活字で国会パブリックビューイング——コロナ問題での志位質問を読む

 活字で「国会パブリックビューイング」をやるっていうのは大変なんでしょうかね。

 この記事でも少し書きましたけど。

kamiyakenkyujo.hatenablog.com

 

 映像は利点も多いけど、デメリットとしてはやっぱり「速い」ってこと。

 考える時間もなく過ぎていってしまいます。仮に考える時間や解説時間を設けたとしても、それでも映像の流れる時間に厳しく制約されています。まあ、動画ならストップすればいいわけですけど。*1

 国会討論が難しいと感じる人は、制度や用語に不慣れで、質問と答弁がどうかみ合っているのかがわからないと思っているんですね。そこを一つひとつ説明しながらやるのが一番大事なことなんじゃないかと思います。

 そこで、共産党志位和夫の質問を使って、「紙上国会パブリックビューイング」をやってみます。いや「紙」じゃありませんけど。

 これ。

www.jcp.or.jp

 

 じゃあ、ちょっとやってみます。

 

検査センターをつくるための支援予算は計上されているか?

 志位和夫委員長 日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。

 冒頭、新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになった方々への心からの哀悼とともに、闘病中の方々にお見舞いを申しあげます。

 医療従事者をはじめ、社会インフラを支えて頑張っておられる方々に感謝を申し上げます。

 新型コロナ危機に対して、いま政治は何をなすべきか。わが党の提案を示しつつ、総理の見解をただしたいと思います。

 

 まず、医療崩壊をいかにして止めるかについてであります。

 私は、そのための一つの大きなカギは、PCR検査の体制を抜本的に改善・強化し、必要な人が速やかに検査を受けられる体制に転換することにあると考えます。

 現状は、PCR検査数があまりにも少ない。総理は、検査数を1日2万件まで増やすと言われますが、実施数は1日8000件程度にとどまっております。「発熱やせきなどコロナを疑わせる症状が続いているが検査が受けられない」などという悲鳴がうずまいております。

 なぜそうなっているのか。パネル(1)をご覧ください。

 

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 このパネルの左側の流れ――これまでの検査方式では、感染が疑われる人は、まず「帰国者・接触者相談センター」に相談しなければなりません。しかし、それを担っている保健所が、能力の限界を超え、疲弊しています。そして、検査を実施するのは「帰国者・接触者外来」ですが、ここも能力の限界が来ています。

 全国どこでも「保健所の電話がつながらない」「保健所が検査が必要と判断しても、実施まで5日かかる」という事態が続いています。多くの国民が、検査が受けられない状況が続くもとで、市中感染が広がり、各地の病院で院内感染がおこり、医療崩壊が始まりつつあります。検査が遅れた結果、重症化が進み、命を落とす方があいついでいます。

 そうしたもとで、わが党は、パネルの右側の流れを新たにつくる――感染が疑われる人は、保健所を通さずに、かかりつけ医に電話で相談し、PCR検査センターで検査する仕組みをつくることを提案してまいりました。

 総理も、17日の記者会見で、「各地の医師会の協力も得て検査センターを設置します。かかりつけ医のみなさんが必要と判断した場合には、直接このセンターで検体を採取し、民間検査機関に送ることで、保健所などの負担を軽減します」と表明されました。遅きに失したとはいえ、これまでの検査方式の転換を表明したことは前進だと思います。

 そこで総理にうかがいますが、政府として検査センターの設置を推進するために新たな予算措置をとったのでしょうか。端的にお答えください。

 

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 ここはそんなに難しくないと思います。

 PCR検査を増やすというのは、もうだいたいどういう立場の人でも一致していると思うし、検査センターをつくるべきだというのもまあ一致しているでしょう。そのための予算が今度の補正予算には入っていますか? という質問ですね。

 

 加藤勝信厚生労働相 新たな検査センターは、これはいわゆる「帰国者・接触者外来」の一形態です。したがって、それが基本的に検査センター、検査機能をもつ。検査と言っても、(検体を)ぬぐうという意味であって、実際の検査は、例えば民間の検査会社にお願いするということです。今回の補正予算の中にも、設置についての費用、運営に関する費用は計上されています

 志位 いま言われた、補正予算のなかの「運営に関する費用」というのは、これはPCR検査の本人負担の減免のための措置です。補正予算案は、総理がPCR検査センターをつくると表明した前につくられたものです。ですから補正予算案のなかには、PCR検査センターの費用は1円も入っていない。(検査センターの設置は)後から表明したものですから。

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 ここは見事にかみ合ってますね。

 加藤大臣は、“補正予算の中に「運営に関する費用」は入っています”と受け取れる答弁をしました。

 しかし志位議員は“「運営に関する費用」が入っているって言うけど、それは本人が検査を受けるときに費用があまりかからないようにする手立てですよね?”とツッコんでいます。ふつう「運営に関する費用」でイメージするのは、建物をつくったり、そこにはりつける医療スタッフの人件費をみたりとか、そういうのですよね。それは全然入ってないじゃん? というわけです。

 そしてそもそもこの補正予算案をいったん作ったに、安倍首相が“やっぱPCR検査センターつくることにしたわ”って表明したんだから、そもそも入ってないよね、と言うのが志位議員のもう一つのツッコミです。

 「設置についての費用」という場合、意味が限定されていないので、あたかも入っているように聞こえます。ウソはついていない。「ごはん」といった場合「食事」なのか「米飯」なのか、どちらともとれるのに似ています。さすが加藤大臣、元祖「ご飯論法です。

 

 志位 政府の方針転換を受けて、全国の自治体では、PCR検査センターをつくる動きが始まっています。長野県では、24日に発表した県の補正予算案で、PCR検査センターを県内20カ所に設置する予算を10億3000万円計上しました。1カ所平均5000万円。札幌市も、24日に発表した市の補正予算案で、PCR検査センター設置予算を8600万円計上しています。東京都では医師会が主導して最大47カ所でPCR(検査)センターをつくる動きが始まっております。

 1カ所平均5000万円として、全国で数百カ所つくるとなれば、200億円程度が新たに必要になってきます。

 ところが、総理が「PCR検査センターをつくる」と方針転換を表明したにもかかわらず、補正予算案にはPCR検査センターの体制整備のための予算はまったく含まれていない。方針転換前に閣議決定した予算案のままです。

 先ほど(加藤厚労相は)「(帰国者・)接触者外来の一形態だ」と言われましたが、(PCR検査センターという)検体を採取することに特化した機関をつくるというのは新しい方針じゃないですか。前のままの予算案では国の本気度が問われるのではないですか。

 総理、「PCR検査センターをつくる」と表明した以上、その体制整備のために新たな予算措置をとるべきじゃありませんか。今度は総理がお答えください。

 厚労相 PCRセンターは特別なものとおっしゃっていますが、そうではないのです。これは診療所です。そこで診療をし、そしてぬぐうのも診療行為です。これまで「帰国者・接触者外来」でやってきた事業を、特に別建てにつくってやる、プレハブつくってやる、これまでもそれはできたわけです。さらに、それを積極的に支援するために今回は補正予算にものせているということで、今、お話があったそれぞれの地域でそういう取り組みがあれば、それの設置にかかる費用、また運用費については国の負担する分についてはこの補正予算で見させていただきます。

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 志位議員の方は、あまり難しくありませんよね。センターをつくるのは1か所5000万円かかるから、新たにたくさんつくろうと思えば、もっと予算をつけないとダメじゃないかといっているわけです。

  これにたいして、加藤大臣はどう「反論」しているか。

 “センターは診療所の一種だからこれまでも予算はつけてきた”というわけです。つまり一般的に診療所をつくるのと同じだから、そのための予算はコロナであろうがなかろうが、すでにあるんですよ、と言いたいのです。

 そして“それに加えてさらに今回の補正予算では支援のための予算をつけました”と反論しています。

 これに対して、志位議員はどう再反論するんでしょうか。もう少し見てみます。

 

 志位 これまでも(予算は)ついているというけれど、検査センターという検体をぬぐうのに特化した機関をつくるというわけです。そして各県では、そのための予算を補正予算案で計上しているわけです。

 全国の医療関係者にお話をうかがいますと、PCR検査センターをつくる努力が各地で開始されておりますが、困難が多いと聞いております。たとえば地域の医師会の協力を得ようとすれば、輪番で検査に当たる医師に対する手当てが必要になります。診療所を休止にするための補償も必要になります。多くの医療関係者は、強い使命感を持ってコロナに立ち向かっておりますが、使命感だけでは進みません。先立つものがなければ進まない。政府の強い財政的な後押しが必要です。先ほど49億円の話(「運営に関する費用」)をされましたが、ちょっと計算しても200億円くらいかかるじゃないですか

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 さっき志位議員は「運営に関する費用」は実は設置や運営のためじゃなくて、検査を受けにきた人の費用をまけるための予算だよね、と反論したんですが、ここではちょっと反論の角度を変えています。

 仮にそれは「運営に関する費用」だったとしても、49億円しかない、200億円必要なんだから額が少なすぎるよね、という反論をしているのです。

 これに対して安倍首相が反論します。

 

 志位 政府はこれまで検査を絞ってきた。しかし絞ってきた結果、市中感染がまん延し、院内感染が多発し、医療崩壊が始まっています。この事実に直面して、総理自身がPCR検査センターをつくって大量検査を行うと方針転換を表明されたわけです。新しい方針をあなた自身が表明した以上、既存の予算の枠内で対応するのではなくて、それを実行するための新たな予算措置をとるのはあたりまえじゃないですか。それをやってこそ国の本気度が自治体に伝わって、PCR検査センターの設置が前に進むのではありませんか。総理いかがでしょうか。

 安倍晋三首相 すでに加藤厚労大臣から答弁させていただきましたが、PCR検査センターを設置して、地域の医師会等へ委託する形で運営することで、あるいは歯科医師のみなさんにも検体採取にご協力いただくことなどの取り組みを推進することによって、これまで検査に従事されてきた方々の負担軽減をはかるとともに、検査拠点の確保をはかっていくこととしています。

 このほか、感染管理の専門家による実地研修や感染管理の体制整備等を行うことで、「帰国者・接触者外来」を設置する医療機関を創設することも都道府県に対し依頼しております。

 そうしたものに対しまして、政府としては補正予算において1490億円を計上し、緊急包括支援交付金を新たに創設しました

 そして、こうした取り組みを都道府県が推進することを強力に支援するとともに、また地方創生臨時交付金の活用によって、実質全額国費で支援をしていく、対応することも可能になっております。

 そしてまた、これらの交付金とは別に地域のPCRセンターの運営等、運営等に要する費用についても補正予算にも計上しております。ですからそこのところはしっかりと見ていただきたい。われわれはその費用は補正予算に計上しているということです。

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 安倍首相の反論は、“緊急になんでも使えるお金(緊急包括支援交付金)を1490億円用意したんですよ”というものです。これはかみあってますね。聞いた方は、ああそうか政府はちゃんと用意しているんだな、と思います。

 そして、その「緊急になんでも使えるお金」とは別に、さっきの「運営に関する費用」をみるための予算はつけていますよ、と言っています。こちらはかみ合っていません。志位議員が“それは運営のためのものじゃないでしょ?”と批判していることに応えていないからです。

 

 

 志位 まず運営等の予算はつけているんだとおっしゃったけど、これは患者さんの本人の負担の減免のための49億円です。(検査センターの設置とは)別の予算です。それから「(緊急)包括支援交付金」を1490億円とおっしゃったけど、これはPCR検査センターをつくる前に決めたメニューです。その後に決めたのだから新しい予算措置をとれといっております。

 これは総理、自治体まかせ、医師会まかせでは進まない。政府として新たな予算をつけて、「これだけの予算を積んだから、安心して進めてほしい」と言ってこそ、「プッシュ型」でやってこそ、前に進むということを強く述べておきたいと思います。

 

f:id:kamiyakenkyujo:20200502123606p:plain さっきも言った通り、49億円は「運営に関する費用」じゃなくて「患者さんの本人の負担の減免のため」のものだということに、結局政府は反論できないままです。ここは勝負がついたというべきでしょう。

 他方で、志位議員が“200億円かかるじゃないか”と言ったことについては安倍首相は“なんでも使える緊急包括支援金1490億円でまかなえばいいじゃん”と反論していますが、志位議員は“それは昔決めた話でしょ”と再反論しています。ぼくは一応安倍首相の反論は理屈が成り立っていると思います。すれ違い、という感じでしょうか。

 

 そして、テーマが次の問題に移ります。

 

コロナ患者受入のための病院支援は十分なのか?

 志位 検査と一体に進めなければならないのが、感染者の治療、隔離と保護です。

 重症や中等症の患者さんに対しては、コロナ患者受け入れ病院を確保しなければなりません。全国の医療関係者の方々にうかがいますと、患者さんの治療のために献身的な奮闘をされておられますが、病院がコロナ患者を受け入れるには、大きな財政的負担がかかるという切実な訴えが寄せられております。


 パネル(2)をご覧ください。

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 これは新型コロナ患者受け入れによる病院の減収要因がどのようなものになるかについての概略です。全国の医療機関から聞き取り調査を行いました。

 まずコロナ患者の受け入れベッドを空けておかなければなりません。

 医師・看護師の特別の体制をとらなければなりません。

 特別の病棟や病室を整備しなければなりません。

 一般の診療や入院患者数を縮小しなければなりません。

 手術や健康診断を先延ばしすることも必要になってまいります。

 これらによる減収に対する財政的補償がないままでは、対策を行うことはできません。

 先日、私は、医療現場のみなさんに状況をお聞きする機会がありましたが、首都圏のある民間病院では、コロナ患者さん15人を受け入れるために、病床を41減らしています。別の民間病院では、コロナ患者さん20人を受け入れるために、病床を47減らしています。すべて病院の減収になっております。「このままでは夏までに資金がショート(不足)する」という切実な訴えも寄せられました。

 そういうなかで東京都杉並区は、区内の四つの基幹病院について、新型コロナ患者の受け入れによる減収額を試算しています。「1病院あたり月1億2800万円から2億8000万円」――平均月2億円という数字が出てきています。

 区長さんは、「コロナウイルスとのたたかいに献身的に挑めば挑むほど、病院が経営難になり、最悪の場合、病院の崩壊を招きかねない」と述べ、減収分の全額を助成する方針を打ち出しています。

 総理、本来これは国がやるべきことではないでしょうか。新型コロナ対策にあたる病院に対して、「コロナ対策にかかる費用は、国が全額補償する」と明言すべきではありませんか。

 

f:id:kamiyakenkyujo:20200502123606p:plain ここは、“コロナ患者を一般の病院が受け入れるとむちゃくちゃ収入が減るんだけど、そのための支援の予算を補正予算の中に入れるべきじゃないのか?”、“ぜんぶ国が面倒みるよ、と言え”という質問です。

 加藤大臣の答弁と志位議員の反論はどうなっているのか。

 ちょっと整理するために、便宜的にぼくが(A)(B)(C)(D)と要素に分けてみました。

 厚労相 パネルについてですが、(A)まず空きベッドについては確保するための費用はすでに措置をさせていただいております。(B)それから医師・看護師の特別体制をする、例えば病床を集めて、そうするとそこに手厚い看護が必要になってくる。当然そこには医師や看護師の配置も増えてくるわけであります。そうした場合には特定集中治療室管理料が算定できるように特例の扱いをし、かつその基準も、先般2倍以上の水準にあげる診療報酬の改定もさせていただきました。(C)また特別の病棟・病室の整備については、今回の(緊急包括支援)交付金を使って、たとえばですね、別途整備をする場合には、それを支援するこういう費用ものせています。加えて診療報酬の全体としての減収を抱えておられるところには、よく事情を聴きながら、その状況状況を踏まえながら必要な対応をしていかなければならないと思っております。

 志位 (B)診療報酬を2倍にしたといわれました。これ自体良いことだと思うのですが、重症患者の治療だけです。それ以外の中等症患者の治療にはわずかな加算だけです。そして、診療報酬というのは、治療行為が行われた後に支払われるものであって、病院がコロナ患者を受け入れる場合のさまざまな減収――たとえば先ほどあげた一般の診療や入院患者数の縮小――こういう減収を補填(ほてん)するものではありません。

 (C)それから「緊急包括支援交付金」のことをまた言われました。しかし現在、「帰国者・接触者外来」等として、コロナ患者受け入れ先となっている医療機関は、全国で約1200病院あります。コロナ対応病院がこうむる減収額が、先ほどの杉並区の例で月2億円としますと、全国のコロナ対応病院の減収分を補填するには月2400億円かかります。半年で1・4兆円です。「緊急包括支援交付金」1490億円では、桁違いに足らない。ここでも抜本的財政措置をとることを強く求めたいと思います。

 

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 (A)はコロナ患者のために病院のベッドを空けて待っていたらその分、病院の収入が減ってしまうけども、それをカバーする措置をした、というのが加藤大臣の答弁です。これは志位議員から再反論がありませんでした。

 (B)は、コロナ患者を受け入れたら、医師や看護師に特別な体制が要るよね、というわけですが、加藤大臣は、“そのために病院に国(保険)から払う報酬を2倍にしました”と述べ、胸を張っています。しかし、志位議員は“いや、それ、重症の人だけだよね?”と再反論しています。とても足りない、というわけです。

 (C)については、コロナ患者を受け入れたら特別の病室が要るよね、という話ですけど、加藤大臣は“それはなんでも使える交付金で面倒をみます”と返しています。しかし志位議員は再び反論して“何でもかんでもその交付金を使えって言うけど、まともに病院の減収に対応したら1.4兆円かかるよ? 1490億円じゃぜんぜん足りないと思うけど?”とツッコんでいます。

 

「お金のことは心配するな」とは言えない

 志位 もともと、政府の医療費削減政策によって、多くの病院は日常からギリギリの経営を余儀なくされています。さらにコロナ禍によって、深刻な受診抑制が起こり、経営を圧迫しています。そこにコロナ患者への対応を行えば、倒産は必至だという悲鳴が全国から寄せられております。

 コロナ患者の検査と治療のために懸命の取り組みを行っている、ある首都圏の民間病院の院長からは次のような訴えが寄せられました。総理、お聞きください。

 「日本という国は、高度な医療と素晴らしい健康水準を達成していると言われてきましたが、こういった問題が起こると、ほとんどの病院が経営的にも人材的にもギリギリのところでやっていて、たちまちに崩壊モードになってしまうことがよく分かりました。それでも医療従事者は、強い使命感をもって、命がけで頑張っています。そのときに、政府が『お金のことは心配するな。国が責任をもつ。だから医療従事者は結束して頑張ってください』という強いメッセージを出してほしい。それがないと乗り切れない」

 「お金のことは心配しないでやってほしい」。このメッセージを総理の口から言っていただきたい。いかがでしょうか。

 首相 先ほど厚労大臣から答弁をさせていただきましたが、まさに最前線で感染と背中あわせの大変な努力をしていただいていることに改めて感謝申し上げたい、敬意を表したいと思います。

 

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  ここはわかりやすいですね。

 “お金のことは心配するな”という政治メッセージを出してほしい、という質問です。しかし、安倍首相は一般的な感謝の言葉にすり替えてしまいました。

 あーあ。

 感謝の拍手をしたりとか、ねぎらいの言葉を言ったりとか、そういうことを政治家がするかどうかは、ぼくはどうでもいいと思うんですね。ぶっきらぼうでムスっとしていても、お金をつけてくれるなら、そっちのツンデレ政治家の方が、1000倍いいんじゃないですか?

 んで、安倍首相の答弁の続きです。便宜上、先ほどの(A)(B)…の整理区分をまた使います。さらに増えています。

 

  首相  そのなかで、各病院の経営を圧迫している、われわれも十分承知をしています。そこで先ほど厚労大臣から答弁させていただいたように、(C)緊急包括支援交付金として1490億円を計上しておりまして、(D)また地方創生臨時交付金の活用によって全額国費による対応も可能としているところでありますし、(B)あわせてある程度の評価をいただきましたが、向き合う医療従事者の処遇改善に資するため重症者治療への診療報酬を倍増しているところでございます。また新型コロナウイルス感染症によって、経営に影響が出ている医療機関への支援も重要でございまして、(E)今般の緊急経済対策において無利子無担保を内容とする経営資金融資による支援を行っていきます。

 (F)また、経営が厳しい医療法人や個人診療所に対しては今般の持続化給付金の対象とした上で、医療法人は200万円、個人診療所は100万円を上限に現金給付を行うこととしています。もちろんこれではまだ十分ではないかもしれませんが、その給付をさせていただきたいと思います。(A)さらに空きベッドの確保の支援については病床を空けておくための経費として1床あたり定額の補助を実施しているところでございます。引き続き医療の現場を守りつつ、感染拡大防止にむけて、われわれも全力で取り組んでいきたいと思っております。

 志位 いろんなこと言われました。(C)「緊急包括支援交付金」とおっしゃいましたけれど、1490億です。(コロナ対応病院の損失補償には)1・4兆円かかるのです。(F)「持続化給付金」と言われた。100万、200万です。いま1億、2億という単位の赤字が問題になっているのです。

 

f:id:kamiyakenkyujo:20200502123606p:plain はい、まさに「いろんなこと言われました」ね(笑)。

 新しく出てきたのは(D)(E)(F)です。

 (D)は、地方自治体になんでも使えるお金としておろしている予算のことです。

 (E)は、病院への支援っぽく言ってますが、このコロナ禍で中小企業一般が困ったときに借りられる融資のことです。つまり借金できますよ、ということです。

 (F)は、これも病院への特別な話じゃなくて、やはりこのコロナ禍で売上が半分になっちゃった中小企業一般がもらえるお金のことです。

 志位議員が反論したのは(C)と(F)だけですね。(B)はすでに反論しています。

 (C)、なんでも使えるお金(緊急包括支援交付金)については、さっきからいっている通り“少なすぎる”という反論です。これはかみ合っています。額が少ないということには安倍首相は反論できていません。

 (F)は、もらえるいっても、1回こっきりでしかも100万円とかそんなもんで、今1億、2億足らないって話をしてるんだけど? と反論しています。ここもかみ合っていますね。安倍首相はそこには反論できていません。

 ちなみに(E)は志位議員の反論はありませんが、まあ借金ですからね…。病院が何億円もの赤字出してそれで借金したら後で返せんのかよって話です。

 

 とりあえずこれくらいにしましょうか。

 こうしてみると、この質問で次のことが浮かび上がってきます。

  • 安倍政権はコロナに対する検査拡充や病院支援のメニューは一応用意したけど、お金がケタ違いに少ない。
  • だから国会ではメニューとして用意しているかのような答弁をして「やってる感」を演出しているけど、現場の悲鳴からすると金額はまったく用意されていない。

 これをどう判断するかは、ぼくら国民一人ひとりが考えることです。

 「仕方ない」と思うのか、「もっと増やすべきだ」と思うのか。

 ただ、その手前「なんだ政権もよくやってるじゃん」とメニュー表だけ見てごまかされないようにしてほしいと思います。

 「仔牛のカツレツ ボローニャ風」ってメニューにあって、「うわっ! うまそう!」って注文すると2センチくらいのものがやってくるみたいな感じです。

*1:追記:書き忘れてしまいましたが、映像を街頭で流して解説するのは、もちろん大きなメリットがあります。それは多くの人に、ある意味で「強制的に」見る機会を設けられる、つまりこれまでリーチできなかった人たちに問題を届けることができるという点です。ネットでは強い指向性が働くので、この記事も大半はおそらく興味のある人・文字を読むのが苦痛でない人にしか届きません。それじゃあマスターベーションでは? と言われると弱いのですが、まあごく少数であっても、やはりニュートラルな人が読んで考えを変えてくれるかもしれないなと思って書いているのです。