2021年5月17日付「しんぶん赤旗」には、青野渉弁護士が4月17日に行った講演「交通犯罪の裁判の現状と問題点」の要旨が紹介されている。
その中で、警察が人身事故を人身事故として扱わないために、統計上、倍ほどの差が出ているという驚くべき話が載っている。
問題点の二つ目は、警察の統計上、人が負傷しても「人身事故」にしない事案が最近増加していることです。警察の統計上、交通事故の負傷者数は最近15年ほどで半減したことになっています。しかし自賠責保険の統計では、負傷者数は横ばいで変化はありません。
そのため、かつてほぼ同数だった二つの統計の負傷者数が、今では極端に乖離し、2018年には、自賠責保険の統計では負傷者数が108万人、警察の統計では負傷者数が52万人となっています。
どんなプロセスでそんなことが起きているのか。青野は次のように述べている。
警察官が被害者に診断書を提出しないように勧め、「人身事故」扱いにしないケースが増えているのです。
警察がそんなことをする“動機”は一体なんであろうか。
青野はそれらしいことについてこう述べている。
物損事故であれば、警察官は、事件記録を作成して検察に送致する手間が省けます。
えっ、手間のために?
要するに「面倒くさい」ってことなのだろうか。
しかしそんなことをしていいのか。法律上の問題になるのでは、と読んでいて不安になる。当然青野はこう指摘する。
現に負傷者がいるのに事件を検察に送致しないのは法律違反です。
そりゃそうですよね……。
そうなると政策のベースさえ変わってくる。
また、警察統計は、政府の交通安全基本計画の前提となっていますが、誤った統計をもとに計画が策定されていることも問題です。
第11次交通安全基本計画(計画期間:2021年度~25年度)の記述を見ると、
https://www8.cao.go.jp/koutu/kihon/keikaku11/pdf/kihon_keikaku.pdf
近年、死傷者数と交通事故件数については、平成16年をピークに減少が続いており、令和元年中の死傷者数は464,990人、2年中は372,315人となり、第10次計画の目標を2年連続して達成している。
とされている。第8〜10次計画にはあった「死傷者数」の抑制目標(p.10参照)は第11次では消えて「重傷者数を令和7年度までに22,000人以下にする」という目標に変わっている(p.12)。
この問題は、ネットで検索するといくつか記事や書籍が出てくる。
非常に気になるのでもう少し調べてみることにする。