森永卓郎『モリタクの低糖質ダイエット ぶっちぎりのデブが4カ月で19.9kg減!』

ぼくの場合 7kgダイエット

 引越しをしてからも元の住所のところに行ったりする。
 数ヶ月ぶりに会った人たちから「紙屋さん、痩せました?」と必ず聞かれる。病気ではないか、とかガンではないかとも言われる。
 ちょうど引越しの頃からダイエットをして、現在まで続いているが、約7キロほど痩せたからである。最高61kgあった体重は現在54kgほどでだいたいキープしている。体脂肪率は風呂上がりに20%前後だったものが14%くらいで落ち着いている。この水準に落ち着いたのはすでに3か月以上前であり、現在は安定的に推移している。


 もともとそんなに太っては見えず、「中肉中背」という印象があったので、なぜダイエットなどしたのだと聞かれるのだが、簡単に言えば職場の健康診断の数値が悪かったからである。1回悪かったというのではない。毎年中性脂肪コレステロールの値が基準を超えており、必ず再検査を診断される。職場でもそういうデータを明かすと「痩せてるっぽいのにw」と笑い者になっていた。
 加えて、肝臓の値が悪くなっていてびっくりした。
 日常的には酒はほとんど飲まないので、肝炎とかガンではないかと心配したのだが、検査の結果それはなくて、どうも非アルコール性脂肪肝(NASH)ではないかという疑いがかかった。エコーをとると、肝臓がうっすらと白い。「フォアグラみたいになっているんですよ」とよく行く内科の医者は言った。
 それに加えて、尿に時々血が混じるらしい。「腎臓に小さな石ができ始めていますね。アブラものばっかり食べてるせいでしょう」と担当の医師は言う。「このままいくと尿路結石です」という警告を受けた。
(あと、時々健診で尿に蛋白が出ていたのだが、これは前日だけ禁欲すれば出ないのではないかと思い、そうしたらてきめんに改善した。)


 医者はアブラとカロリーを控えて、野菜や魚を取るようにしてほしいという常識的な意見を述べた。
 ぼくは中性脂肪コレステロールが基準値を超える程度なら、まあだましだましやればいいかと思っていたのだが、肝臓の値が悪くなるにいたってはやばいと思うようになったのである。


 非アルコール性脂肪肝については何をすればいいですか、と担当の医者に聞いたら、「うーん、まあ市販の脂肪肝対策の料理本買ってきて2〜3冊も読んで実践されるといいですよ」といったので、その通りにした。

ぼくの3つの指針

 ぼくがよく読んだのは『脂肪肝・NASH・アルコール性脂肪肝の安心ごはん』(女子栄養大学出版部)と『これならできるコレステロール中性脂肪を下げるレシピ 』(新星出版社)だった。
 とくに『脂肪肝・NASH・アルコール性脂肪肝の安心ごはん』はわかりやすかった。


 そこで得た方針は、

  1. カロリーを1日1500kcal(最大1800kcal)にコントロールすること
  2. 「黄・赤・緑」のバランスを崩さないこと
  3. 野菜を350g/日取ること

の3つだった。


脂肪肝・NASH・アルコール性肝炎の安心ごはん (食事療法はじめの一歩シリーズ) この『脂肪肝・NASH・アルコール性脂肪肝の安心ごはん』には、「炭水化物は適切な量をとる」という項目があり、低血糖は重大な問題を引き起こすことがあると警告した上で、

炭水化物だけを悪者にする最近はやりの低炭水化物ダイエットには、注意が必要。日本で肥満や糖尿病が急増した時代には、炭水化物の摂取量はむしろ減少しています。問題は脂質のとりすぎなのです。(『脂肪肝・NASH・アルコール性脂肪肝の安心ごはん』p.22)

としている。
 上記の指針のうち、「1日1500kcal」を続けるためにはかなりの工夫と改善が必要になった。もっとも重要な点はおそらくここだったのだろう。
 朝は、どんぶりに野菜(冬だったので、白菜・ネギ・キノコ・わかめが多かった)と鶏肉(ササミ)を50gを入れてモチを一つ(110kcal)だけ入れるという食事が続いた。スープは味噌。つまり雑煮というか味噌汁というか。そして汁はあまり飲まなかった。
 昼は、こぶし2つほどの温野菜(というか、もう事実上煮てしまってある)を弁当箱に入れて持って行き、おにぎり1つと納豆1杯にした。これだけだと腹が減るのでフルーツを少し食べた。りんごなら半分(1日150g)。
 夜はどんぶりに温野菜を入れてポン酢とか低カロリーのドレッシングなどで食べた。これに、ごはんをミニ茶碗1杯、レシピ本で自分用に低カロリーのものを用意した。『脂肪肝・NASH・アルコール性脂肪肝の安心ごはん』に載っているが、例えば「鶏肉ときのこの和風マリネ」は257kcal(鶏肉はモモ100gで脂質は14.5gとされている。しょうゆ、みりん、酢で味付け)。
 間食は根絶した。その代わり、腹が減るとコーヒーを飲んで気分を紛らわせた。
 また、夜は少し物足りなく感じるようになり、ノンアルコールビールサントリーの「オールフリー」)を1本(350ml)飲んだりした。炭酸なので、1本だけ晩酌するだけでも腹がいっぱいに感じるようになった。また、日によってはノンアルコールでなくアルコールを飲んだ(ビール1缶、もしくは日本酒は0.5合)。飲む日が週に4日、飲まない日が3日ほどであろう。

ぼくの場合は何が変わったのか

 これらの食事によって劇的に変わったのはまずカロリーだった。
 かつては総カロリーはおそらく2000kcal行っていたに違いない。
 特に、間食の根絶は大きかった。職場にお菓子が置いてあるのだが、会議の間や午後の作業の合間にクッキーだのチョコだのを食べていた。これをもう一切食べないことにした(職場で2ヶ月に1回くらいのペースで誰かの誕生日にショートケーキが振る舞われるのだが、それは食べることにした)。夜食はもう以ての外ということになった。月に1回程度飲みに行くことはあったが、その日は「解禁」ということで夕食は抜いて飲みに行った(その際にもまず野菜をつまみとした)。
 3食のうち、ごはん(米飯)の量が大きく減った。ご飯・お餅がだいたい1食150kcal、ミニ茶碗1杯ほどになった。それまでは1食でミニどんぶり1杯でどうかすると2杯食べていたり、家族の残りを「処理」していたので、うーん、ご飯を1食400kcalくらい食べていたものが大幅に減ったのである。
 肉の量はそれまで平気でブタ(アブラ身の多い切り落とし)を1食200gくらい食べていたかもしれない。それをトリのムネ肉やササミを中心に60g、多くても100gほどに変えた。
 果物についても警戒するようになった。思えば、果物はかなり問題のある取り方をしていた。朝、ビタミンを補給するという口実でバナナを何本も食べたり、実家から送ってくる、糖度の高いメロン、リンゴ、ナシ、ブドウ……などを1日にたくさん食べた。家族があまり食べない上に、ぼく自身は無類の果物好きなので、1日数百gとっていた可能性があった(リンゴだと2〜3個)。これを「1日150g」に制限した。「昼休みの楽しみ」程度のものにしたのである。
 野菜をまったく食べていなかった食生活が激変した。どんなことがあっても野菜を食べるようになり、忙しくて弁当が持っていけない時は、昼休みにコンビニでサラダとおにぎりと納豆(もしくは蒸し鶏)を買って食べるようにした。ただし、野菜ジュースでの摂取はほとんどしなかった。糖度が高いと思ったからである。


 この方式で体重と体脂肪率はみるみる落ちていった。
 お腹が劇的にヘコんだ。ただし、久々に会った人の中には「肩や胸がげっそりした」という人もいる。また、一見して「痩せた」という言葉が多くの人から漏れるのは、顔つきがいかにも「痩せた」となったのであろう。ぼくのつれあいは日常一緒にいるのでこうした変化には気づかず、周囲のそうした反応にむしろ驚いていたほどであった。


 ぼくが一番警戒したのは、一つには、筋肉や骨などを退化させていないか、ということであった。野菜と少量の炭水化物だけになったら、老人のようになってみるみるやせ衰えてしまう、という危惧だった。そこでたんぱく質の必要量は意識的にとろうとした。
 他方、それ以外の点でも思わぬ危険な落とし穴にハマっているのではないかという不安がいつもあった。本人はいい気になってダイエットしていて、取り返しのつかない疾患を促進させる方策をしていた……などということにならぬようにしたかった。

ぼくが警戒していること

 一応医者に聞いて始めたことではあったが、何か一つの判断(例えば「肉はよくない」というイメージが肉の摂取を絶たせてしまい、その結果筋肉が衰える、というようなケース)が重大な偏りをもって自分の中で増幅されてしまうことはままある。3ヶ月後に一度自主的な健康診断を受けてみることにした。
 すると、体重はもちろん、中性脂肪コレステロール、肝臓の諸数値も本当に驚くほど改善され、すべて基準値内に収まった。特に肝臓は平均値に戻った。
 結果を見た担当医が「これは見事ですねえ」と感嘆の声をあげた。「まあ、大体の人は処方はわかっているんだけど、実践できないんですよね。よくここまでやりましたね。すごいですね」と手放しでの礼賛である。


 ただ、この医者は、例えば筋肉が落ちていないか、他に影響が出ていないか、そういうことについてトータルに診てくれているわけではない。意外な影響が出ているかどうかはまだ分からないというのが本当のところである。
 ぼくは、このまま体重を落とし続けるのは危険だと思ったので、少しだけ規制を緩めた。
 カロリー内であれば、アブラっぽいものを食べるようになってしまった。結局中性脂肪が高く、肝臓がやられていたのは、脂質が多かったという以上に、炭水化物・糖質を中心にカロリーを摂り過ぎていたせいではないかと今では考えているからである。
 総摂取カロリー量も少し増やした。今1800kcalくらい行っているのではないか。また、土日はよく外食している。家でサラダなどを食べた後に回転ずしに行き、8〜9皿とノンアル1本か日本酒1合を飲む。
 ただし、野菜を大量に食べることとと、間食はしない、食べてすぐ寝ないなどの基本線はそのままにしている。
 こうした規制緩和の結果どうなったかというと、自主的な中間健診をしてから数ヶ月経ったが、体重(53〜54kg)も体脂肪率(12〜15%)はそれ以上下がりもせず、上がりもしなくなった。この範囲の規制緩和でも問題ないということなのだろう。
 ただ、もう一度現時点で、医者に行こうと思っている。アブラ(脂質)にやや甘くなった分だけ、肝臓や腎臓などの数値が悪くなっている恐れがあるからだ。



 かつて幕内秀夫の本をいくつか読んだ時、「和食の粗食が良い」という認識でいたのだが、結果的にご飯を食べ過ぎていたのと、(これは幕内としても全く容認しがたいものであろうが)果物と間食がやめられなかった。幕内はカロリー制限に大きな意味を見出していないのであるが、カロリーを制限しないとダメだという認識に至るようになった。
『40歳からはじめる健康学』『一生太らない体のつくり方』『40歳からの元気食「何を食べないか」』『「リスク」の食べ方』 - 紙屋研究所 『40歳からはじめる健康学』『一生太らない体のつくり方』『40歳からの元気食「何を食べないか」』『「リスク」の食べ方』 - 紙屋研究所

幕内秀夫『実践・50歳からの少食長寿法』 - 紙屋研究所 幕内秀夫『実践・50歳からの少食長寿法』 - 紙屋研究所

森永のような人がやるには非常に危険であることをまず認識を

モリタクの低糖質ダイエット  ぶっちぎりのデブが4カ月で19.9?減! (SB新書) さて、ようやく森永卓郎の本書である。
 本屋で表紙に度肝を抜かれた買った(後でkindleで。すいません)。度肝を抜かれたんだけど、この痩せ方は岡田斗司夫の時と違って、一瞬不健康に見えた。いやあまり意味のない、ホントただの印象なんだけど。
 ぼくが主にカロリー制限によるダイエットだったのに対して、森永のダイエットは徹底した糖質カットである。
 読み終わって、肥満で糖尿病になり合併症になりかけていた森永がやるダイエットとしては相当に危険なものだという感想を持った。本書にくどいほど書かれているが、医者のアシストなしに森永的状態の人がこの低糖質ダイエットをやるのは危険極まる。
 森永は、運動もあわせてやっているのだが、糖尿に起因する眼底出血を抱えたまま無理な運動をしていると、大出血を起こす危険がある。そのことは本書にも書いてある。
 森永は徹底して専門家の指導に従っていた。
 まずこの点は本書に何度も書かれ、巻末には専門家(医者)からの意見まで添えてある。そういうものだということをまず知っておく必要がある。

本書の楽しみ方

 その上で、健康体の人が取り組むダイエットとして、モリタクのダイエット体験を参考にし、また読み物として楽しむ、というのが本書のただしい読み方だろう。


 本書はモリタクがかつて、というかこのダイエットに取り組むまで、1日5食、コーラなどをガブのみ(清涼飲料水=砂糖水を1日5リットル)する無茶苦茶な生活を送っていたことがかなりの分量で書かれている。
 ダイエットだけを知りたい人にはこの部分は余計かもしれないが、モリタクという有名人の日常を知るには、ぼくにはむしろ興味深かった。

ぼくのダイエットと比べて

 脂質やたんぱく質の制限でなく、糖質ダイエットの仕組みは簡単に言えば次の通りである。

食べてカロリー(エネルギー)になるのは糖質、脂質、タンパク質という3大栄養素ですが、このうち血糖値を上げるのは糖質だけです。脂質やタンパク質をいくら摂っても、血糖値が上がることはありません。……糖質オフすると、肥満ホルモンとして振る舞うインスリンの過剰な分泌が抑えられます。それにより体脂肪の分解がスムーズに進み、過剰な血糖から体脂肪を蓄えるルートが遮断されるため、痩せやすくなるのです。/砂糖のように吸収が早くて血糖値が急激に上がりやすい糖質を摂りすぎると、追加分泌されたインスリンの働きで、血糖値が急激に下がります。血糖値が下がりすぎるとお腹が空きますから、間食をしたくなるというわけです。(本書kindle版No.600-609)

 ぼくがやったのはカロリー制限によるダイエットだったわけだが、思うに、ぼくのダイエットも、明らかにこの糖質ダイエットの要素が大きく働いていたと思う。ごはんやパン、果物が3食からかなりカットされるとともに、間食をしなくなったので、インスリンの過剰分泌が抑えられ、体脂肪の分解が進んだということが考えられるからである。


 とはいえ、森永もカロリー制限はしているのである。
 そもそも森永は1日5食で5000kcalもとっていたので、これを3食にして標準化したので摂取カロリーが制限されたからである。
 しかし森永はこれを「カロリー制限」とはしていない。

摂取カロリーが減るといっても標準的なレベルに近づくだけですからカロリー制限とは呼べません。(本書kindle版No.691)

 カロリー制限という看板にしたくないのは、それを聞くだけで「あ、無理」と思ってしまう人が多いからだろう。
 「病院で出るような粗食中の粗食を食わされストレスを蓄積させてリバウンドの要因を溜め込むんじゃなくて、できるだけ食べたいものを食べて、ストレスなく痩せたい」という虫が良すぎるダメ読者の気持ちにそっと寄り添うためである。

タンパク質の扱い

 3食にした上で、森永の方針は、「量を減らすよりも質を変える」(本書kindle版No.745)だ。
 森永の方針で面白かったのは、豆腐を主食にしていることであった。

痩せやすい体をつくるには、筋肉の分解を防ぐため、肉や魚、豆腐や納豆などの大豆食品などタンパク源の摂取を重視します。(本書kindle版No.833)

 やはり、筋肉の分解を防ぐためにタンパク質は意識して取らないとダメなのかと再認識させられた。

豆腐は安い、タンパク質が豊富、低糖質と3拍子揃っているうえに、味わいが淡白なのでご飯代わりになります。低糖質ダイエット中、私の主食は豆腐でした。(同前)

 加えて、

牛乳は身近なタンパク源ですが「乳糖」という糖質が多いので、低糖質ダイエットでは避けるべきです。(本書kindle版No777)

という記述があり、牛乳というものの特質を知った思いがした(単純に忌諱したわけではない)。


 結論的に言えば、量よりも質を変える=糖質を避けるという方針は、何に糖質が含まれているかを知る必要があり、少し面倒くさいという感じがした。
 むしろ、総カロリー制限をした上で、3栄養(赤・黄・緑)をバランスよく食べるという指針の方がわかりやすい気がした。わかりやすいというのは続けやすいということである。ただし、それをやっていくと自然と糖質のカットに踏み込むことになり、着地点はそれほどお互いに遠いものではなかった。

運動については?

 ところで運動はしないのか、ということを思うかもしれない。
 森永は相当慎重にではあるが、トレーナーをつけて運動もやっている。
 うーん。結局痩せるかどうかは、あまり特別な運動は関係ないのではないか。よほど目的意識的・科学的なトレーニングをする場合は別だが、素人判断でやるのは効果がないどころか危険である。食事の改革で減るダイエット量の比ではない。


 ただ、日頃から体を動かすことにしておくに越したことはない。
 それゆえに、ぼくは1駅歩くのと、職場でも家でも途中でもエレベーターは使わないようにしている。10階以上、5階以上を毎日階段で上り下りしている。「そんなこと言って、時々は使うんでしょ?」という人がいるかもしれないが、ほぼ使わない。10階以上に上がってきて忘れ物に気づき、1階に降りて、また昇るときでさえ階段である。