交通事故負傷者は実際には減ってないのではないか、という「しんぶん赤旗」の記事を読んでその感想を書いた。*1
その後、共産党の塩川鉄也衆院議員がこの問題を国会で取り上げて質問した(6月4日、衆院内閣委員会)。今日の「しんぶん赤旗」にはその反響を書いた記事が載っていた。
そして塩川議員のホームページにはその質問をまとめた記事が載っていた。
前回記事で青野渉弁護士のコメントを紹介したが、「横ばい」と「半減」ほどに違う。「実数が違うだけで、基本的には同じ傾向」ではないのである。これは統計の意味を無効化し、それを基礎にした国策を誤らせる。
乖離が生じているのはなぜかと質問。
警察庁高木勇人交通局長は「自賠責保険では、人身事故として警察に届出がなされなかったものでも、実際に負傷したことが確認できれば支払いを行うため」と答弁。
私は、負傷者数の実態を反映しているのは警察の統計ではなく、自賠責の統計だと事実上認めるものだと追及。
要するに実際には負傷者が出ているのに「物件事故」として扱われたものは、この負傷者統計に入ってこないということを警察庁が認めたのである。
以下は記事にはなく、動画で確認した塩川議員が暴露した、弁護士からの聞き取り部分である。
実態をお聞きすると、交通犯罪に詳しい弁護士、青野渉氏によりますと、「警察署の事故対応として、被害者から警察に診断書が提出されると人身事故の扱いになるが診断書が提出されなければ物件事故として扱われる」ということ、「負傷した被害者に対し『診断書を出すなら事情聴取があるので警察署に来て事情聴取に対応してもらいます』『警察で人身事故扱いにしなくても、交通事故証明書は出ますし、自動車保険は出ますよ』とか『相手を処罰したいわけではないでしょう』とか、診断書を出すとデメリットがあり、診断書を出さなくてもデメリットはないかのような説明をしている」ということであります。
と追及した。
こうした統計の乖離をただす質問に対して、
内閣府難波健太大臣官房審議官は「指摘は承知している」
と答えて検証を約束したのだ。
これは塩川議員、一本である。
補足(2021年6月13日 午前11時30分)
はてなブックマークに「警察としては診断書入手できてなかったら公式に人身にできないのは当たり前では?」というコメントが比較的上位にあるのだが、別のコメントも批判しているように、実際に負傷が生じて(診断書まで持ってきて)いるのに現場でそれを出させないようにしているのが問題なのである。
前回のエントリで紹介したが、青野弁護士が指摘するように「現に負傷者がいるのに事件を検察に送致しないのは法律違反」となる。
質問の動画(2時間46分ごろ)を見てほしいが、塩川議員は、なぜこんなことが起きているのか、現場のそのような対応が横行しているのかを質問の中で紹介している。
要は、国の交通安全基本計画(第8次、2006年)に「死傷者数」の削減目標がうたいこまれ(これ自体は必要だと塩川氏は言う)、それに合わせるように2007年から乖離が始まったということだ。国の政策は統計がベースになるのでそれを大きく誤ることになってしまう。
*1:前の記事のタイトルが「交通事故は本当は減っていない?」になっているが、正確には「交通事故負傷者は本当は減っていない?」だな。