西餅『僕はまだ野球を知らない』4

 勝敗の明暗を残酷な形で示すスポーツというものは、どうしても「格下」と相手を見る意識が生まれるものなんだろう。

 

僕はまだ野球を知らない(4) (モーニング KC)

僕はまだ野球を知らない(4) (モーニング KC)

 

 

 データにもとづく徹底した科学的な分析で高校野球ジャイアント・キリングを起こそうとする西餅の『僕はまだ野球を知らない』は第4巻で強豪チームの露骨な差別意識が描かれている。

 

「ま 何にせよ せこい変則P(ピッチャー)には変わりない

 格下相手にこんなしょぼい点差で終わったら俺らBチーム

 監督にアピールできねえよなー

 あの四番手 あいつがたぶんエースなんだろ

 あいつボコって一気に突き放そうぜ」

 

「こういうピッチャーって

 ほんと意味わかんね

 能力ないのに なんで投手にしがみつくんだろう」

 

 

 中学時代に軟式テニスの前衛をやっていて3年生最後の試合で、よその中学と対戦した時、ぼくが穴だとすぐ見抜かれ、どんどん横を抜かれて、あっさり負けた。「はっ、こいつが穴じゃん」と思われたわけである。

 いや全くその通りなんだよ。

 そしてそれがスポーツなんだよ。

 弱点を徹底して攻める。残酷なまでに。

 それで勝敗を決めるというのがまさにスポーツなわけだ。

 

 でも本当にムカつく。

 どうしたらいいんだかわからない。

 圧倒的な差があってその間を埋められない。そのために何もできない。

 そしてスポーツにおいて能力がある人間は、どうやらそうでない人間を「格下」に見ていいようなことになっている(面と向かって言ってはいけないとしても)。

 つまりスポーツの場面では、ただ自分は「格下」であり続けるしかない。

 その圧倒的な差の壁の前で絶望するしかないのである。

 

 その壁を少しずつでも崩していこう、一矢報いようではないか、というのがこのマンガの面白さだとみた。データとそれに基づく科学で説得的にそれをやろうというのである。