あなたのまちの首長は核兵器禁止条約締結を政府に求めているか

 核兵器禁止条約ができた。
 この条約ができたことによって、核兵器廃絶をめざす運動は、具体的な目標をえることになった。
 国レベルでは、「核兵器禁止条約に日本政府として参加せよ」ということになる。
 安倍政権には今のところ、その気はなさそうだから、この政権を打倒してそういう政府をつくる、というのが現実的なところだろうが、これは安倍政権であろうが、自民党政権であろうが、考えてもらわねばならないことである。いわば超党派的な、国を挙げての課題ということだ。
 だから、まずは「安倍さん、参加するよう考え直してもらえませんか」という、安倍政権へのお願い(要求)の運動となる。


 今日は広島の原爆忌であるが、広島市*1が読み上げた平和宣言は、憲法前文の立場を前提にして、まさにこの要求を安倍政権に「提起」した。

特に、日本政府には、「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓う」と明記している日本国憲法が掲げる平和主義を体現するためにも、核兵器禁止条約の締結促進を目指して核保有国と非核保有国との橋渡しに本気で取り組んでいただきたい。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170806-00000018-asahi-soci

 これは被爆地だからということでの「極端」な要求だろうか。
 実は、広島市長が会長を務める「平和首長会議」というものがあって、世界162カ国7417都市(現時点)の首長が加盟している。
http://www.mayorsforpeace.org
 日本では1682都市(市町村)が加盟していて、これは日本の市町村総数1718の97%*2にあたる。加盟自治体は下記URLで確認できるので、あなたのまちの市町村長が加盟しているかどうかぜひ確かめてほしい。
http://www.mayorsforpeace.org/jp/membercity/map/asia.html

 すなわち日本の大多数の市町村長が加盟していることはまちがいない。


 この平和首長会議は、長年、核兵器禁止条約を求めてきた。
 いまこの会議が一番力を入れているのは「2020ビジョン」という行動計画の実践である。
http://www.mayorsforpeace.org/jp/ecbn/

 このビジョンは4つの目標を立てている。

  1. 全ての核兵器の実戦配備の即時解除
  2. 核兵器禁止条約」締結に向けた具体的交渉の開始
  3. 核兵器禁止条約」の締結
  4. 2020年を目標とする全ての核兵器の解体
http://www.mayorsforpeace.org/jp/ecbn/

 このうち2.はすでに実現してしまった。
 そして注目すべきは3.である。

核兵器の開発、製造、実験、備蓄、使用等の禁止及びその廃絶について規定する「核兵器禁止条約」が締結されるよう、各国政府等に要請する。

http://www.mayorsforpeace.org/jp/ecbn/

 この中身を備えた条約はすでに採択された。
 その条約について、「各国政府」に「締結」を要請しているのである。
 「締結」は、外務省の公式サイトを見てもらうとわかる通り、その国の政府が条約への参加=署名をした上で、それを国会にもちこみ、承認を受けたのちに「条約に拘束されることについての国の同意の表明」をすることである。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/pdfs/tpp03_03.pdf
 具体的には「批准」(天皇の認証)、「受諾」・「承認」(天皇認証を要しない簡略な手続き)、「加入」などの形があるが、核兵器禁止条約ではどれでもいいとしている(14条)。


 すなわち、核兵器禁止条約の締結を各国政府に求めることを、加盟している自治体のトップをしばる行動計画として定めているのである。


 つまり、日本の圧倒的多数の人口が住んでいる地域の『トップ』たちが、核兵器禁止条約の締結を日本政府に求めている、ということになる。
 しかし実際には、そんな実体がない市町村もあるだろう。加盟はしているけど、加盟しているだけ、「2020ビジョン」なんて知らん、とか。多そうな反応は「首長会議の方でまとめてやっているので、それでいいです」みたいな反応だろう。


 だけど平和首長会議の規約には「その連帯都市の置かれている実情を尊重しつつ」と定めつつも、「目的達成のため、誠実に行動すること」(第2条)としている。


 となれば、核兵器廃絶運動が地域ですべき運動の課題は、具体的に次のようになる。

 あなたの住んでいる地域の市長・町長・村長は、その首長自身が参加する会議が決めた「2020ビジョン」にそって、日本政府に対して核兵器禁止条約への参加を真剣に求めているのか?

余談

 核兵器廃絶について、「核保有国に言わなきゃしょうがねえだろ」という意見があるし、最近もそんなツイートを見かけた。
 北朝鮮をふくむ核保有国にモノを言うことはきわめて有効なことである。そのことは否定しないし、積極的にやっていくべきだと思う。
 だけど、一つひとつの主権国家が、核兵器禁止条約に参加することで核保有国を追い込む、というアプローチもある。そして主権国家を動かすために、その国の地方政府を一つひとつ変えていく取り組みをしてもいいし、主権国家での世論を変えるために、その国の国民を説得してもいいではないかとも思う。
 だから、8月6日に日本と世界の目が注がれている広島に来て「核兵器反対」を訴え、核兵器禁止条約への政府の参加を呼びかけること、そうしない政府は取り替えるべきだと訴えることは、有効である。*3

*1:ちなみに松井市長は自民党公明党民主党推薦の市長である。

*2:1682の分母がこれでいいかどうかはよくわからないのだが。

*3:なお、前提として、北朝鮮核兵器に対して核兵器の威嚇や使用で対抗すべきではないかという意見についても一言言っておく。この間、被爆者や国際社会の多くの国々は「核兵器の非人道性」を訴え、国連でも決議されてきた。「核兵器の非人道性」の共通認識とは単に「核兵器はひどいですね」という確認にとどまらない。非人道的な兵器であるということが本当に認識になるなら、防衛や対抗であっても使ってはならないという拘束につながることを意味する。「ひどい兵器だけど、対抗のためには使わなきゃしょーがないやん」というふうにはならないということである。「非人道性」の確認にはそういう重さがある。