田村景子『希望の怪物』の書評が掲載されました

 日本社会文学会「社会文学」第58号に書評を掲載していただきました。

 田村景子『希望の怪物 現代サブカルと「生きづらさ」のイメージ』(笠間書院)についての書評です。

 本書は、『風の谷のナウシカ』『屍鬼』『魔法少女まどか☆マギカ』などの批評を通じて、1980年代からのこの40年間にサブカルチャーにあらわれた怪物表象を読み解いたものです。

などが取り上げられています。

 書評は3500字程度で、その冒頭を引用しておきます。

 いまぼくの中で切実な変革の課題は、日本が大きな転換点にある中で、既存体制の対抗勢力たる変革の運動、とりわけ左翼運動の前途に大きな危機感を抱いていることである。後継者がおらず、衰退し、消えていくのではないか? 長期的にそれが別の形でよみがえるにしても、その間の十数年(あるいは数十年)は国民にとって苦痛に満ちた時間になるのではないか?——理屈や理論での大きな見通しとは別に、脳裏にある切迫した感情としてのそのような絶望がぼくをとらえている。個別の組織のことが念頭にあるけども、現行憲法のもとで育まれた戦後民主主義運動そのものの先行きについての、昏い予感である。

 そうした気持ちで、今この田村景子『希望の怪物』を手に取る。他人事ではない、焦燥感をもって。本書が読み解いたはずの変革のための想像力は果たしてぼく自身にどう響き、どう届くのか、という切実さで本書に向き合ってみた。 

 この書評を脱稿したのは4月半ばだったので、ここに書かれていることは、その後、まさに自分の中で大きなものになっていきました。

 田村の本はさまざまなサブカルチャー作品を取り上げていますが、とりわけぼくは『新世紀エヴァンゲリオン』についての「怪物」論を取り上げました。

 その中で『風の谷のナウシカ』についても触れ、それが映画「君たちはどう生きるか」評と重なるものになりました。

 また『チェンソーマン』にも触れています。

 ぜひお読みください。

 なお、「社会文学」の同号を1冊だけなら譲ることができますので(本体は無料ですが、送料のみ受取人払いでお願いします)、本ブログのプロフィール欄にあるアドレスに住所・氏名を書いてメールを送ってください。(この募集は終了しました。)