今年度の中学英語が大変になっている可能性はないのか

 中2の娘の定期テストの結果を見る。

 英語の最下位クラス(0〜29点/100点満点)にかなりの人数がたまっている。他の教科と比べても段違いだ。1学期・2学期・3学期とこの傾向は変わらない。

 グラフにしてみた。

 

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 この学校だけ、英語の授業が悪いのだろうか?

 そういう可能性もある。

 しかし、今年から中学校の英語が変わった、と前に記事で書いた。

kamiyakenkyujo.hatenablog.com

 そのエントリで紹介した、日経新聞2021年9月28日付の「受験考」欄記事「ついていけず悩む生徒」を一部引用する。

 学校の授業の流れはまず英語の歌を歌い、英単語ビンゴをする。そしてチャット(2人1組で決まったフレーズを言い合うが、細かな発音指導などはしない)。さらに教科書本文の音声を聞き、簡単な和訳を教師が言う。これで授業終了。
 教科書本文はおろか受動態や現在完了形といった文法の丁寧な解説はない。しかも授業自体が英語で行われるので、A子はついていけなくなった。

 昨年の10月22日付「しんぶん赤旗」でもそのように書かれていた。

blog.goo.ne.jp

 

 

 娘に話を聞いてみると、娘が受けている授業は決して「英語で全部話している」わけではなく、日本人の先生がふつうに日本語で話しかけてくる授業だということである。娘は英語の授業に不満があるのだが、その不満の中身を聞くと、「文法だけ教えるみたいな…」と、赤旗や日経の記事とは逆のことを述べている。

 テスト結果に保護者が何か書いて担任に返す通信があるのだが、そこで「どうして学年全体でこんなに英語の出来が悪くなってしまっているんですか」と疑問を書いたのだが、担任から返事はなかった。

 

 このことについて、共産党の福岡市議である山口湧人議員が3月10日の福岡市議会(条例予算特別委員会の教育こども分科会)で質問していた。

 

山口(湧) 中学校の英語教育について、複数の保護者からほかの教科と比べて英語の成績が悪いという相談を受けた。学習指導要領が改訂されたことに伴い、令和3年度から英語の授業内容はどのように変更されたのか。

教育委員会 聞くこと、読むことは、話すこと、書くこと、言語活動を通して簡単な情報や考え方を理解し、表現し、コミュニケーションを図ることを目標とし、特にコミュニケーションを行う目的、場面、状況などに応じて日常的な話題、社会的な課題について考えたり、理解したりすることなどに重点を置いている。

 コミュニケーション重視になった→文法などが軽んじられているのでは?

 というような疑念が湧いたがどうであろうか。

山口(湧) 令和2年度から小学校5、6年生は英語が必修科目となり、単語を600〜700語学び、中学校では1600〜1800語学ぶこととなった。中学校で学ぶ単語は従来よりも大幅に増えており、また、文法についても増えているため、中学校の英語教育は難易度が高くなったと思うがどうか。

教育委員会 学習内容は大きく変わっていないが、学習する単語及び文法が増えていることは事実である。

 ここでの教育委員会の認識は、日経のそれとは違う。赤旗の指摘とは重なっている。

山口(湧) コミュニケーション能力を重視する学習内容に変わったことにより、文法の基礎を学ぶ機会が減っているが、定期テストでは文法や単語の問題が出題されるため、矛盾していると言われている。そのような状況についてどのように認識しているのか。

教育委員会 指導と評価は一体のものである必要があり、学習指導要領改訂後のテスト結果を踏まえ検証していきたい。

 ここでは、山口議員が「コミュニケーション重視と、出されているテストが文法重視で、矛盾してない?」という趣旨の質問をしていて、教委側は「一体の必要性があるのでよくみていきたい」と返している。

 しかし、そもそも、英語の成績が全体としてガタ落ちしているというのが、自治体全体に広がっているのではないか、という認識については教委は特に示していない。

山口(湧) 学習指導要領が改訂されたことに伴い、学習内容が増えたことで、教員と生徒の負担が重くなっていると思うが、所見を尋ねる。特に、小学校から中学校に入る移行期がコロナによる一斉休校と重なり、教える量が極端に増えたと思うがどうか。

教育委員会 学習指導要領に示された学習内容はしっかりと教える必要があるが、資料等の活用や様々な指導方法を共有することで教員の負担を軽くするとともに、子どもたちにとって分かりやすい学習となるよう取り組んでいきたい。

 ここでは、教委は「指導要領に示された分はしっかり教えろよ」という姿勢を崩していない。必要量は子どもに教えるというのだ。その上で「分かりやすく」と言っているに過ぎない。

山口(湧) 令和4年度は各学校の状況を把握しながら、基礎学習を重点的に繰り返すことを助言していくことが重要であると思うが、所見を問う。

教育委員会 英語や数学など積み重ねが重要となる教科については、つまずきによって子どもの学力に影響があるため、学校と連携しながら実態の把握に努め、対応していきたい。

山口(湧) 子どもたちの実態を把握した上で、授業内容を精選し、また、基礎学習の徹底に時間を割くよう各学校に助言されたい。

 結局、教育委員会としては現状の認識は「検証する」というところにとどまり、英語が特段悪くなっているという認識を示していない。

 

 結構重大なことだと思う。なぜなら、事前に「これは悪くなるぞ」という予想が出ていて、それを裏づけるかのような結果が出ているからである。

 しかし、あくまでそれは「1つの学校のデータ」に過ぎない。

 また、個別の取材(娘)では懸念されていたことが現実の授業では起きていないようにも考えられる。

 うーん、これが全市・全国のトレンドかどうかもわからないので、何かそれを検証するデータがあればいいんだが…。誰か取材してくれないだろうか。(人任せ)