ハラスメントは組織の外で認定してもらうべきだ

 ハラスメント問題の処理——認定や救済は、組織や団体の中で閉じ込めて、外に漏らしてはいけないだろうか?

 ハラスメントは日本では現在違法——犯罪扱いされていない。

 しかし、ハラスメントの中でも例えば刑法に触れる性暴力に該当する場合は、さすがに組織内にとどめよ、と主張する向きはあるまい。レイプされても組織の外に出してはいけない、ということになったら、これはもういくら結社の自由でそういうルール(内部問題が外部に持ち出さない)を設けていますからといっても、そういうルール自体が「公序良俗」に反することは明らかだ。

 では、現行法に触れない程度のハラスメントはどうだろうか。

 例えばハラスメントについての国際条約を日本も批准して一刻も早くハラスメントを違法=犯罪として扱うべきだ、と主張している団体があるとすれば、そういう団体においては、当然ハラスメントは全て犯罪として扱うべきであろう。そのような組織においては、ハラスメントを受けても組織の中で問題をとどめておくべきだ、絶対に外に漏らしてはいけない、などとするはずはない。もしそんな主張をしたとしたら、その組織は深刻な自己矛盾に陥るだろう。

 ただ、そのような理屈を除いても、つまり、ハラスメントを犯罪・違法とするかしないかにかかわりなく、ハラスメントは、会社や団体から独立した機関によって、認定や救済が行われるべきである。つまり組織の外に持ち出すべきである

 

 日本共産党の次の提案は実に参考になる。

ハラスメントなくせ/倉林氏 禁止規定を要求

 倉林氏は、セクハラ被害の行政救済制度の活用状況(2017年)について、相談件数6808件に対し、調停はわずか34件、解決金の中央値は29・5万円だと指摘。「圧倒的な相談者が諦めているのが実態だ。現行制度は『被害者と事業者の譲り合い』が前提で、被害者にとって受け入れがたい。被害の認定、加害者からの謝罪、権利の回復ができる独立した救済機関を設置すべきだ」と主張しました。 倉林氏は、セクハラ被害の行政救済制度の活用状況(2017年)について、相談件数6808件に対し、調停はわずか34件、解決金の中央値は29・5万円だと指摘。「圧倒的な相談者が諦めているのが実態だ。現行制度は『被害者と事業者の譲り合い』が前提で、被害者にとって受け入れがたい。被害の認定、加害者からの謝罪、権利の回復ができる独立した救済機関を設置すべきだ」と主張しました。

 会社や団体で認定できないどころか、政府から独立していないために、認定や救済が全く進まないという実態が告発されている。

 組織内で解決ができるなどと到底期待できないことがわかる。

 日本共産党の提案は、ハラスメント認定などを行う独立機関を設置するよう要求しており、当然組織の外に持ち出すことを積極的に奨励している。そうしなければ問題が解決しないことをよく知っているのだ。

 ぼくの身近で、ある左翼の人が「ハラスメント解決は自己改革でこそ解決できる」とうそぶき、専門家を含めた独立した第三者機関の提案に対して「企業などはすぐそういう丸投げをやるんですよね」と悪罵を投げつけていたのを思い出す。そういう「左翼」人士には、ぜひこの日本共産党の提案をよく読んでほしいものである。

 

職場におけるハラスメントをなくすための実効ある法整備を求める申し入れ/日本共産党国会議員団 対策チーム

ハラスメントを受けた被害者がアクセスしやすく、行われた行為がハラスメントかどうかを迅速に調査・認定し、事後の適切な救済命令(行為の中止、被害者と加害者の接しない措置、被害者の雇用継続や原職復帰、加害者の謝罪と賠償など)を行う、政府から独立した行政委員会を設置することが必要である。

 

主張/ハラスメント防止/実効性ある法律にするべきだ

政府案は被害者救済と権利回復のための救済機関の設置にも一切触れておらず、顧客や取引先など第三者からのハラスメントも対象にしていません。…日本共産党提出の修正案は、(1)ハラスメント全般(第三者からの行為も含む)を禁止する規定(2)被害にあった労働者の申し立てを受け迅速に調査・救済する独立した第三者機関の設置―を求める内容です。

 

ハラスメント禁止“不十分”/高橋議員 法改定案に反対討論/衆院本会議可決

 日本共産党高橋千鶴子議員は反対討論で、改定案にはハラスメント行為を規定し法的に禁止する規制がないため、「『ハラスメントがあった』と認めてもらうこと自体が困難だ」と指摘。改定案で被害者が事業主に相談したことによる不利益取り扱いを禁止したことは当然だが、現状を大きく変えるものではないとして、「独立した救済機関が必要だ」と強調しました。 

ハラスメント禁止へ修正案 共産党提出/衆院厚労委 高橋議員、可決の政府案批判

多くの被害者が声を上げることができず、勇気を振り絞って相談しても事業主から適切な対応が取られず、加害者から謝罪さえ受けられず、心身に不調をきたし、休職・退職に追い込まれたりしています。ハラスメントを防止するためには、禁止規定を明確化し、独立した救済機関を創設することがどうしても必要です。

 

ハラスメント防止に実効性なし/女性活躍推進法等改定案 倉林議員が反対/参院委で可決

「被害者救済のための実効ある機関や企業への制裁措置がなく、多くの被害者が謝罪さえなく、心身に不調をきたし、退職・休職に追い込まれている」と述べ、独立した救済機関の設置を求めました。

 

共産党・吉良よし子参院議員の質疑

これ、就活生だけじゃなくて、あらゆるハラスメント被害者がそうだと思うんですけれども、安心して相談できる、そういう明確な機関、政府や企業から独立した救済機関、どうしたって必要だと思いますが、大臣、こうした独立した救済機関、すぐにでもつくるべきじゃないですか、いかがでしょう。(参院厚生労働委2019年5月16日)

 

 ハラスメント問題は、組織内に閉じ込めるべきではない。

 ハラスメントは本質的に違法であり、犯罪である。

 その可能性がある以上、組織の外に訴えて、独立した専門家に認定してもらうことがまずは必要だ。

 ましてや加害者が「ハラスメントではない」などと認定するなど論外中の論外である。ハラスメント対処のイロハさえ踏まえてないことになるだろう。

 ぼくはそういう対応をやった組織を身近に見たし、その組織にいる人でこれまで立派な人だなあと思っていた人たちが次々そんなずさんな対応によく考えもせず賛成し、賛辞を繰り広げていった知的退廃の有り様を見て、それらの人たちに心の底から失望したものである。

 

 

補足(2024.3.21 10:58)

 ブコメで「裁判でいいのでは?」という意見が散見されたので、共産党の質疑ではその辺りどう考えているのかを補足して書いておく。

共産党・本村伸子衆院議員の質疑

○本村 次に、現状の裁判の限界についてもお伺いをしたいというふうに思います。
 大臣にお伺いしたいんですけれども、セクシュアルハラスメントの被害を受けた方が裁判に訴えることはなかなかハードルがある、難しいというふうに言われている、当然そうなわけですけれども、大臣は、その理由は何だというふうに認識をされておりますでしょうか。

○根本国務大臣 セクハラ被害者が裁判を起こすことについては、幾つか心理的なハードルがあると考えております。原告としてみずからの名前が明らかになってしまう、会社にいづらくなり、やめざるを得なくなることもある、被害者に落ち度があった等の中傷を受ける、セクハラを受けたという明確な証拠を示すことが難しい、あるいは費用や時間がかかるなどの理由によって特に心理的なハードルがあると考えられると思っております。

○本村 裁判にかなりのハードルがある、被害を受けた方々にとって本当に高いハードルなんだということはお認めいただいたというふうに思います。だからこそ、私たちは、独立した行政の救済機関が必要だというふうに考えているんです。(衆議院 厚生労働委員会2019年4月17日)