『西村賢太対話集』

「長い休み」はまだ終わらない。いつ終わるともしれない。なんの見通しもなく、いつ終わるのか聞いてもその返事さえない。 kamiyakenkyujo.hatenablog.com なんのための時間なのかさえ、具体的に示されない。 治療と投薬へ追い込まれ、ぼくの精神が蝕まれて…

瀧波ユカリ『わたしたちは無痛恋愛がしたい』4

瀧波ユカリ『わたしたちは無痛恋愛がしたい』はサブタイトルが「鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん」であるように、鍵垢で自分のホンネをつぶやく女性の主人公(鍵垢女子)、その主人公を都合のいいときにヤレる相手としてのみ見て、見栄えや体裁だけを気…

磯前順一『石母田正 暗黒のなかで眼をみひらき』

石母田正を知らない人のために、言っておけば、有名なマルクス主義歴史学者である。 石母田正:暗黒のなかで眼をみひらき (ミネルヴァ日本評伝選) 作者:磯前順一 ミネルヴァ書房 Amazon 以前に小熊英二の本の感想の中で彼について触れたことがある。 kamiyak…

首都圏青年ユニオン「ニュースレター」2023年9月号の感想

首都圏青年ユニオンのニュースレター2023年9月号の(vol.271)の感想です。 いつも面白く読んでいることは、このブログでもたびたび書いてきましたが、 皆さんのニュースレターへの感想やご意見をお待ちしています と終わりのページに書いてあったのに気づき…

松井暁『ここにある社会主義:今日から始めるコミュニズム入門』

社会主義は遠い将来の話なのか 左翼の集まりで社会主義や共産主義の話をすると「自分たちが死んだ後の遠い将来のこと」という目をされる。 日本共産党は最近の綱領改定で、高度な生産力、経済の社会的規制・管理のしくみ、国民の生活と権利を守るルールなど…

Fukuoka Higashi? それとも Fukuoka East?

前から小さく気になっていたことであるが、例えば「樋井川」という河川を英語で表現するさいには「Hii-River」なのか「Hiigawa-River」なのか。 当然「Hii-River」だろうと思っていたが、標示板を見るとそうでもない。 ぼくが日常的に見て気になっていたのは…

ジェイソン・ヒッケル『資本主義の次に来る世界』

タイトルに惹かれて手にしたのが本書である。原題は「LESS IS MORE(少ない方が豊か)」だから粋だとは思うけど、それではぼくのようなコミュニストは手に取らなかっただろうな。 資本主義の次に来る世界 作者:ジェイソン・ヒッケル 東洋経済新報社 Amazon …

『ブハーリン裁判』『共産主義とは何か』

『夫ブハーリンの想い出』のブログ記事のところで述べたことを、もう少し詳しく書いておきたい。 無実の罪によって銃殺されるブハーリンは、さぞや自分の裁判で、自分は冤罪であることを力説しているであろう、と思って、その裁判記録である『ブハーリン裁判…

花輪和一『刑務所の中』

リモート読書会で花輪和一『刑務所の中』を読む。 刑務所の中 作者:花輪和一 講談社 Amazon ぼくがファシリテーターを務めたので、最初に報告した一文を紹介しておく。 なお、ぼくは花輪についてほとんど詳しくはない。なので、最初は、花輪について書かれた…

桜田『桜田の××ルポ』

以下は、性的な内容が含まれる記事なのであらかじめ注意して読んでください。 下記のエントリを読んで思ったことを書く。 note.com セックスをしたとき、一方が他方をイカせられず、そのことを気に病む。そうした問題が生じたとき、パートナーが、もしくは第…

「神社のお祭りはいつまで町内会に運営を押し付けられるか」

「季刊 宗教問題」の2023年秋季号に、拙文「神社のお祭りはいつまで町内会に運営を押し付けられるか」を掲載していただいた。 宗教問題43:崩れゆく「伝統」と「共同体」 合同会社宗教問題 Amazon 同号には山下祐介、木下斉、古川琢也、平沢勝栄などがイン…

アンナ・ラーリナ『夫ブハーリンの想い出』

長い休みの間、不破哲三『スターリン秘史』を読み直し、スターリンの大テロルについて関連の本をあれこれ読んでいる。 不破の本の中で紹介されているのが、本書である。 ぼくは身近にいる、ある左翼活動家の女性に「ブハーリンって知ってますか?」と聞いた…

カール・ローズ『WOKE CAPITALISM 「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす』

本書のメインタイトルであるWoke Capitalismは、簡単に言えば環境保護、人権、ジェンダー平等、人種差別反対などといった社会問題を解決したり、対処したりする「Woke」(目覚めた)な資本主義・企業活動を指す。サブタイトルではそれを「『意識高い系』資本…

堀和恵『評伝 伊藤野枝 〜あらしのように生きて〜』

今年は伊藤野枝が官憲に虐殺されて100年である。そのメモリアルのイベントも福岡市で行われる。 9月15(金)&16(土)「伊藤野枝100年フェスティバル」のチケットは3種類。・2日間通し券(前売¥3,000)・16日午後券(講談、講演、座談会=前売¥2,000、当…

板倉梓『瓜を破る』

ぼくのツイッターのタイムラインにはマンガの広告があふれていて、けっこうクリックしてしまう。 『瓜を破る』はその一つである。Amazonの「おすすめ」にも上がってくるのだが、そのときは手に取る気にならなかった。やはりコマを強制的に読ませるというのが…

「ごん狐」におけるごんの行動や気持ちがなぜ地域に伝わっているのか

新美南吉はぼくの生まれた愛知県の出身である。「ごん狐」があまりにも有名だ。 ごんぎつね (日本の童話名作選) 作者:南吉, 新美 偕成社 Amazon さて、そんな「ごん狐」について、昨日(2023年8月21日)付の「しんぶん赤旗」で、教育実践の報告記事があった…

日米韓首脳会議の合意文書の中に解決の答えがある

日本共産党の志位和夫委員長の談話が、産経新聞の記事で切り取られて紹介され、ネットの一部で叩かれている。 b.hatena.ne.jp 志位談話の全文は次のリンクを見てほしい。 www.jcp.or.jp 軍事ブロック強化、核威嚇、先制攻撃への組込みは正しくない 中国が台…

英語で非英米系の名前をどう読む? 「2000年」は? 「2分の1」は?

英語の時事記事を声に出して読むときに苦労することが3つある。 (1)非英米系の名前・地名はどうやって発音したらいいの? ふだんから英語の動画ニュースやテレビニュースなどを聴いている人はバッチリなんだろうけど、文字の記事しか読んでいないぼくの…

田村景子『希望の怪物』の書評が掲載されました

日本社会文学会「社会文学」第58号に書評を掲載していただきました。 田村景子『希望の怪物 現代サブカルと「生きづらさ」のイメージ』(笠間書院)についての書評です。 希望の怪物: 現代サブカルと「生きづらさ」のイメージ 作者:田村景子 笠間書院 Amazon…

双龍『こういうのがいい』

双龍『こういうのがいい』は、形式に拘泥したり、強い束縛をかけてくる彼氏・彼女とのつきあいにうんざりした江口友香(えぐち・ともか)と村田元気(むらた・もとき)がゲームのオフライン飲み会をきっかけにセックスをし、それをきっかけに独特のゆるいつ…

Zip Zap Zopってなんだ?

今日付の「しんぶん赤旗」を読んでいたら、アメリカの俳優・脚本家組合がストライキをしている記事があった。 それに添えられている写真(記事は赤旗編集部のもので、おそらくこの写真だけロイター配信)で、参加者が「I bet Bob Iger doesn’t even know how…

松本清張『或る「小倉日記」伝 傑作短編集〔一〕』

リモート読書会は松本清張『或る「小倉日記」伝 傑作短編集〔一〕』である。「或る『小倉日記』伝」だけではなく、それに収められた短編全体を読むことになった。 或る「小倉日記」伝 傑作短編集1 (新潮文庫) 作者:清張, 松本 新潮社 Amazon 恥ずかしながら…

映画「君たちはどう生きるか」の冒頭シーンは空襲か

宮崎駿監督「君たちはどう生きるか」の冒頭シーンについて、ほとんどの論評や感想はあれを空襲として捉えているのだが、一部に「空襲ではない」という意見がある。ぼくの感想に対してもそのようなコメントをしている人がいる。 ぼくは現時点で確言できるよう…

映画「君たちはどう生きるか」を評価する

2回見た。1回目は一人で。2回目は家族で。 これは間違いなく、宮崎駿の最後の作品であろう。と予感した。 「まーた、これで最後最後詐欺だろ」という声も聞こえてきて、実際にそうかもしれないけど、そこが問題なのではない。 現在82歳となった宮崎駿。彼…

なるほどですね

本当にしょうもない雑談・雑感だが。 福岡に来て17年が過ぎた。実家の愛知(三河地方)に大学に入るまでの18年いたから、いよいよ自分が人生で一番長く時間を過ごした土地ということになりそうである。 昨日このようなツイートを見た。 そういや、クライアン…

(一部訂正)石井拓児「子育て・若者支援と高学費・奨学金を変える」

(日本共産党の政策について今年6月に発表された政策を加え、訂正しました。ご指摘ありがとうございます) 「前衛」2023年8月号の特集「『異次元の少子化対策』を問う」、石井拓児(名古屋大学教授)インタビュー「子育て・若者支援と高学費・奨学金を変える…

娘からもらった『私たちが拓く日本の未来』を読む

高校生になった娘からいきなり総務省・文部科学省発行の『私たちが拓く日本の未来 有権者として求められる力を身に付けるために』という副教材をもらった。教師から「親に渡すように言われた」というのである。 https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/new…

高校のPTAの加入の2条件を提示して交渉した結果はどうだったか

(この記事は、はてなブログ×codoc連携サービスのプロモーションのため、はてなからの依頼を受けて投稿しています。) 娘が公立高校に入学し、そこにあるPTAの総会で、ぼくは発言し、2つの条件を示して、もしそれに応じてくれるのであれば参加しますよ、と…

地方や民間の取り組みは国の政治を変える上でどんな役割を果たすのか

地方議会、地方自治体、あるいは民間の一つひとつの取り組みは、国の政治を変える上で、どんな役割を果たすのか。 そんなことを考える上で、同性婚をめぐる判決について、6月14日付「しんぶん赤旗」に掲載された鈴木賢・明治大学法学部教授インタビューは興…

及川琢英『関東軍——満洲支配への独走と崩壊』

そうだなあ、高校の教科書程度しか知識のない人間=ぼくが読んだのだが、読みやすいとはなかなか言えない本であった。 関東軍――満洲支配への独走と崩壊 (中公新書 2754) 作者:及川 琢英 中央公論新社 Amazon その原因は、人名や役職名、組織名などが多く、そ…