週刊プレイボーイで『アゲイン!!』について書いた
週刊プレイボーイ2011年10月17日号の「この漫画がパネェ!!」のコーナーで久保ミツロウ『アゲイン!!』のレビューを書いた。ずいぶん前の話ですんません。
久保ミツロウといえば『モテキ』であるが、中柴いつかを総力特集している『モテキ4.5』をそのときようやく読んだものである。
久保ミツロウ語るところの「『谷川史子さんの描く女の子を、どうにかしてヤレないかな』という酷い発想」(久保)から生じた中柴いつか。
中柴いつかについてはすでに書いた。
モテ期にかんするどうでもいいぼくの考察 久保ミツロウ『モテキ』1巻
要するに中柴いつかとはぼくにとって
友達以上恋人未満の頼めばヤラせてくれそうな女の子
であり、
最も好都合な性的身近さ、手の届きやすさ
http://www1.odn.ne.jp/kamiya-ta/moteki.html
を体現したキャラクターなのであって、それゆえに見事に萌えるわけである。そこでも書いた通り、
きわめつけは、結局藤本はフラれるものの、帰りの新幹線で3回もチューをしたり乳をもんだりするという、藤本の強引な攻勢になし崩し的に受けているあたりである。今そこに恋人ではなくただの友人として横にいる、なのに、きっぱりとした拒絶の感情をもっているのではなくて、猛烈に攻勢をかければそれに応じなくはない
http://www1.odn.ne.jp/kamiya-ta/moteki.html
という男の妄想にぴったり。
恋人でもないのに、今オトコとしての俺の欲求をすぐ横に座っていて軽く処理してくれる存在ってどんな存在だよ。携帯用の肉便器だといってもいいくらい都合がいい。
この「手軽に性的にアプローチできる」というのは、たとえば「サセ子」というようなカテゴライズとはわけがちがう。支配できるというニュアンスが濃い。
中柴いつかにはいつまでも酷い扱いを受けていてほしい
久保ミツロウは、真実一郎からのインタビューをうけて、『モテキ』本編2巻で中柴いつかについて、「爽快感ある結末」を少年誌風につけたことを語っている。好きだった男を前に、自分の気持ちをのせた歌をカラオケで歌えなかった中柴が、ゴイステの「銀河鉄道の夜」を解き放つように歌うことで、久保は中柴を作品の上で「救済」する。
インサイター:話題の漫画『モテキ』作者・久保ミツロウ氏インタビュー(前篇)
だけどですね、ぼく的にはまったくそこには興味ないんですよ。
ひどい扱いされ続ける不器用な中柴に用があるんです。
中柴はまさに『モテキ』2巻で、少女漫画のような「アップトゥデイトな恋の会話」なんて現実にはないんだと自分に言い聞かせるうちに、「男の欲望に汚されてやり捨てられる自分」という「現実」を警戒するようになる。
そして「現実」はむしろそっちの方へとドツボにハマっていく結果になっている。んでもって、読んでいる男性読者たるぼくは、中柴いつかのような女こそ「なんて都合がいいんだ!」と萌えるわけですよ。
「経理の女」
「経理の女」というのをご存知だろうか。出典忘れた。松本清張だったんじゃねーのかと思ったのだが、どうも『島耕作』みたいな話らしい。どうも弘兼憲史・矢島正雄『人間交差点』らしい。
社内で女子社員に手を出すなら、経理の女にしろ。経理の女は職業柄、全社員の中で一番口が堅い。
http://blogs.yahoo.co.jp/ykhc1999/archive/2010/4/16
社内(という身近な場所)で手を出すなら経理の女に限る。それは口が堅いからだ、というふうにそこではいわれているが、「経理の女」の昭和的イメージは、地味で無口でつき合いが悪そうな、逆に言えば男とは遊んでいなさそうな、経験がなさそうな、落としやすそうな女、というものだ。口が堅いからというよりも、そういう御しやすさが手を出しやすい理由なのだ。
ここで「経理萌え」について語っている元増田は、
服装が清楚で地味
と経理萌えの理由の一つを語っているが、
age嬢と完全に対角をなす
と述べているのは、「支配しやすいから」ということをオブラートに包んで言っているにすぎないわけである。
「痴漢」という性的妄想は、しばしば、扇情的な恰好だとされる女性たち以上に、地味でおとなしいとみなされる女性たちにむけられる。月吉ヒロキのエロ漫画『夏蟲』のような、自分の意思をきっぱりと伝えられない女子中学生をいたぶるわけである。
メガネ萌えの起源
メガネに萌えるメンタリティは、もともと「メガネのさえない女の子」「メガネをした男性経験値の低そうな女性」への萌えであったはずだ。植芝理一『ディスコミュニケーション』の戸川安里香が、当初は野暮ったいメガネと制服を着ていたことは実に正解であった。『ディスコミュニケーション』は謎めいた男子高校生・松笛篁臣が戸川を不思議な霊的世界を案内してくれる物語であるが、何も知らない戸川はいつでも松笛(=文化系男子たるぼくら)に言われるがままに導かれている。なんというコントロールしやすさ! なんという支配されやすさ!
だからである。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』に出てくる美少女、真希波・マリ・イラストリアスのようなメガネに萌えるというのは、メガネ萌えの起源から幾重にも派生したものであり、まさにメガネがフェティシズムに転化してしまった、メガネ萌えの正しくない対象に他ならない。いや、かなり好きだけどね。対象商品をコンビニで買うほどには。
最近でいえば、ねむようこ『午前3時の危険地帯』における主人公・小倉たまこの地味メガネぶりは無双である。パチンコの宣伝デザインの小さな会社に入った違和感ありまくりのたまこが、恋をする話だが、自信もなく健気なその姿に萌えるぼくはきっと、たまこに「手軽さ」を見ているのだろう。
ストーリーの展開をみていくと、たまこはそれほど御しやすい存在ではないことがわかる。男の妄想をベースには進んでいかないからであるが、その行間を読み取って萌えるのが本来の萌ってもんだ。
そして再び中柴いつかに戻ってくる。
『モテキ4.5』では、中柴の照明助手としての労働生活が多少描かれているが、その3K職場での「無性」(非「女性」化・「中性」化)っぷりがまぶしい。33ページで描写される「とびきり女度が低」い中柴の「装備」は以下のとおり。
- 髪の毛:寝グセ隠しでひとつ結び(輪ゴム)
- 猫背
- 量産型パーカー(男物)
- コンビニで買った靴下(汚れてる)
- ヒザに何箇所か打ち身の青アザあり
- 深爪でささくれてる
- Tシャツ無地
- 1980円のブラ
- ノーメイク むしろ脂浮きしている
- 最近撮影で日焼けした
※自覚する範囲の最もモテない状態
昨日なんかたらふく焼き肉食べて
ニンニク臭い気がするし
最近便秘ぎみだし
吹き出物あるし
あれ? 今朝私
顔洗ったっけ…?
なんつうか、中柴がこんなふうになっていけばいくほど、萌えるしくみだよ。朝基まさし・山田隆道『雑草女』はAD(アシスタント・ディレクター)の坂道久恵の物語であり、スペックはほとんど中柴いつかなのであるが、性的な臭いを消してしまったために、本当にただの「雑草女」になっちゃってるんだよ!
本来「AD萌え」ともいうべき、女性の臭いを自動的に消し去ってしまった人々への萌えが存在するはずなのだ。
女のとしての経験値が低いと侮れる、扱いやすく支配しやすい女としてのAD萌え。
ここまで書いてきて、結局俺の言いたかったことは、下記のスレタイ以上のものではないことに気づいた。それでアレだろ、お前らどうせ「ぼくたちのいつかちゃんを汚して喜ぶ中二病の紙屋」とかわめくんだろ。
お前らって小柄でメガネのオタクっぽい女の子好きだよね。俺でもイケるかもとか思っちゃうの?:【2ch】ニュー速VIPブログ(`・ω・´)