2017-01-01から1年間の記事一覧

池上遼一・史村翔『BEGIN』他

青年マンガ誌「ビッグコミックスペリオール」の最新号(No.753)を読んでいたら、池上遼一・史村翔『BEGIN』で、「社会・政治評論家にして、ジャーナリストの一面も持つ論客」、評論家鳥谷哲也(とりたに・てつや)が、この物語の主人公格の一人・神津快(こ…

テレビで「シン・ゴジラ」を観ながら

さっき「シン・ゴジラ」をテレビでやっていたので、娘と見る。 昨年一家で映画を観たときの感想を記事として書いた。 http://d.hatena.ne.jp/kamiyakenkyujo/20160819/1471537816 この一文に対して、日本民主主義文学会代々木支部の同人誌「クラルテ」第8号…

都留民子『失業しても幸せでいられる国 フランスが教えてくれること』

外国の視点から日本を叩く、という近代史の初めからあったやり方の問題はまあ承知しているつもりだし、この本で「フランス社会についていささか美化」「フランスは天国ではありません。それどころか問題は山のようにあります」(本書p.106)とエクスキューズ…

山川直輝・朝基まさし『マイホームヒーロー』1

座間の事件がある時にこういう話もなんだけど、人を殺したらバレないようにできるのか、ということをつれあいと考えたことがある。いや、別に殺してないけど。殺す予定もないけど。 そのとき話題になったのは、殺人の痕跡を消すというよりも、例えば自分がパ…

おまΩこ『リアル風俗嬢日記 彼氏の命令でヘルス始めました』

ファッションヘルス(店舗型の個室で性サービスを行う風俗営業。性交=本番は禁止…って建て前はどこでも禁止だけど)に勤めるアラサー女性のコミックエッセイである。 告発や哀調でもなく、過剰な快楽や欲望の強調でもなく、セックスワークをする労働者とし…

儀式について

卒業式とか入学式とかの意義を少しも疑ったことはなかったぼくは、高校時代に、ある高校教師(樋渡直哉)が書いた次の文章に触れて衝撃を受けた。 私はお祭りは好きだが式は嫌いだ。祭りが日常と非日常という絶対的矛盾の自己同一化現象であるとすれば、式は…

山代巴編『この世界の片隅で』

当然この書名から思い出すのは『この世界の片隅に』であるが、一字違い。こちらは『この世界の片隅で』である。 全然違うジャンルの話を書いているならともかく、山代巴編の本書『片隅で』は、被爆した広島についてのルポであり、『片隅に』とあまりにも近接…

ビルギット・ヴァイエ『マッドジャーマンズ ドイツ移民物語』

「社会主義」国であった東ドイツに、モザンビークから大量の移民が来ていたという事実をぼくは知らなかった。 モザンビークはアフリカの南東にある国だが、1970年代にマルクス主義をかかげるモザンビーク解放戦線(フレリモ)がポルトガルからの独立戦争を戦…

高浜寛『エマは星の夢を見る』

30〜40代くらいの疲れた知的な女性のグラフィックを見るのが好きだ。 ということをこのブログでもぼくはたびたび表明してきたが、本作『エマは星の夢を見る』もそのひとつだ。レストランを格付けするミシュランの調査員に憧れ、見事にその職を射止める。 調…

重田澄男『資本主義を見つけたのは誰か』

不破哲三は「資本主義」という言葉は「マルクスが命名」したとくり返し書いている。*1 その際不破は『資本論』冒頭の「資本主義的生産様式が支配している…」という和訳を一つの根拠にあげている。 しかし、マルクスが生前の自身の公刊物の中で「資本主義」Ka…

ブラック隠しの臭いしかしねえ、福岡市の「働き方改革」推進企業認定

「ブラック企業」の反対としての「ホワイト企業」。 つまり完全にコンプライアンスばっちりの企業、みたいな感じ。 そこまでいかなくても、そのつもりでかなり努力しているぜ、という。 今日の日経で見たんだけど、福岡市が「ふくおか『働き方改革』推進企業…

さいきまこ『助け合いたい 老後破綻の親、過労死ラインの子』

『助け合いたい』とはまた直截なタイトルではないかと思ったのだが、読み終えてみて、むしろこれは「助け合う」という言葉の批判的な吟味、「助け合い」イデオロギーの批判ではないのか、と思った。 作者・さいきまこがどう意図したかは知らないが。 「老後…

坂爪真吾・藤見里沙『誰も教えてくれない大人の性の作法』

大人になってから性教育が必要だ、という話は、はるか昔、学生時代に山本直英や村瀬幸浩の本を読んだり、講演会を企画したりして、よく聞いたものである。 本書『誰も教えてくれない大人の性の作法』(坂爪真吾・藤見里沙)を手にとってまずそのような印象を…

信号を守る日本人の方が2.3倍も歩行者事故が多いのは?

いかなる車も通らないことがわかりきっている信号を守っているとか、アホなの?――という趣旨の記事が出ていた。車が一台も通らない信号を守れと声高に叫ぶ人は何を守っているのだろう - 接客業はつらいよ! あけすけビッチかんどー日記! このブロガー=「か…

コナリミサト『凪のお暇』1

最近『たそがれたかこ』とか『傘寿まり子』とか『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』とか、自分の人生を見つめ直してリセットする解放感について描かれた話を好んで読んでいる。今回とりあげる『凪のお暇(いとま)』もその流れで読んでいる。 『凪のお…

藤原辰史『トラクターの世界史 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち』

あえて言おう。 トラクターになんの興味もない。 なんの興味もない男が、トラクターで思い浮かべたことは2つあった。 狭い耕地で活躍した歩行型トラクター=耕耘機のこと 一つは、愛知のぼくの実家は農家であり、家の車庫には長い間、歩行型トラクターがあ…

gryphonのぼくへの批判を考える

前の記事について批判的なコメントがあったので、ぼくなりにちょっと考えてみる。 id:gryphon 『A(例えば自衛隊)は憲法違反。だが「国民合意」の形成まで存続させ続ける』というのは”立憲主義”とは言えないのでは?…とhttp://d.hatena.ne.jp/gryphon/2016…

ディズニーランドか保育園の行事か

これなんですけどね。 東京ディズニーランドに行くという理由で保育園の行事を休ませるか、激しく迷い中 - Bygones ! http://alstroemeria.hatenadiary.jp/entry/2017/09/26/061553 子どもの意見聞けよ、というのが最適解とは思うけど、もしもまじめな保育園…

相澤いくえ『モディリアーニにお願い』2巻

俺はっ!! 震災のっ!! あの時のっ、 死体の絵なんて絶対描かないっ!! たくさんのコンテストで賞をもらっている美大生・本吉は、後輩から震災の時の死体をモチーフにした絵へのアドバイスを求められて怒り狂う。東北にある「バカでも入れる」美大の3人組を描…

野党共闘は「見直せ」

共産党が参加する野党連合政権が誕生し、共産党が閣僚を出せば、その閣僚は国会で「政権としては自衛隊が合憲であると考えるし、そう運用する」と答弁することはもちろんである。 それだけではない。平時には自衛隊が正面装備を買う予算をつけるだろうし、北…

「給料前借り特区」は貧困ビジネスを生み出さないか

福岡市の高島市長のもとですすめられている「給料前借り特区」。まだ提案の段階らしいが。 毎日新聞の記事にこうある。 労働者には日ごとに働いた分の賃金額がスマホに通知され、店頭でスマホ決済することでその金額内で買い物などができ、店の口座には雇用…

保育士のスト 「首都圏青年ユニオンニュースレター」を読む

保育士がストライキをしているというコラムを、食い入るように読んでしまった。 ぼくのもとに送られてくる「首都圏青年ユニオンニュースレター」は前にも紹介したことがあるが、あれ以来、ずっと楽しみに読んでいる。 http://www1.odn.ne.jp/kamiya-ta/newsl…

たかぎ七彦『アンゴルモア 元寇合戦記』

元寇づいていて申し訳ないが、元寇のマンガの話である。 本作のメインタイトル『アンゴルモア』は、ノストラダムスの『予言書』に出てくる謎の言葉として有名で、ノストラダムスより300年前にヨーロッパを灰燼に帰したモンゴルの侵攻を表す言葉ではないかと…

新井孝重『戦争の日本史7 蒙古襲来』

住民有志のガイド役として元寇防塁を案内し、福岡市博物館の展示で、その人たちになぜか元寇について説明するハメになった。シロウトのにわか教師風。 そのとき、 「元と高麗の連合軍に攻められたあと、高麗に逆に攻めていく計画も立てるんですけど、船の技…

あなたのまちの首長は核兵器禁止条約締結を政府に求めているか

核兵器禁止条約ができた。 この条約ができたことによって、核兵器廃絶をめざす運動は、具体的な目標をえることになった。 国レベルでは、「核兵器禁止条約に日本政府として参加せよ」ということになる。 安倍政権には今のところ、その気はなさそうだから、こ…

介護と愛情――ACジャパン広告学生賞の作品を見て

「今日、母は私の名前も言えなかった。」――で始まる、このACジャパン広告学生賞の作品が日経の夕刊に出ていたのを眺めていて、なんだかホロリときてしまって、不覚にも涙が出た。 https://www.ad-c.or.jp/campaign/cm/pdf/np-semi-grandprix.pdf 「これが涙…

小林薫『娘が不登校になりました。 「うちの子は関係ない」と思ってた』

時々学校に行きたがらないぼくの娘 うちの小4の娘は基本的に元気に学校へ行っている。 「基本的に」というのは、時々行きたがらなかったり(いわゆる「登校しぶり」)、ほぼ毎日のように微妙な遅刻をしたりするからだ(1時限目が始まる前の時間に登校する…

渡辺ペコ『1122』1巻

ここ1ヶ月くらいだけのスパンをとってみると、渡辺ペコを再読する率の高さといったら、ない。通勤の行き帰りに何度も読んでしまうわ。 特に渡辺の描くクール系の女性が好きで、『にこたま』の高野とか、『ボーダー』の種田をしみじみ眺めてしまう。 弁理士…

「ジャンプお色気♡騒動」に思う

これな。ジャンプお色気♡騒動。【法律家版】 - Togetterまとめ ぼくもエロマンガを読み、そして「楽しんで」いるし、(エロマンガとはとても分類できないが)今回槍玉にあげられた『ゆらぎ荘の幽奈さん』は、小4の娘も愛読している。 「そのまま真似る」と…

川崎悟司『マンガ古生物学 ハルキゲニたんと行く地球生命5億年の旅』

地球誕生から恐竜滅亡までを100ページ足らず、しかもそれをマンガで解説するという無謀な企画。 小学4年生の娘が「読んでほしい」と言ってきたので、絵本のようにして、いっしょにページを眺めて、ぼくが声を出して読む。 初めから、もしくは全部読むんじゃ…