指しゃぶり

 新しい年度になって、娘も新しいクラスになった。この前、クラスの保護者懇談会があった。そこで「クセの是正」ということについて一般的な話があった。子どものクセを無理に直そうとすると、別の、もっと重大なクセが出てきてしまう恐れがあるよ、という話だった。指しゃぶりの代わりに、お尻の穴をいじるとかね。

 たぶん、それは、ぼくら夫婦が娘の指しゃぶりを「やめさせる」ために指に絆創膏をまいたりしていることを牽制するものなのだろうと思った。そのことを連絡のノートにも書いたのだ。

 前にも紹介したことがあるけど、小児科医の松田道雄は子どもの自慰を指しゃぶりとを「かわらない」ものとして同列に扱い、

自慰は幼児によっては、指しゃぶりとかわらない。それが性的であるとしたら、指しゃぶりが性的である(フロイト流のかんがえかただと口唇は性的地帯)のとおなじ程度である。どちらも、子どもに適当なエネルギー発散の場が与えられていないためにおこったものである。どちらも、子どもが友人とあそんだり、戸外で元気よくあそぶようになれば、いつのまにか自然になおってしまう。どちらも将来に何の害ものこさない。(松田道雄『定本 育児の百科(下)p.263〜265)

と、他のことで昇華するように勧めている。

 最近読んだ新聞(読売新聞2011年2月11日付)でも、

東京都立小児総合医療センター(府中市)医師の田中哲さん(児童精神科)は「口に指などを含むのは、赤ちゃんが母親の乳首を吸うと心が安らぐのと同じで、安心や充足感を得るための行動」と説明する。そのため、多くは不安やストレスが解消されれば癖は直る。そうした行為を「恥ずかしい」と感じ、自らを客観視できるようになる就学前頃から、自然と直る場合も多いという。

http://www.yomiuri.co.jp/komachi/childcare/cnews/20110211-OYT8T00197.htm

「やめなさい」などとしかることは、癖を直すためには逆効果だ。不安やストレスが増し、安心感を求めてかえって癖が出てしまうという。「無理にやめさせようとするのは、根本的な解決にならない可能性がある。親の前でやらなくても、隠れてやるか、他の癖に変わって出ることもありうる」という。

http://www.yomiuri.co.jp/komachi/childcare/cnews/20110211-OYT8T00197.htm

とされていたので、ぼくの方はほとんど頓着がなかった。

 しかし、よりによって保育園の歯科検診で「不正咬合」と診断されたので、「指しゃぶりをしているが止めさせた方がいいのか」と問うと「やめさせてください」という処方が返ってきたのである。

 指しゃぶりについては、ぼくの母は「世間体」から指しゃぶりをうるさくいう派であるが、つれあいは、永久歯になっても指しゃぶりが治らずに「出っ歯」になることを心配していた。
 たとえば、同じ読売でもこんな記事もあるのだ。

鶴見大歯学部教授の朝田芳信さんも「歯科的には、3〜5歳の間にやめることができれば問題ないといわれており、あまり神経質にならないで下さい。赤ちゃんは指をなめたりしゃぶったりして自分の体を確認し、モノへの認識を深めていく」と話します。


ただし、小学校に入ってからも続く場合は、乳歯だけでなく永久歯の歯並びも悪くし、顔の骨格にも影響することがわかっています。(強調は引用者)

http://www.yomiuri.co.jp/komachi/childcare/baby/20050613ok0e.htm

 あと「衛生上もよくない」、というのがつれあいの主張である。
 ただ、つれあいも「無理にやめさせる」弊害もわかっているので、本人が「やめたい」という意志が確認でき、ゆるやかなチェックであればいいのではないかということで、指に絆創膏をまくことになったのである。

 ぼくは「大きくなれば自然にやめる」という考えなので、どうも釈然としないのだが、上記のようなことで妥協したのである。

 それと、園の歯科検診で、医者の処方として「やめさせよ」という指導があったのに、保育士としては「無理にやめさせるとよくないですよ」というふうに言われるのはどうかと思う。
 つれあいはオトナなので「どちらも専門家として意見を言ったまででしょ。別にウチのやり方を絶対こうしろとかは言ってないと思うよ」とたしなめた。
 うう。それはそうなんだけど、なんかどうもバンソーコーを見た園側が「はー…わかってねーなー」みたいにドヤ顔で注意しているようにも思われてどうもなんかアレだったんだが。


 ヨソの家では指しゃぶりとかクセについてどう考えているのだろうか。