辻井タカヒロ『持ってたところで何になる?』

 なんでそんなものを捨てずに持っておくねん、というものを持ってしまっていることがある。

 ぼくの場合、棚を組み立てるネジとかがそうだ。

 いやもう明らかにその棚ないでしょ、というやつのネジも捨てずにとっておいてしまっている。どの棚のネジかわからないので、「あっ、これ、やっぱりこの棚のネジやん!」っていう日が来るかもしれないと思うからである。しかしそんな日は永遠にこない。絶対に来ないのである。

 だが…1回くらいそういうことがある。ネジではないが、保管しておいてよかった! みたいな場合。あるいは逆に、「ううっ、最近捨てちゃったよ。あ〜あれとっておけばよかった…!」。マーフィーの法則

 そんなこんなで捨てられない馬鹿なものが多い。

 

 つれあいの場合は福袋を買った時に入っているしょうもない帽子とか服である。

 その色、どこで着るの? みたいなのとか、そのスカート、完全に樹脂の筒やろwwみたいなのがある。

 捨てるほかないのだが、「我慢して5回身につけたら捨てる」みたいな誓いを立ててしまっているので、そんな危険なものを身につけて外に出るわけにもいかず、いつまでも捨てられないのである。

 

 そんな「ワケあり」で捨てられないものが家にはあるはずだ。

 本作品は、京都の革新系地方メディアの「京都民報」に連載されたエッセイコミックである。

 本作でも「捨てられないネジ(と釘)」の話は第8話に出てくる。

 

 

 

 家族構成が夫・妻・娘で我が家によく似ている。

 こんなしょうもないものをずっと持ち続けています、というエッセイなんだけど、「こんなしょうもないもの」に驚くというほどの「しょうもなさ」の極限というわけでもない。むしろ「なんで俺、これ読んで笑ってんだろ」と不思議に思うのだが、オチで娘や妻が夫にやるしつこいツッコミについつい笑ってしまっていることに気づく。

 クリアファイルをためてしまって捨てられないという回では、夫がこんなにたくさんもらいもんのクリアファイルを持っているというのに、娘がクリアファイルを買うからお金をくれなどと不届き千万なことを言い出すあたりから話が始まっている。

 そら、俺がこの夫でも自分の持っているクリアファイル——キャンペーンのために絵や写真やスローガンが大書してある——でええやんって勧めるわとしみじみ思うのだが、使う方は迷惑な話でそんな絵やら文字やらがごちゃごちゃ書いてあるものは困るのである。困るから拒否するのだが、夫氏はしつこい。しつこいのにしつこく断る様につられて笑ってしまう。

 そして恐ろしいことに、ぼくもクリアファイルが捨てられない。

 めちゃくちゃたまっている。

 どうかすると同じファイルを5年くらい使っている。テープで補修したりして。

 そんな感じだから、消費されずにたまる一方だ。

 そしてやはり娘に押しつけるのだが、娘は「無地がいいんだけど」と言って受け取らないのである! デジャヴ。