「公共の場での環…

「不自由展」には入れなかったけど「あいちトリエンナーレ」は観てきた

あいちトリエンナーレに行った。むろん再開された「表現の不自由展、その後」に行くつもりだったのだが、3回抽選に挑戦し、結局当選できなかった。 抽選を待っている間、愛知芸術文化センター内にある、「表現の不自由展、その後」以外の展示を見て回った。…

『韓国の小学校歴史教科書』を読了してぼんやり思うこと

また、前の記事の続き。 きょうは、『韓国の小学校歴史教科書』(明石書店)を読み終わった。 韓国の小学校歴史教科書 (世界の教科書シリーズ) 作者: 三橋広夫 出版社/メーカー: 明石書店 発売日: 2007/10/02 メディア: 単行本 クリック: 1回 この商品を含む…

『まんが朝鮮の歴史』を読み終えて

前の記事の続き。『まんが朝鮮の歴史』を読み終える。 巻末に「全16巻」とあるので、これで終わりのはずだけど、16巻のタイトルが「日本の軍国主義体制と独立の準備」なんだよね。 だけど、常識的に考えて、それで終わる? だいたい、16巻の裏表紙、こんなだ…

澄川嘉彦・五十嵐大介『馬と生きる』/「たくさんのふしぎ」2019年11月号

つれあいの母、すなわち義母が契約をして、現在小6の娘に「月刊たくさんのふしぎ」を毎月送ってくる。小学1年生くらいまでは「こどものとも」だった。 これらは福音館書店が毎月発行している雑誌で、「こどものとも」はいわば定期絵本であり、「たくさんの…

『まんが朝鮮の歴史』『韓国の小学校歴史教科書』

日韓関係がアレだというのに、韓国(朝鮮半島)の歴史のこと、なんも知らんなあ……と気づいた。 少し勉強を、と思ったものの、知らない地名や人物が次々出てくるともういけない。 こういうときは、自分が日本史でそうだったように、学習マンガでまず「物語&…

日野雄飛『理想と恋』

ある仏教書を読んでいると、次のような章・節タイトルに出会った。 「生命を生かしているもの」 「だれに生かされているのか」 仏教の本を読んでいて、このタイトル。 誰がどう考えてもこの章には、「宗教」じみた、「説教」くさい話が書かれているのだろう…

「行政の政治的中立」をはき違えると何が起きるか

「あいちトリエンナーレ」の「表現の不自由展、その後」についてのNHK番組「クローズアップ現代」を見た(「『表現の不自由展・その後』 中止の波紋」2019年9月5日放映)。 ここで、「“公的な場での表現”どこまで?」というテーマで、行政の「政治的中立性…

雁須磨子『名前をつけて保存しますか?』

ぼくは今PTAに入っていない。少し前に退会したのだ。PTAは任意加入が原則なので、それを規約で定めたり、加入届で確認したりしてほしかったのだが、その要望がかなわないので脱けることにしたのである。 誤解のないように言っておけば、喧嘩別れしたわけでは…

ナディア・ムラド『THE LAST GIRL』

「イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語」というサブタイトルの通りで、性暴力のすさまじい実態が告発されている。書名は「この世界で私のような体験をする女性は、私が最後であってほしい」という意味である。著者は昨年ノーベル平和賞を受賞した。 TH…

ちばてつや『ひねもすのたり日記』

前にも書いたかもしれないが、まもなく傘寿を迎える父の生い立ちの聞き取りをしている。これが滅法面白い。 あまりにたくさんのエピソードがあってどれも興味深い話ばかりなのだ。 戦後の食糧事情から、自分がどのように農家をやめ商人になっていったかとい…

上西充子『呪いの言葉の解きかた』

昨年ぼくは「ご飯論法」の命名者の一人として流行語大賞をいただいた。「朝ごはんを食べましたか?」という問いに、米飯は食べていないがパンは食べたという事実を隠して「ご飯は食べておりません」と答弁する……このタイプのごまかしを安倍政権がやっている…

萩原あさ美『娘の友達』1巻

必死に出世街道を走っていたサラリーマンであると同時に、不登校になりかけた高校生の娘をもつシングルファーザーでもある主人公・市川晃介が、喫茶店でバイトをしていた娘の友達・如月古都と知り合い、二人きりのカラオケで抱きしめられたり、職場放棄して…

あいちトリエンナーレの話はどこが問題なのか

あいちトリエンナーレで「表現の不自由展、その後」の展示が中止になった事件について、いろいろ対立や分断もあるようなので、整理するために、いまぼくが理解している範囲で以下書いてみる。 構図1:脅迫者―作家 この事件のもとになっている構造は、図1で…

スターリンは意気消沈していたのか問題

大木毅『独ソ戦』には独ソ開戦時のスターリンの様子については何も書かれていない。 kamiyakenkyujo.hatenablog.com 独ソ開戦時に“スターリンが意気消沈していた”説について、不破哲三は『スターリン秘史』で批判をしようと企てていた。 スターリン秘史?巨悪…

拙著『マンガの「超」リアリズム』が大東文化大学の一般入試に

拙著『マンガの「超」リアリズム』(花伝社)の『この世界の片隅に』評が大東文化大学の2019年度一般入試「国語」の問題文として出題されました。私の町内会系新書はこれまでも入試・模試などに使われたことがありましたが、マンガ評からは初めてです。 http…

大木毅『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』

専門家でもない、当該問題のシロートであるぼくは何を期待してこの本を手にしたのか。 独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書) 作者: 大木毅 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/07/20 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る シロートであるぼくが本書…

有間しのぶ『その女、ジルバ』

「しんぶん赤旗」日曜版2019年7月28日号で今年連載している、もしくは刊行が完結した「戦争マンガ」を書評した。 以下の4作。 有間しのぶ『その女、ジルバ』 山田参助『あれよ星屑』 伊図透『銃座のウルナ』 小梅けいと『戦争は女の顔をしていない』(スヴ…