2017-01-01から1年間の記事一覧

魚戸おさむ(大津秀一監修)『はっぴーえんど』1巻

小林麻央さん逝去に がん専門医が思うこと(中山祐次郎) - 個人 - Yahoo!ニュース この記事で、 多くの方は映画やドラマなどで、ラストシーンがかなり悲惨なものだと思っているかもしれない。例えば抗がん剤の副作用でゲーゲー吐き、何も食べられず、痛みと苦…

百名哲『モキュメンタリーズ』1巻

「高校時代の伝説の先輩」というカテゴリーが自分の中でえらく響いてしまった。 本作第3話「野宿の墓」に出てくる、「オーホリ先輩」の「伝説」はこうである。 ――夏休みに北朝鮮へ単身密航。 ――ヤクザが抗争中の福岡の繁華街で野宿。 ――そしてイケメン。 安…

岩竹美加子『PTAという国家装置』

こんなに傲慢な任意団体があるだろうか? 最近、PTA問題を特集した読売新聞の記事「PTAは必要ですか」(2017年6月1日付)を読んだ。 3人の識者がコメントしているが、日本PTA全国協議会・専務理事の高尾展明のそれをしみじみ読む。 交通事故や犯罪の発生な…

PTAを退会した話と音楽鑑賞会で100円多く払った話

退会しても別に不利益はこうむりませんよ PTAを退会した。 うちの小学校でただ一人(厳密にいうと、ただ1家庭)のようである。 公式には(つまりPTA相手には)何の理由も告げていない。 きっかけとしては、PTAが任意加入であることをきちんとしてほしい、と…

『史群アル仙のメンタルチップス 不安障害とADHDの歩き方』

タイトルにある通り、不安障害、ADHDを抱えた作者の自伝であり、「メンタルチップス」、つまりメンタルの面でのちょっとした(自分流)対処法である。 うまく学校や社会になじめず、生活が破綻し、死ぬ直前まで追い詰められる様は『さびしすぎてレズ風俗に行…

田宮昌子『「北支占領 その実相の断片 日中戦争従軍将兵の遺品と人生から』

宮崎の「平和の塔」(その実態は「八紘一宇の塔」だけど)前の売店にふらりと立ち寄った時、まったく偶然に手に取った。 「戦況や戦闘ではなく、一見『平穏な日常』と化してさえいた占領の諸側面」を描き、「対象となってこなかった諸側面」を描いているとい…

伊勢田哲治・なつたか『マンガで学ぶ動物倫理 わたしたちは動物とどうつきあえばよいのか』

日経新聞によれば、イタリアの法律では、 生きたエビを氷の上に載せておくのは虐待に当たり、禁錮刑や5000ユーロ(約67万円)から3万ユーロ(約400万円)の罪になる。 http://www.nikkei.com/article/DGKKZO95101870U5A211C1NZ1P00/ という。 動物の命を奪…

かたおかみさお『ヒビコレ 公民館のジョーさん』

よのなかの人の「公民館」のイメージは弱い ぼくの「公民館」の長い間のイメージは「町内会の寄り合い場」だった。 ぼくの生まれた集落に「公民館」と称する建物があり、30畳ほどの平屋だった。ここは、町内会の寄り合い、子ども会のイベント、村祭りの準備…

水島朝穂・大前治『検証 防空法 空襲下で禁じられた避難』

引き続き朝鮮半島が、軍事的な衝突の危機にある。 北朝鮮の軍事挑発や核開発を止めさせる努力をつくすことは言うまでもないが、他方の当事者であるアメリカと軍事同盟を結んでいる日本は、国連憲章にそむくアメリカの軍事行動、端的にいえば先制攻撃を絶対に…

「共産党ファースト」のせいなの?

長島昭久が民進党を離党した。野党の「共産党ファースト」こそ変えなくてはいけない −−長島昭久衆議院議員に聞く(山本一郎) - 個人 - Yahoo!ニュース それから、野党共闘そのものを否定しているわけでもありません。まず民進党がしっかりと政策の柱を立てる…

上田惣子『マンガ 自営業の老後』

書店で手にとって買った。 自営業(イラストレーター)である著者がこのまま仕事が枯れていく不安にかられながら、自営業でどのような老後を過ごしている人たちがいるかを取材したり、どう対策をとったりしたらいいかを専門家に聞いたりしている。 本書を読…

空襲のない日常――『この世界の片隅に』と朝鮮半島の危機

米朝間の戦争を強く危惧する。 いろんなことはこの間あるけども、これほど重大な政治問題はない。 北朝鮮への事実上の出撃拠点となる在日米軍の基地があり、アメリカとの軍事同盟国ともいうべき日本が、ミサイル、テロ、大量破壊兵器の標的となることを恐れ…

片野親義『公民館職員の仕事』

町内会に代わるものとしての公民館 これは、書評というよりも覚書、メモである。 片野親義『公民館職員の仕事 地域の未来づくりと公民館の役割』(ひとなる書房)に触発された面が大きいが、それから関連書をいくつか読んでいくうちに結びついたことを書き付…

山本直樹『レッド 最後の60日 そしてあさま山荘へ』

連合赤軍事件をモデルにした実録『レッド』は、第二部も大詰めである。山本直樹『レッド』1巻 - 紙屋研究所 最初の書評でも書いたが、『レッド』は実録に徹している。どんな小さなセリフやしぐさも手記や記録に根拠を求めている。 追い詰められた集団が狂気…

白波瀬達也『貧困と地域 あいりん地区から見る高齢化と孤立死』

まず「あいりん地区を知る1冊」として 正直なところ、「釜ヶ崎」、あいりん地区がどうなっているのか、ぼくはよく知らなかった。 「日雇い労働者の街」というイメージもあり、少なくともぼくが左翼運動に加わった1980年代にはたしかにそういうイメージ通り…

「ちゃお」的なものと戦う 「ユリイカ」東村アキコ特集

「少女マンガ的つまらなさ」との対決としての東村作品 「ユリイカ 詩と批評」2017年3月の臨時増刊号の東村アキコ特集に「『雪花の虎』のカッコよさはどうやって成り立っているのか」という一文を寄せました。 『雪花の虎』を「宝塚」と関連して論じるのは同…

谷口ジローの死

谷口ジローが亡くなった。 特に感慨はない、と思っていたが、自分がこの14年間のブログ人生(?)で書いたものを振り返って、結構とりあげていることに気づいた。 『神々の山嶺』 「山の量感」と「登山という近代個人の登場」を描き切った『神々の山嶺』は中…

新たな町内会本『どこまでやるか、町内会』を出します

新たに町内会の本を出します。 『どこまでやるか、町内会』です。ポプラ新書からです。 前著『“町内会”は義務ですか?』が町内会をめぐる基本問題(プラスぼくの体験)を書いたとすれば、今回は、それを出してから、町内会関係者や町内会に入らない人たちか…

勉強は役に立つか

「勉強って、やらんといかんと?」と小3の娘は今日も涙をボロボロこぼしながら算数の宿題をやっていた。「きもちわるい〜」と叫び、途中で放り出して彼女は寝た。かわいそう。 下記のエントリが少し話題になっていた。勉強は役に立たない 小学校・中学校・…

古処誠二『線』

引き続き、『この世界の片隅に』から関心を広げて、戦争小説を読んでいる。先に古処誠二『死んでも負けない』を挙げたが、同じ古処の『線』を読む。 アジア・太平洋戦争における南方戦線、開戦当初の時期での、現在のパプア・ニューギニアでの旧日本軍による…

PTA問題は「必要か不要か」で論じるべきではない

任意団体であれば、何をやっていても問題ない PTAをめぐる記事とコメントを読んで、問題の整理のために書く。#PTAやめたの私だ 「入会しません」 ひとりの主婦の静かなる抵抗 PTA批判について思うこと - 感想文 PTA批判について思うこと その2 - 感想…

五十嵐健三『匿名の彼女たち』

『匿名の彼女たち』は、正直に言えばわりと楽しみにしているマンガの一つである。 風俗が好きな33歳のさえない独身サラリーマン男性が、全国に出張するさいに、ほうぼうの風俗店に立ち寄り、そこであった出来事を淡々と、主人公の視点から言えばペーソスを交…

古処誠二『死んでも負けない』

ビルマ従軍経験者はうわごとで誰に謝っているのか? 『この世界の片隅に』関連で文献をたどり、古処にたどり着いた(←イマココ)。 とんでもない小説である。 ビルマ戦線を生き延びた、粗暴きわまる祖父を、現代の高校生が観察する体裁をとるのだが、祖父が…

『戦下のレシピ』『昭和経済史』

『この世界の片隅に』のアニメをきっかけに、戦時中の日常生活についての文献をいくつか読んだ・読み返した。 戦争になるとなぜ食糧難が起きるのか――斎藤美奈子が示した2つの理由 斎藤美奈子『戦下のレシピ』(岩波現代文庫)、中村隆英『昭和経済史』(岩…

柳原望『かりん歩』1巻

ぼくの故郷は愛知だ。喫茶店が実に多い。多かった。 つれあいは、ヨメとして実家に行くたびに、喫茶店の多さに驚愕していた。何しろ、ぼくのいた小学校区にコンビニができたのは、ぼくが故郷を出て社会人になり、相当時間が経過してからであったけど、田んぼ…