2011-01-01から1年間の記事一覧

玉置勉強『恋人プレイ』

玉置勉強の『恋人プレイ』では「秘密の自分をさらけだしている瞬間」とか「知らない自分が顔を出す」という装置としてSMが使われているのであって、『ナナとカオル』のようにSMそのものをつきつめた漫画ではない。 『恋人プレイ』は文系オタクのような風…

週刊プレイボーイに『ナナとカオル』の書評を書きました

週刊プレイボーイの2011年7月18日号「この漫画がパネェ!!」に甘詰留太『ナナとカオル』(白泉社)の書評を書きました。 SMというものに興味がない…というぼく自身の立場を冒頭に宣言しつつ、「SM無関心層」から見てこの漫画が一体どう読めるかを書き…

血まみれの夏祭りのこと

団地の夏祭りが終わった。 自治会長として年間最大の懸案が片付いてほっとした。 午後9時頃おわって、後片付けをみんなでしていて、ぼくは電気のドラムコードなどをしまって戻ってきたら、みんなが遠巻きでみているその向こうで誰かが誰かを大声で怒鳴りつ…

クロポトキン『相互扶助論』、平居謙『「ワンピース」に生きる力を学ぼう!』

平居謙『「ワンピース」に生きる力を学ぼう!』(データハウス)は、本としてはなかなかにひどい出来だと思うが、マンガ『ONE PIECE』をどうとらえるかということを示唆したという一点において、ぼくにとっては非常に刺激的な一冊だった。「生きる力」をテー…

民医連新聞で『MASTERキートン』の書評を書きました

民医連新聞の2011年7月4日付に「マンガ評論家紙屋さんの『この一冊を読んでみた』」第4回に浦沢直樹(作画)・勝鹿北星(原案)『MASTERキートン』の書評を書きました。 このコーナーは、「新旧」の漫画を紹介していいことになっているので、『MASTERキー…

鎌谷悠希『少年ノート』

うつくしいシーンをみたい。きれいなことばをききたい。 そういう動機で漫画を読み、あるいはその漫画に憑かれるということがある。 鎌谷悠希『少年ノート』はまさにそういう漫画である。 「恥ずかしげもなく」 引っ越しをしてきて入学式前に会った男の子。…

水谷フーカ『14歳の恋』

14歳の恋というタイトルに何を期待してこのマンガを買うのか。 たとえば浅野いにお『うみべの女の子』だと、中学生がはずみで不器用なセックスをする描写を読むことで、大人がセックスに対して必ずいくらかはもっている「食べ馴れた」感覚をいっさい排除して…

「週刊プレイボーイ」で漫画評を連載します

集英社「週刊プレイボーイ」で漫画評を連載します。「この漫画がパネェ!!」というコーナーです。ブログ「たまごまごごはん」の方と交代で書くので、隔週(月2回程度)ということになります。 最初のが掲載されるのは2011年7月4日号ですので、もう発売さ…

槇村さとる『Real Clothes』12巻

槇村さとる『Real Clothes』はいよいよ大詰めである。 槇村さとる『Real Clothes リアル・クローズ』1巻 老舗デパート越前屋で服を売る絹恵の部下・吉永に焦点があたっているのがこの12巻。 そして、作者・槇村の吉永批判、吉永のようなタイプの人生観批…

電力会社関連企業の「意見メール出せ」指示のこと

きょう、国による玄海原子力発電所の2・3号機再開にかかわって、「県民説明会」がある。その名も「県民説明番組」。 ケーブルテレビやネット中継で流すからっていうことで、会場非公開なうえに、県民傍聴・マスコミ取材は禁止、そして85万佐賀県民の「代表…

「週刊アスキー」で「私のハマった3冊」を書きました

「週刊アスキー」2011年6月21日号で「私のハマった3冊」を書きました。Webの「週アスPLUS」にも載ってますのでご笑覧ください。 http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/045/45373/ 震災・原発事故を経た後で、ディストピア、絶望郷、パニック、大災害の漫画…

電力会社はもう少し真剣に考えようよ&運動側も要求を整理してね

電力会社との交渉(意見交換)に参加して 原発を見に行ったのとあわせて、電力会社との交渉(つうか意見交換)に参加する機会があった。 電力会社側が「福島の事故は津波によって引き起こされた」といったので、こちらの一人が「いや、地震と津波でしょ」と…

日坂水柯『レンズのむこう』

8つの短編集。「メガネの女の子は好きですか?」とオビにあるけど、すべて「メガネ女子」が登場する。もっというと「メガネ女子」のセックスをめぐる8編。ええまあ好きですよ。メガネかけた女性。 「マイスイート・らんじぇりー」は、女子高生の主人公とつ…

民医連新聞でマンガ評書きました

連載の3回目です。 ねむようこ『午前3時の無法地帯』『午前3時の危険地帯』について書きました。 医療労働者って「人の役に立ってる」という気持ちから、自己実現系のワーカホリックに陥りやすいと聞いています(人員不足が根本にあるとしてですが)。 「…

鬼頭莫宏『のりりん』2巻

河合克敏『とめはねっ!』8巻を読み、その後なぜか鬼頭莫宏『のりりん』2巻を読み直すという機会があったんだが、「ウンチクの解説量を漫画でどうさばくか」ということを再び考えた。 このテーマはこれまでも何回か考えている。 『とめはねっ!』は高校書…

角膜びらんと原発見学

目がむっちゃ痛いのに記事更新してる俺を笑ってほしい うおー。また角膜びらんになってしまった。 http://www1.odn.ne.jp/kamiya-ta/shisouchizu.html そんなもん、わざわざ参照URLのせて書かなくてもいいんだけどさ。目がかわいて、起きたとき、まぶたがひ…

世界の地震の震源分布と原発立地

資料としてメモっておくためのもの。 「しんぶん赤旗」日曜版2011年5月22日号に載っていた「世界の地震源分布と原発立地」の図。「米地質調査所と世界原発事業者協会の資料から作成」とある。赤いのが「大地震が起きた地点」、黄色いのが「原発立地」である…

原発を初歩から学ぶ 武谷三男編『原子力発電』ほか

原子力発電についてこれだけ議論になっているのだが、初歩的なところから知りたい場合、いったい何を読めばいいのだろうか。 原子力発電の基本的なしくみを知りたい 「原子力発電の基本的なしくみを知りたい」という場合、たとえば電力会社にいって無料のパ…

『ベルベット・キス』『義父と先生と』『ずるいカラダ』『S彼×禁断』『快楽電流』

以前、二十人ほどの作家の書いた官能競作集を話題にしたことがある。知人が、「それじゃあ、あなたが面白いと思ったやつを一つか二つ見せてくれる?」と言うので、後日、私がもっとも“感じた”二編を送ったところ、彼女が笑いながら言ったものだ。「あなたの…

猪木武徳『戦後世界経済史』

オビにあるように、本書は「2009年エコノミストが選ぶ経済書ベスト10」の第一位であり、「週刊ダイヤモンド」の2009年の「ベスト経済書」の第二位であった。 タイトルのとおり、戦後の世界経済史の概観を頭の中につくりたいと思って読み始めた。最後の方を読…

谷口ジロー『ふらり。』 村上もとか『JIN-仁-』

『ふらり。』は、全国的測量に出発する前の伊能忠敬とおぼしき人物と、妻・お栄が江戸の街で生活する様子を描いた漫画だ。 視線を鳥、蟻、亀、トンボといった様々な動物に移すという夢とも現ともつかぬ設定をとりいれることで江戸の街の散歩、花見、潮干狩り…

山田デイジー『先生に、あげる。』

40をすぎた子持ちの男が、少女漫画を読むためには、作品世界全体を客観的に眺めては絶対にいけないのだ、ということにようやく気づけるようになった。「ちょwww犯人が証拠残るような写メ送るなwww」 「なんでほとんど知らない男の下宿にいきなり女子…

『進撃の巨人』と『失楽園』

twitterで「『進撃の巨人』は『失楽園』(ミルトン)を背景にしているのではないか」という旨の指摘があったので、考えてみた。 諫山創は自身のブログで、映画評論家の町山智浩が「バットマン」シリーズの「ダークナイト」で『失楽園』を語っているのにイン…

指しゃぶり

新しい年度になって、娘も新しいクラスになった。この前、クラスの保護者懇談会があった。そこで「クセの是正」ということについて一般的な話があった。子どものクセを無理に直そうとすると、別の、もっと重大なクセが出てきてしまう恐れがあるよ、という話…

新連載始まりました 民医連新聞

「民医連」という医療機関の連合体の機関紙「民医連新聞」で連載させてもらうことになりました。「マンガ評論家 紙屋さんの『この一冊を読んでみた』」です。 民医連というのはだな、「全日本民主医療機関連合会」の略称だ。 戦後、医療に恵まれない人々の要…

上野顕太郎『さよならもいわずに』

平均寿命よりもずっと若い年齢で、最愛の人がいなくなってしまう――そういうふうに思いを馳せることが、最近3つのパターンでぼくを襲っている。 第一は、義姉(兄の妻)が亡くなったことだ。40代、がんであった。高校生と大学生の子どもがいた。兄が葬儀の日…

吉村昭『三陸海岸大津波』

今回の震災の後、この本の存在を知り、地元のジュンク堂に走ったが、すでになかった。在庫状況をみると、1〜2日タッチの差だったようである。 県立図書館で借りるか、と思って図書館に行ったが、そもそも備えてなかった。関係ないが、福岡県立図書館の蔵書…

原発と自動車

原発に由来する放射線の影響を「小さく」感じさせる工夫は、昔からいろいろと考案されてきた。 自然放射線や医療被曝を引き立て役にもち出して他の被曝を「とるに足りない」と印象づける手法は、放射線の影響をできるだけ少なくしようという前向きの姿勢とは…

池辺葵『繕い裁つ人』

「朝日新聞」(2011年4月3日付)でササキバラ・ゴウが紹介しており、購入した。 絵柄を見たとたんに、よくある「癒し」「ロハス」的な物語を想像してしまった。祖母から受け継いだ小さな店でオーダーメイドの服を作っているが決して量産はしない、という筋…

南Q太『ひらけ駒!』

子どもに「お稽古ごと」をさせるのは、単に「好きなことをやらせたい」という心性にもとづくものか、それとも「眠っている才能があるかもしれない。機会を与えて開発し人生の選択肢をふやすのは親の責務」というような責任感からだろうか。あるいは「他のお…