谷口ジローが亡くなった。
特に感慨はない、と思っていたが、自分がこの14年間のブログ人生(?)で書いたものを振り返って、結構とりあげていることに気づいた。
『孤独のグルメ』
ぼくの本(『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』)の中でも紹介させてもらった『孤独のグルメ』は、今でもなんども読む。
「関係を食べている」と指摘した関川夏央の反『美味しんぼ』レビューを紹介しながら、『孤独のグルメ』こそアンチグルメであると書いた、ぼくの『孤独のグルメ』評。
本を読みながら食事をするという「悪風」は、娘に文化的に遺伝してしまった。
『犬を飼う』
動物を飼うことについてほとんど思い入れのないぼくであるが、飼っていた動物が死ぬということの人の心に与える影響についてあれこれ考えるきっかけになった。そのことを須藤真澄の作品の比較で書いた。
谷口ジロー『犬を飼う』 須藤真澄『長い長いさんぽ』(紙屋研究所)
「狼王ロボ」
「動物との知恵比べ」というジャンルの面白さとして書いたのが、「狼王ロボ」評である。
谷口ジロー『シートン』第1章「狼王ロボ」
http://www1.odn.ne.jp/kamiya-ta/seton.html
『センセイの鞄』ほか
谷口が取り上げる、恋情や感傷のような感情には、どこか古臭い感じがあって、それがぼくの心に実によく引っかかった。
川上弘美・谷口ジロー『センセイの鞄』 - 紙屋研究所
内海隆一郎・谷口ジロー『欅の木』 - 紙屋研究所
谷口ジロー『ふらり。』 村上もとか『JIN-仁-』 - 紙屋研究所
【遥かな町へ】谷口ジロー
http://www1.odn.ne.jp/kamiya-ta/kansougun.html#anchor19
いや…取り上げすぎだろ。
相当好きだったんだな、と自分にびっくりした。
こうして眺め直して見て、そこに『「坊っちゃん」の時代』がないことに気づく。ぼくにとって谷口は、圧倒的に「自然を描く人」であったのだ。「自然と人間(個人)」という近代の構図をこれほどまでに描き出す人は、今度もなかなか現れまい。