『このマンガがすごい! 2022』(宝島社)で今年も「総勢43名 各界のマンガ好きが選ぶ このマンガがすごい! オンナ編」に回答させていただいた。
今回はぼくが選んだものは1つも20位に入らなかったなあ。
前にも書いたが、ランクインしない作品を選んだ場合、「人が紹介しないマイナーなものを世の中に紹介できてよかった」という満足感と、「まったく世の中の感覚からズレてしまったのでは」という不安が交錯する。この二つの感情は解決しようのない矛盾ですが、必要な矛盾なので仕方がない。
ぼくはオンナ編の選者でしたが、オトコ編の18位にランクインした、をのひなお『明日、私は誰かのカノジョ』はいい作品だ。
いや、1巻からいい作品だとは思っていたが、連載3年目にしてランクイン。
『このマンガがすごい! 2022』ではその原因をこう分析している(奈良崎コロスケ)。
連載3年目にして初のランクインだが、その要因は第4章の爆発的な盛り上がりにある。自分の容姿に自信のない女子大生・萌がホス狂の風俗嬢・ゆあてゃと出会ったことから、あっという間に歌舞伎〔町?〕の沼にズブズブと沈んでいく様が描かれるのだが、綿密な取材にもとづく圧巻のスケールと刺激的な展開で、更新のある金曜毎にSNSが感想合戦となるお祭り騒ぎが繰り広げられたのだ。(p.57)
いやー、ツイッターはやってるが、そうなっていたとは知らんかったっす。
そして、確かに4章の強い誘引力があって、ぼくもグイグイ引き込まれていったんが、世の中でもそういう形で確認されていたのか…と思った。
ぼくとしては、その前のエピソードに出てくる、「彼女代行」の客、桧山の描かれ方が、なんと言うか、中年男としてのダメさ・いやらしさを満載していて、なんだか自分を露悪的に魅せられているようないたたまれなさがあって、クセになる。
例えば最初に登場する、太った男・「正之」は全然感情移入しない。
しかし、次に出てくる客で、気弱な細身の男・「辻壮太」はすごく自分みがあった。
客としてお金を払いながら、恋愛感情を募らせ、女性の境遇に心底「同情」していくという感覚、およそ人ごとではない。読みながら、「この壮太の行動、なんか問題なんスか」と開き直っている自分がいる。
そして桧山である。
中年男のせいなのかどうかは知らないが、桧山のビジュアルで鼻の下の溝の線(人中)を作者が描いているのが、このキャラへの作者の扱いなのだと感じる。同じ中年でも、レンタル彼女を利用している富裕層の中年(飯田)にはこの人中を付けないからだ。さあ、この男のチープないやらしさを描き尽くしてやろうという作者の意気込みすら感じる。そしてそれは覿面である。
「自分は結構イケてるのではないか?」という自負がありながら、実は安っぽくてみっともないというあたりが、もういけない。「ゴフッ……」と血を吐くレベル。