行く先で街の小さな本屋があると何か買おうとしてしまう。
そうやって買った1冊である。
「法医学者だけが知っている高齢者の『意外な死因』」はサブタイトルっぽいが奥付けには書かれていない。Amazonではタイトルとして扱われているが、三笠書房のサイトに行くとタイトルに書かれていないので、カバーのアオリであろう。よくわからない。
しかしまあ、そういう内容なのである。
本書では、5000体以上を検死・解剖してきた「死因のプロ」が49の事故例を紹介し、なぜ死に至ってしまうのか、どうしたらそのような危険を回避できるか、を解き明かしていきます。
という出版社のサイトの説明が言い尽くしている。
パンで死ぬ/トイレできばって死ぬ/エアコンで死ぬ/性行為で死ぬ/薬の包装シートで死にかける/急に怒って死ぬ/田んぼを見に行って死ぬ/葬儀場で死ぬ/熱いお茶を飲んで死ぬ…などが並ぶ。
読んでいると、確かに「こんなことで死ぬんだ」と思うので、高齢者の生活には死因が日常にいろいろ潜んでいるんだなと生死観というか、自分の身体観を見直さざるを得ない。加齢とともに体は変わってしまうのだと自覚する必要がある。
例えば、入浴中にうとうとするのは、「居眠りではなく『気絶』」(p.28)だという。
お湯の温熱作用によって血管が拡張し、血圧が低下し、脳への血流が低下したことで意識を失った状態なのです。医学的にこの状態を「一過性脳虚血」と呼んでいます。
それでも若い人は自律神経の反射が俊敏なので、すぐ交感神経反応して脳血流が復活し、「おっと寝ちゃった」と目が覚めるため、大事には至りません。
ところが自律神経が遅延している65歳以上は、すぐに交感神経が反応せず、意識を回復することなく浴槽内に沈んでしまうのです。(p.28-29)
ものすごい熱いお湯に平気で入っているお年寄りは、慣れ・根性の問題ではなく、単に感覚が鈍くなっているだけなので、さらにこの危険は増すとか。
そういうメカニズムが働いているんだあと素直に感心する。入浴前の飲酒はもちろん、食事も胃腸に血液がいく状態だからダメなようである。
こういうのは、「若い頃と違う自分」に気づかないとホントにやばいなと感じる。
あるいは「左肩や左腕が痛い」というのが、心筋梗塞の予兆のようなものだそうだが、いく病院を間違えると湿布や痛み止めを処方されて終わることもあるとか。「胃がムカムカして痛い」というのも当然「食べ過ぎかな」「脂っこいものを食ったせいかな」と思うわけだが、これも心筋梗塞の場合があるという。
安易な自己診断すんな、総合診療医の診断受けろ、がアドバイスである。
これは難しいなあ。医者まで行ったのに、誤診されて死ぬのでは、まあしょうがないという気もする。
冒頭に脾臓が破裂して死ぬというケースも出てくる(遅発性脾臓破裂)。見守りなどのボランティアをしていて自転車に衝突し、家に帰って死んでしまうという。
高齢者になると、頭に隙間ができたり、怪我の広がりが遅かったり、その場で大事になっていないから後で大変なことになるというのもなかなか恐ろしいことではあった。
前にあげたエントリで『榎木泰介『アスリートのための運動生理学』に、子どもが缶蹴りや鬼ごっこような遊びを経ずに「身体知」がないままスポーツを始めるので、加減が分からず、ケガが深刻になることが書かれていた。
似たようなことだと思うが、加齢によって自分の身体にどういう変化が起きているか無自覚で、それが日常の結構些細なことで致命的な打撃を与えるのだということを、知れた。もちろん、全部の状況に対応できるはずもないから、防ぎようもないことは多い。しかし、自分の身体が変わっているのだという自覚自体は改めて大事だと感じた一冊である。
