「ビッグコミックスペリオール」2020年10月23日号を読む。
ぼーっと。
一応全部読む。
が、個人的にいま食いつきが一番あるのは、久部緑郎・河合単「らーめん再遊記」である。ラーメン経営を極めた芹沢が「お忍び」で他の小さなラーメン店のバイトに入るという設定。
らーめん再遊記
今号は、味のダメな創作ラーメンを芹沢が食わされるのと、味としては結構いけるけど、経営的にそんなことをやっていていいのかということを内心で辛辣に芹沢が批評する回である。
後者の、「中小経営者とかスタートアップにありがちな身内のお世辞と内輪ウケ」に対して芹沢が吐く毒舌がとりわけ痺れる。
「実はすごい人がお忍びで現場に潜り込んでいる」というのは、「水戸黄門」以来のパターンなのかもしれないけど、「水戸黄門」はあまりにもパターン化してしまったし、「水戸黄門」なら水戸光圀がそこで口にすることもありきたりの、通俗道徳であって、光圀が
この女も何をヘラヘラ笑っている!?
お前の恋人の店は、このままだと潰れるんだぞ!?
とか生々しい批判をするわけでもない。
かといって、「ぶっこみジャパニーズ」みたいな、予定調和かつ「日本文化スゲエ」(異文化ディス)的浅薄さも辟易する。
「らーめん再遊記」における芹沢はそうではない。
芹沢のディスを聞きたい。
今号のような鋭い悪意をまさに読みたかったし、今後もぜひ読みたいのである。
ボクらはみんな生きてゆく!
アキヤマヒデキ「ボクらはみんな生きてゆく!」も率先して読む。
化学物質過敏症のパートナーとの生活を描いた『かびんのつま』は、正直引いたのだが、しかし、本人の主観で世界を構成するとここまで世界は汚染された凄まじい・生きにくいものなのかと、ある種の好奇心で読んでいた。
「ボクらはみんな生きてゆく!」は、主人公が田舎での生活を始める話だが、今農作物を荒らすシカを駆除するために、免許を取得しようとしている。
シカを撲殺しようとするがなかなか一撃で殺せずに、何度も何度も叩いてやっと死なせるという、まことにむごい様が描かれている。急所を知らない上に、非力なのである。自然に対して技術的な意味でダメさが、なんだかぼくによく似ていて他人事ではないと思った。
今回は箱罠にかかったシカを刺殺するシーン。シロウト的な目線がとてもいい。
山で暮らす男
60歳の新人という。ヤングスペリオール新人賞。
絵柄は花輪和一を粗くしたような感じ。
面白くはあったが、これ1作だけではなんとも言えない。もう少しこの人の作品を読んでみたい。
大人の青春くん
キレイな女性より、「ムチムチした巨乳の色白… 顔ジミ目のコに… ドキドキした… なんかエロいなぁ…」と内語したのち、「オレのシュミも変わったなあ…」としみじみ酒を飲む年配男性。
即座に「ワンチャンあると思っただけでしょ。」とツッコむ女性。
「なんかエロいなぁ…」っていうのが、自分は単純なものにはもう飽きてしまったんだ、目が肥えて常人ではわからない萌えや審美が自分に育っちゃってるんだ的な全ての「オタク的な造形の深さ」を暗示しているようであり、それを「ワンチャンあると思っただけでしょ。」というジェンダー的なイデオロギー暴露で全部ひっくり返してしまう「身もふたもなさ」が好き。
なんか俺自身がすっごく傷ついた。