KUJIRA『ハグ キス ハグ』

 既婚者との不倫に始末をつけた木原蓉子が、同じマンションに住む(そしてかつて同じ職場で働いたことがある)年下の男性・藤原広海と新しい恋愛をはじめる話である。

 KUJIRAはさあ、『ホンノウスイッチ』や『ガールズノート』なんかもそうだけど、セックスを丹念に、いやらしく、そして幸せそうに描いてくれるのが嬉しい(もともとアダルトなコミックを描いていたようだが、ぼくは『あたたかな針』の頃からしか知らない)。

 

 本作もセックスの描写のそういう幸せそうな感覚、あるいはいやらしい感じが好きが読んでいる。あわせて、同棲しているベッタリ感も。3巻がそういう描写が続いていて、特に好き。

 

 各話の扉絵も肉感的で素晴らしい。

 波乱なんか起きなくていいよ。こういうベッタベタの日常をずっと描いていてほしい。

 エロってことですか? と聞かれると、うーん。いや間違いなくエロいんだけど、隠微な感じじゃないんだよな。例えば感じている表情で征服感があるとか、体のパーツが強調されているとか、そういうのではなく、キスやハグしあっている関係性がグラフィックから伝わる。つまり二人の関係が全体性をもって描かれて、それが「幸せそう」という印象を与えるのである。まあだからタイトルなんだろう、とは思うけど。