「マルクスブーム」が生んだもの、生んでないもの

 掲題の文章を、雑誌「季論21」(2011年冬号)に書きました。

http://www.kiron21.org/
http://www.kiron21.org/10gou%20mokuji.pdf


 以前書いた「マルクスブームは来ているか?」をタネにしつつも、

http://bisista.blogto.jp/archives/1214685.html
http://www1.odn.ne.jp/kamiya-ta/Marxboom.html

マルクス主義陣営の側がブームを本格的にするうえで「足りない」ものについて、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』やマイケル・サンデルのことなどをとりあげて論じたものです。

 「本稿の目的」として書いた部分を引用しておきます。

「ブーム」となるような潜在的エネルギーを秘めながら、それを爆発的に解放させる努力の不十分さ、さまざまな困難があるのだ。そのことを通じて、人々がマルクスに何を求めようとしているのか、それに応えきれないでいるのはなぜか、ということを考えていく


 今号は、特集2「労働と人間の再生へ」と、特集3「未来社会をどう構想するか」に関心がありました。

 前者は労働組合運動全般の役割についてですが、とりわけ全労連などの左派系労組の再生を吟味しようというものがいくつかありました。首都圏青年ユニオンの武田敦さんも書いています。

 ぼくが気になったのは、金属労研の西村直樹氏が書いている文章でした。ある地方のユニオンにいた女性が苛酷な労働の末に残業代をかちとったという「しんぶん赤旗」に載った記事をみて、西村氏が“女性がユニオンに入って1年間も無法な労働にあえいでいて、その間にユニオンは何をしていたのだ”と叱り飛ばす内容が入っています。
 もう一例をあげたうえで、それらの事例を「ものごとをほったらかすなどの荒っぽい生き方があたりまえになってしまう人間としての堕落」「現実に負けている」と痛烈に非難しています。

 77歳になる西村氏にすればこうした事例は自分が経験してきた労働運動にくらべて生温く、「憤るべき労組の怠慢」なのでしょうが、たとえば上記の例でいえば「残業するお前の能力が低い」とでも言い放ったならこれほど激烈な言葉が当てはまるのかもしれません。しかし、タイムラグがあったとはいえ、ユニオンが女性の実態に気づき、支援して、望むべき方向で解決をしているのです。

 記事を読めば、ユニオン委員長とはいっても、その女性同様の若さ他の仕事と兼業しながらの活動だと推測できます。ぼくはとても非難する気にはなれませんでした。

 ある年齢層の活動家の「きまじめ」な一面を見る思いがして、そして活動のなかでしばしばぶつかる問題として、興味深いものがありました。