「行政の政治的中立」をはき違えると何が起きるか

 「あいちトリエンナーレ」の「表現の不自由展、その後」についてのNHK番組「クローズアップ現代」を見た(「『表現の不自由展・その後』 中止の波紋」2019年9月5日放映)。

 ここで、「“公的な場での表現”どこまで?」というテーマで、行政の「政治的中立性」について扱われていた。

 この報道の中で

今、政治的中立に行政が、より配慮する動きが全国で広がっています。内容の変更を求めたり後援を断ったりするケースは、この5年あまりで分かっただけでも43件に上っていました。

 として、そして「平和のための戦争展」という言葉とともに、福岡市のところにタグがつけられた日本地図が掲げられていた(下図、強調のため画像を一部加工)。

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https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190907/k10012067491000.html

 

 この問題はNHKニュースでも報じられたようである。

www3.nhk.or.jp

 ブログで福岡市の名義後援については以前で書かせてもらった(注の部分)。ぼくは文化芸術の振興問題と、市民の自主活動に対する自治体の後援問題は少し区別されるのではないかと思っているが、NHKがこう報じたのはいい機会なので、「平和のための戦争展」の名義後援をめぐり福岡市でどういうことがおきたのかを書いておく。行政が「中立性」をはき違えるとどんなことが起きるのかを見てほしいのだ。

 

名義後援とは何か

 そもそも名義後援とはどういうものだろうか。

 以下の資料(仙台市市民活動サポートセンター「市民活動お役立ち情報」2010年4月1日号)がわかりやすく解説してくれているので、それを参考にしたい。

 皆さんは「後援」という言葉から、どんなイメージ がわきますか?
 後援とは「仕事や計画などの後ろだてとなって、資金を提供したり便宜を図ったりして援助すること」という意味です。具体的には、実施するイベントの趣旨や目的に賛同したマスコミや団体などから、お金や物資・人材の援助を受ける事を言います。
 しかし、今回テーマとなっている「名義後援」の場合は、お金や物資、人材などの援助は一切ありません。 ただし、後援先が企画やイベントの趣旨に賛同していることを表すため、イベントのチラシなどの広報媒体に「後援 〇〇放送」という団体の名称を入れることができるようになります。

 名義後援を得るメリットとして、下の表のように 「1、団体の行う事業への社会的信用が増す」「2、 活動の公共性をよりアピールできる」という事があります。

 具体的な物質的援助はほとんどないが、「後援してます」という名義のみを与えることで社会的信用を増し、公共性をアピールできる、というものだ。「具体的な物質的援助はほとんどない」と書いたが、例えば行政の後援の場合は、公共施設などでチラシを置いたりしてもらえるメリットがある(自治体によって違う)。

 

 「だとすれば、政治的に偏ったものを排除するのはやむを得ないのでは…?」という疑問が湧くかもしれない。しかし、「偏っている・いない」「論争問題になっている・いない」「政治的である・ない」という区分自体が(1)センシティブかつ曖昧なものであるから、その基準自体に「偏り」が生じてしまう。(2)そのあやふやな基準のままイベントや事業の中身に立ち入り出すことで行政が事細かに内容に口を出すことになる。

 まあ、「政治的に偏ったものを排除するのはやむを得ないのでは」という気持ちでもまずは結構。

 福岡市ではどういうことになったのかを見てほしい。

 

 

「平和のための戦争展」の名義後援拒否

 市民団体が開いてきた「平和のための戦争展」は従来福岡市の名義後援を受けてきたが、それが突如2015年に拒否された。

 その後援拒否をめぐり市議会で論戦となっている(中山郁美は共産党議員、2015年09月11日本会議)。

 

◯50番(中山郁美)……市民団体などが共同で成功させる会を結成し、毎年取り組まれている平和のための戦争展について、市長は3年連続名義後援してきたものを、ことしは一転して拒否しました。その理由についてお尋ねします。


◯総務企画局長(中村英一) 今回の平和のための戦争展ふくおかの名義後援の審査に当たりましては、催事の趣旨や全体としての内容が総務企画局が所管する業務の行政目的に合致していることを前提といたしまして、その内容に特定の主義主張に立脚するものや特定の宗教を支持するもの等が含まれていないか、営利を目的としていないかなどを審査し、福岡市の後援名義の使用が妥当かどうかを総合的な観点から判断しております。
 今回、審査過程の中で、催事の一部である漫画展におきまして、原発は要らない、消費税増税やめろ、原発再稼働反対といった表現があること及び講演会の講師の方の基本的立場として、脱原発をしなければならないと主張されていることが確認されましたので、特定の政治的立場、特定の主義主張に立脚している内容が含まれると判断をいたしました。
 このような国政レベルで国民的な議論が存するテーマである原子力発電や消費税等に関しまして、一方の主義主張に立脚する内容が含まれている催事を後援することといたしますと、その主義主張を福岡市が支援していると誤解され、行政としての中立性を保てなくなるおそれがあると判断いたしましたので、名義後援については不承諾としたものでございます。以上でございます。

 

マンガが標的に

 まず、マンガ家の西山進のマンガが標的にされる。

◯50番(中山郁美) まず、具体的に述べられました1点目の、漫画展にかかわる理由については、西山進さんが過去つくられた作品の内容を調べ上げ、これを問題にしたということですね。確認いたします。


◯総務企画局長(中村英一) お尋ねの漫画展につきましては、当日展示される内容が不明であり、申請者に確認したところ、既に提出された既存資料が当日展示されるものと同様であると理解してよいとのことでございましたので、当該資料には、原発は要らない、消費税増税やめろ、原発再稼働反対といった表現がございましたので、特定の主義主張に立脚している内容が含まれると判断し、不承諾の理由といたしました。以上でございます。


◯50番(中山郁美) 局長は、わかっておられないようですけれども、漫画というのは文化芸術のジャンルの一つです。文化芸術振興基本法では「文化芸術活動を行う者の自主性が十分に尊重されなければならない」とされています。今回のあなた方の対応でいけば、後援を受けようと思えば作品の表現まで制限されることになります。

 

思想チェック

 次に、吉岡斉・九大副学長(当時、故人)が槍玉に挙げられる。

◯50番(中山郁美) ……次に、理由の2点目について。ここでは、ジョイント企画として予定されていた、核戦争防止・核兵器廃絶を求める福岡県医師・歯科医師の会総会の記念講演の講師である吉岡斉九大大学院教授が脱原発をしなければならないと主張されている基本的立場だからということを先ほど問題にされました。
 吉岡教授の過去の発言を調べ脱原発という思想や基本的立場を問題にしたということですね。お尋ねします。


◯総務企画局長(中村英一) お尋ねの講演会につきましては、その趣旨や内容が不明であり、講師の方の講演につきましても仮の演題のみでございましたので、申請者に確認いたしましたところ、内容については把握していないとのことでありましたので、当方で調査し、判断材料とすることについて申請者に意向を打診したところ、異存がございませんでした。このため、当方で調査を行い、講師に関する情報を確認したものでございます。その結果、講師の方の基本的立場として、脱原発をしなければならないと主張されていると判断いたしましたので、特定の主義主張に立脚している内容が含まれると判断し、名義後援に関しまして不承諾理由の一つとしたものでございます。以上でございます。

 

◯50番(中山郁美) 要するに、この方の思想や基本的立場を調べ上げて、これを後援しない理由にしたと。これは、憲法が何人にも保障している思想、信条の自由を侵す重大問題だということを指摘しておきたいと思います。
 しかも、これは戦争展そのものでなくてジョイント企画、つまり関連行事で講演される講師ですよ。平和のための戦争展そのものではないんですね。その方の基本的立場を理由に、戦争展そのものの名義後援を拒否したということです。
 70年前、長崎で被爆をして、核兵器廃絶と平和への願いを漫画という芸術を通して市民に訴え続ける漫画家、西山進さん。きょうも傍聴にお見えですよ。市長、あなたは、この方の思想と作品を裁いた。吉岡教授については、原発による被害を二度と繰り返してはならないと、政府の要請に応えて、東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会の委員、これを務められてきた方ですよ。この方のこれまでの発言や思想を裁いた。

  この発想が恐ろしいのは、吉岡が当日の名義後援の企画ではなく関連行事での講師だったという点と、もう一つは、今回の企画そのものでの発言ではなく過去の吉岡の発言から吉岡の「基本的立場」、つまり思想が調べ上げられて、それを理由に拒否がされているという事実である。

 仮に福岡市の発想に立つにしても、普段はどういう役職や主張であろうとも、その講師がTPOをわきまえて当時に喋ることをコントロールすることはできるはずである。しかし、福岡市は過去の発言から「思想」を問題にしたわけである。

 

百田尚樹講演会はチェックなし

 福岡市はすべての後援イベントについてこんな検閲まがいのことをやっているのだろうか?

 

◯50番(中山郁美) ……次にお尋ねしますが、昨年の5月26日、アクロス福岡シンフォニーホールにおいて、福岡・文化振興会が企画した百田尚樹氏の講演会が行われました。経済観光文化局が所管し、名義後援しました。百田氏の基本的立場や思想について言うなら、南京大虐殺はなく、従軍慰安婦はうそだ、日本はアジア諸国を侵略した、これは大うそですなどと発言されている立場です。この立場は、国民的には議論になるところです。しかし、これは文化事業だから、作家としてのこの方の主張や政治的立場まで踏み込んで事前に調べることはしなかったし、問題にもしなかった。だから、名義後援できたんでしょう。経済観光文化局長の答弁を求めたいと思います。

 

◯経済観光文化局長(重光知明) 文化振興事業に関する後援名義の使用承諾につきましては、申請者から提出されます申請書などによりまして、使用承諾基準を満たしているかどうか審査をいたしているところでございます。
 お尋ねの講演会につきましては、申請者がほぼ毎年、定期的に文学作品の作家等を招き、その著書などをテーマにした講演会等を開催している文化団体であり、これまでの実績もございますこと、また、映画化やテレビ化もされ、広く話題となりました「永遠の0」という文学作品についての講演会であり、その著者を招き、日本人の心、生き方等を語っていただくという内容でありましたこと、そして広く一般市民を対象としたものであることなどを確認いたしまして、市民文化の振興に資するものと判断をし、後援名義の使用を承諾したものでございます。以上でございます。


◯50番(中山郁美) ちょっとね、いろいろ言われましたけど、確認しますけど、この百田尚樹氏の思想とか基本的立場をあなたたちは調べてないでしょう。調べたんですか、答えてください。


◯経済観光文化局長(重光知明) おただしの内容が、具体的に、この方についてどのようなものかは、その時点で確認したかどうかについては、今ちょっと申し上げられません。
 確認をいたしましたのは、先ほど申し上げましたとおり、内容につきましては、映画化やテレビ化もされ、広く話題となった「永遠の0」という文学作品についての講演会であり、その著者を招き、日本人の心、生き方等を語っていただくという内容でありましたこと、この内容は確認いたしております。


◯50番(中山郁美) これね、調べてないんですよ。

……

◯経済観光文化局長(重光知明) 失礼いたしました。私ども、使用承諾をいたすかどうかにつきましては、提出されました申請書など、あるいは添付文書などに基づきまして判断をいたしておりまして、その中に、先ほど先生がおただしのような内容は入っておりません。したがいまして、そういった内容については判断をいたしておりません。以上でございます。

 局長はすっとぼけようとしたが、追及が激しくて、答弁をやり直させられている。

 百田はノーチェック。「平和のための戦争展」は厳しく思想チェック。

 

産経記者・財界人もノーチェック

 同じ団体は翌年も申請し、取消にあっている。このときも議会で論戦されていて、「百田的ノーチェック」はくり返されている。

◯50番(中山郁美) ……具体的に聞きますが、昨年12月、市は福岡市役所退職者の会、芙蓉会が行った講演会の名義後援をしています。講師は田村秀男氏、産経新聞社特別記者・編集委員ですが、この方は「消費増税の黒いシナリオ」というみずからの著書の中で、アベノミクスのもとでの消費税10%増税反対を主張しておられます。この方の主張は、あなた方の言う特定の主義主張には当たらないんですか。


◯総務企画局長(中村英一) 一般社団法人福岡市芙蓉会は、福岡市退職職員を会員として構成されておりますが、お尋ねの講演会につきましては、会員が社会の時事問題の把握に努め、社会の発展に寄与していくことを目的として開催されたものであり、経済に関する観点から、中国マネー、爆買いの効果、TPP等を事例としながら、ジャーナリストの視点から時代の変革期にあるという内容で構成されているものでございました。
 名義後援の承諾に当たりましては、事業の内容等により判断を行うものとしておりますが、特定の主義主張にとらわれない内容により、広く一般市民も参加対象として開催されたものであったことから、高齢者が社会において活躍されることは福岡市の行政施策にも寄与するものであるため、名義後援を行ったものでございます。以上でございます。


◯50番(中山郁美) もう一つ聞きますが、市が名義後援した昨年7月の九州未来会議in唐津というイベント、これは元JR会長の石原進さんが実行委員長を務めたものですが、この申請添付書類の中に、未来を拓くという文書があり、その中に次のような記載があります。よく聞いてくださいよ、局長。オブラートに包まれた利己的な個人主義を価値観とした現憲法。日本人としての誇りを取り去った自虐史観、偏狭な社会主義思想、明治以来の廃仏思想云々、こういう記載があるんですね。これはあなた方の言う特定の主義主張には当たりませんか。


◯総務企画局長(中村英一) 九州未来会議in唐津につきましては、九州地域が我が国の経済社会を先導する魅力と活力に満ちた地域となれるよう、30年後のあるべき姿を考えることを会議の開催趣旨として、九州の経済界を中心に、行政、大学などの多くの関係者が参加し、人材育成や基幹産業づくりなどが議論されるものでございまして、経済活動を初めとして九州全体、ひいては福岡市の活性化にも寄与するものであることから、九州経済産業局などの国の機関や大学、九州の全ての県を含む多くの自治体など、30を超える団体とともに名義後援を行ったものでございます。
 御指摘の記述につきましては、会議の主催者である九州経済フォーラムから平成27年度の名義後援の申請が行われた際、参考に添付されていた平成26年度の配付資料に含まれていたものであり、名義後援の判断に当たり、平成27年度もこうした記述がある資料を配るのか確認したところ、そのような資料は配付しない旨を確認したものでございます。以上でございます。


◯50番(中山郁美) 苦しい答弁されますけどね、おかしくないですか。昨年の戦争展の名義後援を拒否した際、関連行事の講師の過去の発言や考え方まで調べ上げて、脱原発だからということを理由の一つにしたではないですか。

 

 財界と産経もノーチェック。

 当たり前である。むしろそれこそ「普通」ではないのか。

 

 

先に結論ありきで材料探しか

 福岡市がいかにこの「平和のための戦争展」の思想チェックの「材料探し」に血眼であり、どんなにずさんな審査をしてきたかは、この問題に関しての高島市長謝罪事件からもわかる。

 実は福岡市は当初「平和のための戦争展」とは関係のない団体(反核医師の会)のホームページを見て、それも後援拒否の理由としてあげていた。ところがそれは同展とはまったく関係のない団体で、あとで反核医師の会から抗議を受け、市長が謝罪に追い込まれているのだ。

市民団体主催の「平和のための戦争ふくおか」を巡り、福岡市から同展の関係団体として名義後援しない理由の一つに挙げられた「核戦争に反対する医師の会(反核医師の会)」(事務局・東京)は13日、「戦争展には全く関与していない」と高島宗一郎市長宛てに抗議文を送付した。市は事実誤認を認め「迷惑をかけて申し訳ない」としたが、「展示内容が名義後援にふさわしくないとの判断は変えないと拒否の姿勢を貫いている。(「毎日」8月14日付)

 

 問題があって調査を始めたのではなく、政治的意図が先にあり、材料を揃えることが自己目的化してしまったために、こんな無様なミスを起こしたのだと考えることができる。

 

 

身分を隠して職員が潜り込む

 2016年の後援取消の際には、書類審査という慣例を破り*1、職員が身分を隠して展示に入り込み、写真を撮るなどして内容をチェックし、特定の主義主張に基づいていたじゃないかということで「虚偽申請」と決めつけて取消にした。

 

◯50番(中山郁美) そこで、異例のことを行った。どのような手続を行ったのか、確認をしていきたいと思います。
 まず、戦争展会場に調査に行ったとされる日付、担当職員の職名、命令したのは誰か、そして、そもそも何のために調査に行ったのか、答弁を求めます。


◯総務企画局長(中村英一) 当該催事につきましては、主催者から見に来てほしいと言われたこと、複数の市民から、戦争法廃止、原発要らないといった偏った内容の展示があるなどの問い合わせやクレームを受けたこと、同様の報道があったこと、また、昨年の経緯もございますことから、総務企画局総務課長の指示により、催事内容を確認するため、8月25日は総務係長及び係員、27日は総務係長、28日は総務係員が会場に行っております。以上でございます。


◯50番(中山郁美) 一旦名義後援したのに、現地では写真を撮りまくって、展示物を細かにチェックするなど、戦争展にだけ特段の体制をとって調査しています。大体ですね、身分を明らかにして、市から調査に来たことを主催者に断って入ったんですか、お尋ねします。


◯50番(中山郁美) なぜ市役所から来たというのを明らかにしないで展示会場に入ったんですか

 

◯総務企画局長(中村英一) 開催期間中でもあり、催事に配慮いたしまして、市職員が確認に行ったことについて、主催者も含め、積極的に公にすることを控えたものでございます。以上でございます。

 

 

◯総務企画局長(中村英一) 8月25日に展示物を確認した際には、受付において写真撮影の承諾はいただきましたが、福岡市の職員として訪問したことはお伝えをいたしておりません。27日の講演会では受付名簿に氏名を記帳いたしております。以上でございます。

 
◯50番(中山郁美) 下手な言いわけはだめですよ。やり方が卑劣です。

命令に基づいて担当職員が職務の一環で調査に行ったのに、全て秘密で調べ上げた。おかしいでしょう。このような現地調査は名義後援を決定したもの全てに行っているんですか。


◯総務企画局長(中村英一) 名義後援を承諾した催事につきましては、市民等からの連絡などにより申請内容と異なる内容が含まれている可能性があると認識された場合や、過去に申請内容と異なる展示がなされた場合などに実施状況を確認しております。以上でございます。


◯50番(中山郁美) なぜこの戦争展だけ特別に調査したのか、もう一度お答えください。


◯総務企画局長(中村英一) 現地確認につきましては、複数の市民から、戦争法廃止、原発要いらないといった偏った内容の展示があるなどの問い合わせやクレームを受けたこと、同様の報道があったことなどから実施したものでございます。以上でございます。


◯50番(中山郁美) 複数と言われましたが、何人の市民からか、お答えください。


◯総務企画局長(中村英一) 今、手元に資料がございませんので、正確な数字は申し上げられません。以上でございます。


◯50番(中山郁美) 一人でもそういう苦情をすれば、あなたたちは調査に行くんですかね産経新聞も確かに報道しましたからね。こういうのをいいことに、ここだけ狙い撃ちしたということではありませんか。


◯総務企画局長(中村英一) 先ほども申し上げましたが、名義後援を承諾した催事につきましては、市民等からの連絡などにより申請内容と異なる内容が含まれている可能性があると認識された場合や、過去に申請内容と異なる展示がなされた場合などに実施状況を確認いたしております。今回、複数の市民から、戦争法廃止、原発要らないといった偏った内容の展示があるなどの問い合わせやクレームを受けたこと、同様の報道があったことなどから、申請内容と異なる内容が含まれている可能性があると認識いたしましたので、実施したものでございます。以上でございます。

 

  職員が身分を隠して写真を撮る。それをもとに「特定の主義主張」のものを選び出して「根拠」にするのである。

 

250点の展示物のうち7点が「問題」

 そして、そのうち、どれだけのものが「特定の主義主張に立脚」していたのであろうか。

 

◯50番(中山郁美) …別の角度で聞きますが、あなた方の言う特定の主義主張が全体の展示の中に一つでも含まれていればだめだということなんですか。


◯総務企画局長(中村英一) ことしの戦争展は、昨年と異なり、展示内容に特定の主義主張に立脚した内容は含まれないという説明がございましたので、名義後援を承諾したものでございます。しかしながら、複数の市民から、戦争法廃止、原発要らないといった偏った内容の展示があるなどの問い合わせやクレームを受けたこと、展示会を確認に行ったところ、実際に特定の主義主張と認められる展示があり、このような主義主張を福岡市が支持していると見られ、行政の中立性が損なわれることになると判断し、名義後援の承諾を取り消したものでございます。以上でございます。


◯50番(中山郁美) ごちゃごちゃ言われるので、具体的に聞きますが、戦争展の展示物全体の中で、あなた方の言う特定の主義主張に当たらない、問題ないものはどのくらいあったんですか。


◯総務企画局長(中村英一) 繰り返しになりますが、今回は主催者の申請を信じて名義後援を承諾したにもかかわらず、実際には申請内容と異なり、特定の主義主張と認められる展示があったため、名義後援の承諾を取り消したものでございます。
 なお、不承諾事由に当たる個々の展示物の割合いかんのみをもって後援の可否を判断するものではございません。以上でございます。


◯50番(中山郁美) 今の答弁だとね、一つでもあったらあなた方はだめという、そういう答弁ですよ。全体の展示品の数は約250点です。当局から事前に受けた説明によると、問題にされた展示は7点ですよ。250点の中からわずか7点、2.8%を見つけ出して、企画そのものが何か問題があるかのように描き出して後援を取り消した。でたらめな判断、対応ではありませんか、御所見を伺います。


◯総務企画局長(中村英一) 何度も申し上げますが、主催者にはこれまで審査基準等を十分説明しており、事前の確認においても特定の主義主張は含まれないとのことであったため名義後援を承諾したにもかかわらず、実際の展示内容に特定の主義主張に立脚した内容が含まれていたことは申請が虚偽であったと言わざるを得ず、取り消したものでございます。以上でございます。


◯50番(中山郁美) 極めて意図的です。

 

 「割合」ではない、一つでも問題があればそれを口実に取り消しができる。写真を撮って250点の内容を細部にわたって必死でチェックし、これは使えない、これも使えない、あった! ここなら潰す口実になる!……そういうことに血道をあげている役人の姿が思い浮かぶ。

 

 

「特定の主義主張」に立脚していないものなどあるのか

 福岡市が繰り返している「特定の主義主張に立脚」とは何か。

 そもそも「特定の主義主張」に立脚していないものなどありはしない。「生ゴミコンポスト化を進めましょう!」という講演会だって「特定の主義主張に立脚している」のである。

 そこで福岡市が持ち出すのは「国論を二分する問題」である。

 しかし、それはどこで線引きされるのか? 与党と野党がある以上、多くの問題で「国論を二分」しているではないか。そして、それは民主主義社会の健全な証でもある。

 

◯50番(中山郁美) ……具体的に聞きますが、例えば、憲法を守りましょう、こういう集会が企画されて、後援申請が出たとしたら、どうされますか。


◯総務企画局長(中村英一) 憲法など国政にかかわるテーマの催事におきましては、過去の事例からも、政治的な立場や特定の主義主張がなされる可能性が高いため、行政の中立性を保つ観点から、慎重に判断することになると考えておりますが、申請される催事ごとに催事の趣旨や全体としての内容が所管する業務の行政目的に合致していることを前提といたしまして、その内容に特定の主義主張に立脚するものや特定の宗教を支持するものが含まれていないか、営利を目的としていないかなどを審査し、福岡市の後援名義の使用が妥当かどうかを総合的な観点から判断することになると考えております。
 したがいまして、憲法を守ろうという集会のテーマだけでは、名義後援の可否を判断することはできないものと考えております。以上でございます。

 

◯50番(中山郁美) 恐ろしい発想ですよね。憲法は国の最高法規ですよ。全ての法律は、これに基づいてつくらないかん。しかも、公務員には99条で憲法遵守義務が課されています。これに合致したものを後援しないというのは、これは地方公務員法にも、あなた方は触れる行為ですよ。全くおかしい、大問題です。
 もう一つ聞いてみますが、マイナンバー制度についてですね。今、国は導入しようとしていますが、日弁連の会長さんが反対声明を出されるなど、国民の中では実施反対の意見も多く、いわば国論は二分されています。
 マイナンバー制度を大いに活用しよう、こういうテーマの企画なら後援しますか。


◯総務企画局長(中村英一) 先ほども答弁させていただきましたとおり、名義後援につきましては、申請される催事ごとに催事の趣旨や全体としての内容が所管する業務の行政目的に合致していることを前提といたしまして、その内容について個別具体的に審査いたしますので、マイナンバー制度を活用するという集会のテーマだけでは、名義後援の可否を判断することはできないと考えております。以上でございます。

 

 ここで指摘されている通り、外形的にほとんど判断することができないのだ。

 ハイエクソ連などの計画当局による裁量次第の経済を批判して述べたように、あらかじめ誰でもわかるルールとして示されそれをもとに人々が行動を予見できる社会ではなく、「ダメ」「よい」は行政の「総合的観点からの判断」というサジ加減一つなのである。

 

 右でも左でも自主活動であれば名義後援を与えるべきだろ

 解決策はどこにあるのか。

 そもそも教育基本法は、政治教育について次のように定めている。

第十四条 良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。

 政治的な教養を尊重するよう定めているのである。

 だとすれば、論争的な政治問題も教育――それは学校教育はもとより、社会教育(成人教育)の場で十分に尊重されねばならない。

 社会教育法では公民館の活動について次のように定めている。

第二十三条 公民館は、次の行為を行つてはならない。……
二 特定の政党の利害に関する事業を行い、又は公私の選挙に関し、特定の候補者を支持すること。

  つまり、例えば今度の選挙で自民党の候補を支持してください、共産党に一票をお願いしますとか、そういうことをやってはいけないし、候補者を講師にして事実上の応援とかになってはいけない、ということである。*2

 これに準じればいい。

 つまり、「右」であろうが「左」であろうが、特定の政党を応援する事業や特定候補の応援以外は、大いにやればいいのだ。もちろん百田でも。*3

 どのような政治主張であっても、様々な立場の活動を市が「後援」することで、言論や表現は活発になる。だからこそ、自治体が内容を問わずに応援する意味があるのである。内容を粗探しして「人畜無害」(行政から見て)のものだけを「後援」することは社会にタブーを生み出し、自由な言論を停滞させる。そして教育基本法が定める「必要な政治的教養」を尊重しない結果にもなる。*4

 

 

 

*1:産経の報道をきっかけにしている

*2:「特定の政党の利害に関する事業」とはよく「政党の演説会などには公民館は貸せない」という解釈が取られることがあるが、政府の回答(1950年2月10日の千葉県教育委員会教育長あての文部省社会教育局長の回答)で次のように書かれている。「特定政党に貸すという事実のみを持って直ちに社会教育法第23条第1項第2号に該当するとはいえない」「当該事業の目的及び内容が特定の政党の利害にのみ関するものであって社会教育の施設としての目的及び性格にふさわしくないと認められるものである場合、又はこれに該当しないものであっても当該使用が一般の利用とは異なった特恵的な利用若しくは特別に不利益な利用にわたるものである場合、若しくは以上の場合に該当しないものであっても特定の政党にその利用が偏するものである場合には、いずれも社会教育法第23条第1項第2号の規定に該当すると解せられるから注意を要する」。つまりある政党に貸して他の政党に貸さないのはダメ、政治教養を高めるっていう目的ならいいじゃない? ということだ。

*3:こう書けば、「お前らは百田の講演会の中止を求めただろう」というかもしれない。まず事実としてぼく個人はそうしたことを求めたことはない。また、個人や市民が個別の講演会を「中止すべきだ」と表現し、「やめろ」と行政に申し入れること自体は権利として存在する。ぼくがここで問題にしているのは行政の名義後援の話であり、行政がどういう立場でのぞむのかという問題である。混同しないでほしい。

*4:ヘイトスピーチはどうなるのか、という問題がある。ぼくは以前の記事でも書いたが、原則的に言論は自由であるべきで、行政はできる限り規制すべきではないと考える。その克服は基本的に啓発と教育に待つべきである。ただし、民族的憎悪は戦争やテロにつながる恐ろしさがあるので、ヘイトスピーチ規制法が定めるような厳密な定義にそってヘイトスピーチが行われ、緊急性が高い場合に限っては、行政によって違法と断じられ、何らかの手立てが取られるべきだと思う。