地方議会、地方自治体、あるいは民間の一つひとつの取り組みは、国の政治を変える上で、どんな役割を果たすのか。
そんなことを考える上で、同性婚をめぐる判決について、6月14日付「しんぶん赤旗」に掲載された鈴木賢・明治大学法学部教授インタビューは興味深かった。
同性婚を認めない現行制度を、法の下の平等を定めた憲法14条と、家族生活における個人の尊厳・両性の平等について定めた24条2項について違憲とする判決が次々積み重なっていく意義について述べたものだ。
違憲の判断を導く上で、鈴木は2つの点が大事だったとして、一つは国際的な同性婚承認の広がりをあげる。そして、
もう一つは、どの裁判所の判決でも触れられている自治体のパートナーシップ制度の広がりです。同性婚について社会的承認が得られていることを示す非常に有力な指標に使われています。私たちは2018年2月に「自治体にパートナーシップ制度を求める会」をつくりました。この制度の広がりが婚姻にかかわる規範を変えるテコになると活動していますが、裁判所の判断をみても、その通りになっています。
地方の制度が積み重なっていくことが、国の制度や憲法判断に影響を与えていることがここでは生きた実例として示されている。
最近、田川とまた・ 純猥談編集部『純猥談4』を読んでいて、 「大窪」と「神谷」という二人の男性が自分たちの愛情を社会的に宣言する示すものとして結婚をとらえ(これはぼくと同じ)、現在の婚姻制度の代わりに自治体のパートナーシップ制度を生かすことが描かれていた。
それは単に「話の添え物」とか「脇にある解説」とかいうレベルの話ではなく、登場人物の二人が生き方を示す決定的な制度として描かれていた。
下図のコマの扱いを見てもらえばその扱いの大きさがわかるだろう。
つまり、サブカルチャーの作品に自然な形で示されるようになるほどに、自治体のパートナーシップ制度は、社会の中で大きな意味を持ってきているのだ。
鈴木はあわせて、次のようにも述べた。
判決の中で必ず触れられているのが民間企業のとりくみです。同性パートナーを家族として扱って手当などを支給しています。新たな層がこの問題に関心を示すようになっており、支援の厚みを感じています。
民間企業における取り組みの前進も、やはり判決に大きな影響を与えているのだという。
その上で、14条と24条2項には反するという判決はあっても、まだ婚姻制度について触れた24条1項*1についての違憲判断はないのだが、その状況を変える条件について、鈴木はこう解説する。
8日の福岡地裁判決は「同性婚が異性婚と異ならない実態と国民の社会的承認がある場合には、同性婚は『婚姻』に含まれると解する余地がある」と述べています。社会的承認の度合いに変化が生まれたら、24条1項を根拠に違憲の判断をする可能性があるといっています。
ぼくらは、地方議会に向けて、例えば子どもの医療費無料化を求める署名運動をする。今広がっているもので言えば学校給食の無償化を求める運動だろうか。
ともすれば、「自分の地方だけ(自分の身近なところだけ)変わっても、そんなの意味があるのか」という虚無やあきらめが生まれやすい。
しかし、このインタビューが示したものは、そうした一つひとつの積み重ねが、やはり国政を動かす小さな構成要素になるのだということだ。
*1:「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」