転職しやすい社会

 もうだいぶ前の記事なんだけど、メモ的に。

朝日新聞デジタル:(雇用のあり方:3)大久保幸夫さん 自分生かす転職とは 40歳・60歳が転機 - ニュース 朝日新聞デジタル:(雇用のあり方:3)大久保幸夫さん 自分生かす転職とは 40歳・60歳が転機 - ニュース

 リクルートワークス研究所所長の大久保幸夫が朝日(2013年5月10日付)のインタビューで、述べていた次の部分。

――〔労働市場の――引用者注〕流動化のために「解雇規制の緩和」が必要という声もあります。
「ずれた議論だ。クビを切りやすくなれば、採用しやすくなるわけではない」

 アベノミクスで「解雇規制の緩和」が議論されているけども、労働市場の流動化をのぞんできた立場の人から見ても、そういうのはトンチンカンな議論だということ。
 大久保は日本の経済が構造転換の時代にきていて、実際に40代の3分の1くらいに転職志向があるのに、実際に転職する人が少ないのはなんでなのかという理由を3点あげている。要約すると、

  1. 転職先候補がわからん。
  2. 転職すると給料が下がる。
  3. 転職先の会社が合うかどうか不安。


 まあ、当たり前のことばっかりだけど、たとえば「転職先の会社が合うかどうか不安」という問題に対して、大久保が「元の会社にいながら休暇中に試験的に働き、良ければ転職するというのも一つのやり方」と述べているように、要はそこに具体的な手だてが必要だということだ。そういう具体的手だてじゃなくて、クビを切りやすくして追い出しやすくする、という「環境整備」がいかにズレているか。


 転職しやすくする社会に変えることは必要なことだと思う。
 左翼には、苦手なテーマっぽくなっているけど、きちんと向き合うべきだろう。
 転職がしにくいのは、中高年になると住宅費と教育費という費用がかさみ、そのために年功序列賃金の現在の企業を離れにくいという構造があるせいだ。正社員サラリーマンの2大不安はこれだと言われている。住宅ローンと教育ローンをかかえて、不安な飛翔ができるわけがない。
 その解決には、住宅費と教育費を社会保障に移転させてしまうことだ。公的住宅か住宅手当、そして教育費の無償化によって、年功序列賃金を不要なものにする。そうすることで、賃金がフラットになっても大丈夫にする。もちろんそのためには税収が必要なわけだから、まずは税制と制度をかえたうえで、自然に年功序列を解体させていくのがいい。先に年功序列を強制解体すると不安だけが先行する。


 労働と所得の切り離しもすすむ。だから個人にとっては選択肢のふえる、自由な社会に、より近づく。

 政治がやるべきなのはそういうことだ。