村崎一等兵のセリフを読む

ここ数年続いていることは毎日の筋トレと、風呂場での大西巨人『神聖喜劇』の朗読である。 対馬での軍隊生活を描いた『神聖喜劇』の方は、もう何べんも読み返しているが、今は光文社版文庫本の第2巻、主人公の東堂が対馬には大きな軍隊が駐留しているのにな…

ヴィトルト・ピレツキ『アウシュヴィッツ潜入記』

まもなくアウシュヴィッツが解放された記念日(国際ホロコースト記念日)である1月27日である。 私はアウシュヴィッツで危険なゲームをやっていた。いや、この文章は現実を正しく伝えているとはいえない。実際、私の経験は世間の人々が考える危険をはるかに…

「鬼滅の刃」についてインタビューを受けました

「しんぶん赤旗」日曜版2021年1月17日号の「『鬼滅』旋風どう見る」という『鬼滅の刃』特集でコメントしました。インタビューをまとめてもらったものです。 鬼滅の刃 1 (ジャンプコミックスDIGITAL) 作者:吾峠呼世晴 発売日: 2016/06/17 メディア: Kindle版 …

基本的な事実を知らせる努力――共産党の政権参加について

田中信一郎(千葉商科大学基盤教育機構准教授)が共産党の政権参画についての課題を整理している。 webronza.asahi.com webronza.asahi.com 田中は、「同党の綱領等の基本文書を読み解き、政権参画の課題を分析する」としている。*1 これ自体はとてもまじめ…

『逃げるは恥だが役に立つ』11巻

『逃げる恥だが役に立つ』を新春のドラマでやっていて、観るともなしに観てしまった。 kamiyakenkyujo.hatenablog.com 当然原作マンガとドラマは違うわけであるが、原作で第二部的に始まった10巻と11巻においては、ドラマでは省かれてしまった雨山のエピソー…

イララモモイ「推しという免罪符」

バイト先の同世代男性(郡山くん)に、女性である主人公(新名栞)が恋愛感情とは言い切れないが、すっごいライトな性的な関心をもっていて、そのことをバイト先の女性たちとの間だけで会話する際に「推し」という言葉で表現しているという設定。 「推し」と…

スポーツの本質的暴力性とどうつきあうか

リモート読書会は、川谷茂樹『スポーツ倫理学講義』を取り上げた。 この本についてはすでに2005年に書評を書いている。 kamiyakenkyujo.hatenablog.com 例えば写真は、今年11月28日付の西日本新聞夕刊の記事であるが、柔道の1984年五輪における山下・ラシュ…

「ぼくは娘の保護者になれない」

「ぼくは娘の保護者になれない」というエッセイを日本コリア協会・福岡の「日本とコリア」誌第243号(2021年1月1日号)に寄稿しました。「これでいいのかニッポン!」というリレー連載のコーナーです。 夫婦同姓の強制によって、事実婚ではどのような不利が…

藤森毅「少人数学級の根拠の在り処」

福岡市の高島宗一郎市長が、11月末の時点で福岡市をGoToトラベル事業から対象除外すべきかどうかを問われて、その必要はないと答えた。その後そのことを議会で問われ、次のように答弁している(2020年12月10日)。 11月末時点において他都市で第3波と言われ…

『このマンガがすごい! 2021』のアンケートに答えました

『このマンガがすごい! 2021』のアンケートに答え、同誌にぼくの回答が掲載されています。 あと、中でいくつかコメントを採用していただきました。 今年はぼくが5番目にいいなと思っていたマンガ作品が、オンナ編の1位に入りました。 毎年感じて、そして…

萩本創八・森田蓮次『アスペル・カノジョ』8巻のワンシーンへの違和感

『アスペル・カノジョ』は、新聞配達のアルバイトをしながら、自分の好きなマンガを細々とウェブで発表して暮らしている男性(横井)のもとに、その作品を読んでどうしても会いたくなった女性(斎藤)がやってくる話である。 横井は人付き合いが苦手でおそら…

伊東順子『韓国 現地からの報告』

リモート読書会で伊東順子『韓国 現地からの報告──セウォル号事件から文在寅政権まで』(ちくま新書)を読んだ。 韓国 現地からの報告 (ちくま新書) 作者:伊東 順子 発売日: 2020/03/06 メディア: 新書 韓国に住んでいる著者が話題ごとに書いた短い文章の集…

横山旬『午後9時15分の演劇論』1巻

美大の夜間部学生が集まって、1本の演劇を仕上げる話である。 一度も舞台経験がない2年生の古謝タダオキが自分なりにカンペキと思うビジョンをもとにいきなり演出の役割を買って出るところから物語が始まる。 根拠のない自信で出発し、空回りし、周囲から…

日米同盟=核の傘の下での核兵器禁止条約参加は可能か

核兵器禁止条約が発効の見通しとなった。日本の世論調査でも、日本政府に批准を求める声は大きい。 www.asahi.com 14、15の両日に、朝日新聞社が実施した全国世論調査(電話)で核兵器禁止条約について尋ねると、日本が条約に「参加する方がよい」は59%で、…

結びつけられない

玉虫で装飾された馬具が福岡県内(古賀市)の古墳の出土品から確認されたという記事を読んだ。 www.nishinippon.co.jp 「玉虫装飾」という見出しに何の感興ももよおさずに、ぼーっとした頭で記事を読み始めた。「国内で玉虫装飾の馬具が確認されたのは初めて…

大きな枠組みに目を向けさせないようにする

なぜ「自分のできること」の範囲に限定するのか 娘(中1)が「環境新聞」というのを学校の宿題で作っていて、横から眺めていた。 温暖化について書いている。 「結論は自分ができることを書かないといけないんだ」と言って、ムダな電気を消すとかそういうこ…

救援新聞インタビュー「検察は、何故有罪に固執するのか」

国民救援会の機関紙「救援新聞」2020年11月5日号で、「検察は、何故有罪に固執するのか」として、検事の経験のある市川寛(弁護士)が、笹倉香奈(甲南大学法学部教授)のインタビューに答え、その一部が紹介されている。 大変興味深く読んだ。 わからない人…

坂井恵理『シジュウカラ』

『シジュウカラ』は、売れなくなった40歳の女性マンガ家(佐々木忍)がアシスタントに来た22歳の男性(橘千秋)に恋をしてしまうという物語である。 …と書くと「あー、ハイハイ」と言われてしまいそうだが。 シジュウカラ : 1 (ジュールコミックス) 作者:坂…

星乃治彦『赤いゲッベルス ミュンツェンベルクとその時代』

学生運動をしていた頃の友人に勧められて読む。 赤いゲッベルス ミュンツェンベルクとその時代 作者:星乃 治彦 発売日: 2009/12/18 メディア: 単行本 ヴィリー・ミュンツェンベルクの評伝である。 ミュンツェンベルクは、ナチス期のドイツでコミュニストの側…

ユニ『憎らしいほど愛してる』

上司と部下の恋愛を描いた「社会人百合」である、ユニ『憎らしいほど愛してる』は昨年買って読み、「ほうっ…」と堪能したわけだが『このマンガがすごい!』のベスト5にはあげずに「次点」ということでコメントで紹介するにとどまった。 憎らしいほど愛して…

石牟礼道子『苦海浄土』

リモート読書会は石牟礼道子『苦海浄土』だった。 新装版 苦海浄土 (講談社文庫) 作者:石牟礼 道子 発売日: 2004/07/15 メディア: 文庫 水俣病について書かれたということは有名な本だが、果たしてこれはノンフィクションなのか、小説なのか。石牟礼は「新し…

山田昌弘『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』

タイトルに惹かれて読んだ。 日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?~結婚・出産が回避される本当の原因~ (光文社新書) 作者:山田 昌弘 発売日: 2020/05/29 メディア: Kindle版 山田がいうには、 日本はスウェーデン、フランス、オランダの対策をモデルにし…

映画『82年生まれ、キム・ジヨン』

(映画のネタバレが少しあります) リモート読書会の題材となったので、石牟礼道子『苦海浄土』を初めて読んだ。恥ずかしながらそれまで一度も読んだことはなかったのである。 新装版 苦海浄土 (講談社文庫) 作者:石牟礼 道子 発売日: 2004/07/15 メディア: …

「障害」と「障がい」

福岡県自治体問題研究所のメルマガである「福岡みやしたメールじょうほう」を読んでいたら、出し抜けに「紙屋高雪氏が近著で議論しているように…」とぼくの名前が出てきたのでびっくりした。 これは同研究所事務局長の宮下和裕の一文の表現をめぐっておきた…

高山理図・高野聖『異世界薬局』

「現代の知識で過去にすごい活躍をする」という設定はゾクゾクする。 自分の原体験は小学校の登下校中に友だちと『ドラえもん』の「ホラふきご先祖」で笑い合ったからに違いない。 この設定を作品としてちゃんと読んだ最初は、横山光輝『時の行者』である。 …

藤野裕子『民衆暴力』

藤野裕子『民衆暴力 一揆・暴動・虐殺の日本近代』(中公新書)についての感想です。

「スペリオール」2020年10月23日号をぼーっと読む

「ビッグコミックスペリオール」2020年10月23日号を読む。 ビッグコミックスペリオール 2020年21号(2020年10月9日発売) [雑誌] 作者:ビッグコミックスペリオール編集部,太田垣康男,矢立肇,富野由悠季,奥浩哉,津村マミ,久部緑郎,河合単,石神秀幸,乃木坂太郎…

「文化はぜいたく品」という気持ち

日本コリア協会・福岡の「日本とコリア」240号(10月1日号)に、「これでいいのかニッポン!」というコーナーがあり、「『文化はぜいたく品』という気持ち」という一文を寄稿しました。まあ、エッセイです。 コロナで文化芸術に支援することは「ぜいたく」…

シーナ・アイエンガー『選択の科学』

今度のリモート読書会で取り上げたのは、シーナ・アイエンガー『選択の科学』(文春文庫、櫻井祐子訳)である。 選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義 (文春文庫) 作者:シーナ アイエンガー 発売日: 2014/07/10 メディア: 文庫 アイエンガーの…

『こわい顔じゃ伝わらないわよ』『二月の勝者』

「勉強が全然楽しくない」と泣く 田舎の中学校とはいえ、自分が「優等生」であったものだから、自分の物差しで子どもを測ってしまう。定期考査で平均点とか取ってくると、正直がっかりする。しかも全教科そんな具合だからなおさらがっかりする。点数亡者めと…