『明日、私は誰かのカノジョ』と『青にふれる』の主人公の母親

をのひなお『明日、私は誰かのカノジョ』が完結した。 本作はテレビドラマにもなったが、自分なりのコンプレックスを抱えている女性(あるいは男性)が登場し、パパ活、美容、ホスト狂い、スピリチュアルなどにハマりそれと格闘する、オムニバス形式の物語だ…

Central Japan Railwayと『テツぼん』

英語の勉強…というほどではないが、毎週水曜日の日経の夕刊に載る「Step up English」の経済記事をわりと楽しみに読む。経済ニュースってあまり読まないので英語を読みがてらその種の話題を知ることになり、「へえ、そんなことが流行ってんの」とか素直に感…

政治家としての大局観・歴史観

「読売」はウクライナ戦争について識者に意見を聞いているのだが、今日(2024年4月17日付)載っていた横手慎二のインタビューが面白かった。 www.yomiuri.co.jp 横手の本については以前感想を書いたことがある。 kamiyakenkyujo.hatenablog.com 横手のインタ…

伊藤整「組織と人間」

「組織のようなものにしばられたくない」と若い人たちがどんどん表明しだしたのは、大学での学生運動が下火になりつつあった1970年代後半以降だろう。1980年代は「政治の季節」が去って、個人主義・消費社会へ…と総括されることがあり、そういう単純な総括自…

志村貴子『おとなになっても』1-10巻

志村貴子『おとなになっても』が完結した。 おとなになっても(10) (Kissコミックス) 作者:志村貴子 講談社 Amazon 休職に追い込まれて家にいる間よく読んでいた。 たまたま飲みに入ったお店で知り合った平山朱里と大久保綾乃は一夜で恋に落ちてしま…

「不適切にもほどがある!」を観ての感想

ドラマ「不適切にもほどがある!」を娘が観ていて、家族で観るともなしに観ていた(最近このパターン多し。「光る君へ」もそうだ)。 www.youtube.com 昭和末期の体育教師・小川が令和にタイムスリップしてくるという設定のドラマで、初回を観た時、ぼくはバ…

石井遼介『心理的安全性のつくりかた』

リモート読書会の次のテキスト。ぼくはファシリテーターである。 心理的安全性のつくりかた 「心理的柔軟性」が困難を乗り越えるチームに変える 作者:石井遼介 日本能率協会マネジメントセンター Amazon ハラスメントは、それをやってしまったら人権侵害にな…

ハラスメントは組織の外で認定してもらうべきだ

ハラスメント問題の処理——認定や救済は、組織や団体の中で閉じ込めて、外に漏らしてはいけないだろうか? ハラスメントは日本では現在違法——犯罪扱いされていない。 しかし、ハラスメントの中でも例えば刑法に触れる性暴力に該当する場合は、さすがに組織内…

ハラスメント被害者を「厄介者」扱いする組織

しんぶん赤旗1月22日付 しんぶん赤旗1月22日付に「自衛隊セクハラ 深刻さ告発」「現役隊員の国賠訴訟」という記事が載った。 航空自衛隊那覇基地でベテラン隊員から受けたセクハラに対して組織が不利益防止措置などをとらなかったとして、昨年2月に国を相手…

山崎聡一郎『こども六法』

山崎聡一郎『こども六法』を娘と読んでいる。 夕食が終わり、こたつでぼくがゆったりとしていると、保育園のころに「絵本を読んでほしい」と言ってきたときのようなのと同じニュアンスで、高1の娘が本を持ってやってくるのだ。 別に「勉強しよう!」とかそ…

『ねじ式 紅い花 漫画アクション版 つげ義春カラー作品集』

奥付には「2024年2月24日」発行とある。 ねじ式 紅い花 漫画アクション版 つげ義春カラー作品集 作者:つげ 義春 双葉社 Amazon 本書は、1969年に刊行された「漫画アクション」誌に加え、「ゲンセンカン主人」(アクションコミックス)「ガロ増刊号・つげ義春…

鈴木透『食の実験場アメリカ』

リモート読書会で読んだ。 食の実験場アメリカ-ファーストフード帝国のゆくえ (中公新書 2540) 作者:鈴木 透 中央公論新社 Amazon サブタイトルが「ファーストフード帝国のゆくえ」なので、ははあ、アメリカ=ファストフード帝国批判なんだろうなと思って読…

ローズマリー・サリヴァン『スターリンの娘 「クレムリンの皇女」スヴェトラーナの生涯』

スターリンの娘、スヴェトラーナ・スターリナあるいはスヴェトラーナ・アリルーエワの生涯を知ったとき、その激しさと寂しさに、複雑な思いがこみ上げてくる。 スターリンの娘(上):「クレムリンの皇女」スヴェトラーナの生涯 作者:ローズマリー・サリヴァン …

ASEANは「反共の砦」だったか? 民青新聞を読んで

共産党を「相談相手」にしている民青(日本民主青年同盟)が出している新聞(機関紙)に「民青新聞」がある。その2024年2月12日号を興味深く読んだ。 というのは、「ASEAN(東南アジア諸国連合)は『反共の砦』として出発したのではなかった」という歴史観が…

『ニッポン政界語読本 単語編』『会話編』『公務員の議会答弁言いかえフレーズ』

政治家や役人が使う言葉の異常さ・奇妙さは、日々SNSで指摘され、ネタにされている。中には「ご飯論法」のように、公式の答弁としての基礎を破壊してしまうような重大性を抱えている言葉の使い方さえある。 本書はイアン・アーシーという、一見すると「ずい…

おづまりこ『ゆるりより道ひとり旅』

40代女性のコミックエッセイである。表題の通りだ。 本作では、京阪神の各所に出かけて食べ歩きをしている。 ゆるり より道ひとり旅 (文春e-book) 作者:おづまりこ 文藝春秋 Amazon この作者については、つれあいの方がよく知っていた。彼女がネットでよく見…

倉沢愛子『インドネシア大虐殺』

東南アジア関連の本を読んでいて、“インドネシアは一番民主的な国”という評価をみた。 ぼくの記憶の中に「インドネシアでは共産党員が200万人くらい虐殺されていたと思うけど…」という断片が浮かび上がる。 むろん、それは「昔」の話のはずだから、そのまま…

『サクッとわかるビジネス教養 東南アジア』

元旦の「しんぶん赤旗」を読んでいたら、志位和夫の東南アジア訪問についてのインタビューが載っていた。 www.jcp.or.jp 日本共産党は安全保障の枠組みとして、「地域協力」を押し出している。同党の綱領では、なかでも東南アジア諸国連合(ASEAN)を「とく…

水島みき・あやか『独身アラサーOLあやかのぼっち宿泊記』

昨日の記事を書いた後、粋なホテル・宿じゃなくて、ビジホに泊まるようなマンガはないだろうかと思って探したら、ちゃんとある。 独身アラサーOLあやかのぼっち宿泊記 (コミックエッセイ) 作者:水島 みき KADOKAWA Amazon ただしビジホといっても、本当に超…

マキヒロチ・まろ『おひとりさまホテル』

ホテルに泊まるのは好きだ。 別に旅先でなくてもいい。 家から近くにあるホテル(・旅館)であっても泊まりたい。まだそういうことをやったことはないけど。 我が家(マンション)の中に、快適に寝そべって、しかも独りで静かに(静謐に)いられる空間が、微…

人生最悪の年

今年は人生で最悪の年だった。仕事でも家庭でも。 もちろん、来年はそんなことがないようにしたいのだが、「『最悪だった』なんてのんきにブログに書けていた頃はよかったな〜」などという具合に「最悪」を更新することもないわけじゃない。 何をしていても…

『このマンガがすごい! 2024』でアンケート回答しました

『このマンガがすごい! 2024』の「オンナ編」選者としてアンケートで回答しました。 このマンガがすごい! 2024 宝島社 Amazon ぼくが選ぼうかどうか迷って結局選ばなかった作品の一つを挙げておくと『いつか死ぬなら絵を売ってから』。 これがオンナ編18位…

ストレイチー『ナイティンゲール伝』 茨木保『ナイチンゲール伝』

佐原実波『ガクサン』で予備校講師参考書の面白さが主人公の一人から語られる。 そこで世界史で「ざっくり歴史を要約してくれる」ような面白い講義があるのではないかと本屋でいろいろ立ち読みしてみると、『青木裕司 世界史B講義の実況中継3』が実にぼくの…

更科功『若い読者に贈る美しい生物学講義』

リモート読書会で更科功『若い読者に贈る美しい生物学講義』を読む。 若い読者に贈る美しい生物学講義――感動する生命のはなし 作者:更科 功 ダイヤモンド社 Amazon この本は、生物学に興味を持ってもらいたくて書いた本である。タイトルには「若い読者に」と…

テスト前のわが子にイラつく

高校生のわが子は、もうすぐ期末試験である。 1学期はちょっとがんばっていたが、2学期の中間は全然勉強せず、テストの結果も順位も落ちていた。物理学(「物理基礎」)の出来が悪かった。 「俺の高校時代とおんなじだなあ」と思った。 もうね。斜面に止ま…

大和田敢太「ハラスメント根絶のために」

日本共産党の理論誌「前衛」の2023年6月号、7月号、8月号で上中下にわたる大型論文が載った。 滋賀大学名誉教授である大和田敢太の「ハラスメント根絶のために——実効力ある包括的なハラスメント規制の原点」という論文である。 ぼくはハラスメントに苦しみ、…

米田優峻 『高校数学の基礎が150分でわかる本』

米田優峻 『高校数学の基礎が150分でわかる本』を読む。 【フルカラー図解】 高校数学の基礎が150分でわかる本 作者:米田 優峻 ダイヤモンド社 Amazon 表題通りか、ストップウォッチで計って読んでみたよ! その結果どうだったか? まあ、あわてるな。 まず…

出口治明『仕事に効く教養としての「世界史」』

世界史を学んだのは高校のとき。 それ以来、本を読んでつまみ食いのようにして学んできた。 たとえばポール・ケネディ『大国の興亡』、ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史』、『マクニール世界史講義』、グレゴリー・クラーク『10万年の世界経済史』の…

埜納タオ『保健師がきた』1

以前、全日本民主医療機関連合会(民医連)にかかわるところで、職員の方にお話をさせてもらったことがある。 そのときに、自分の講演をする前に、職員のみなさんのがグループごとに分かれて、いわゆる困難事例についてディスカッションをしているのを聞かせ…

『最新版 図解 知識ゼロからの現代農業入門』

日本の農業をどうしたらいいんだろうか。 福岡市でもちょうど高齢化した農家が世代交代の時期となり、田んぼがどんどん消えて宅地に変わっていっている。自分の近く、目の前でそうした現実を見せつけられる。素朴な素人感覚で申し訳ないが、そういう事態が進…