なるほどですね

 本当にしょうもない雑談・雑感だが。

 福岡に来て17年が過ぎた。実家の愛知(三河地方)に大学に入るまでの18年いたから、いよいよ自分が人生で一番長く時間を過ごした土地ということになりそうである。

 昨日このようなツイートを見た。

 この話でいくつかの要素がからまってモヤるのであるが、最初に「え?」と思った要素は、若手の営業の言葉ごときで取引停止にするという点であった。

 クライアントがこの「なるほどですね」という言葉だけにキレている気がして、そんな狭量にもほどがあるクライアントは、いつ噴火するかわからないので早めに絶縁した方がいいのでは…とさえ思った。

 「『とんでもありません』とはなんだ、『とんでもない』だろ!」みたいな国語警察の相手なのかとさえ思った。

 しかし、少し思い直す。

 いやこれって短く伝えているだけで、「なるほどですね」は一つの象徴的な言葉にすぎず、実際にはその若手営業の話全体が敬語さえロクに使えず、タメ口ばっかりだったら、キレる人がいても普通じゃないでしょ? となぜか自分の中で補正した。

 この点はそれだけ。

 

 次に「なるほど」が問題なのか「なるほどですね」という言葉が問題なのかという話。

 「なるほど」は目上の人には使わない言葉ではないか、という見解はある。

「なるほど」は目上の人に対して使うと失礼にあたる言葉だからです。

 そのような見解があることは知っていたが、それでもぼくは目上の人と話をするときに平気で「なるほど」などと使う。それほど気にするようなマナーではあるまいという(根拠のない)楽観があるからである。*1

 さて、「なるほど」とは区別された「なるほどですね」である。

 ソーシャルブックマークのわりと上位にこの区別をしない人を叱っているコメントがあって、ちょっと驚いた。

取引先の若手営業マンの「なるほどですね」にキレたクライアント→後日お取引停止になった話。「何がダメなの?」「狭量過ぎない?」

「なるほどですね」の話してるのに「「なるほど」の何がダメなのか」と言ってる人が怖い

2023/07/15 14:11

b.hatena.ne.jp

 「なるほど」はOKだが、「なるほどですね」はダメ…?

 しかし、「なるほど」はよいが「なるほどですね」はダメだという理屈はどうしても思い浮かばず、「なるほど」はよく聞くが「なるほどですね」はあまり聞かないという、単なる頻度の問題としてのみ、ぼくには写った。

 このツイートを軸にtogetterがまとめられているが、その中に「福岡県民『詰んでない?』」という節がある。

togetter.com

 つまり福岡県を中心に使われる特別な用法だというのである。

 次のNHKの解説でも、ウェブアンケートが載っていて、九州・沖縄地方の人は、平均の倍近く、7割以上で「聞いたことがある」という回答をしている。

www.nhk.or.jp

 ぼくが生まれた東海地方は、逆に「聞いたことがある」は最低である。

 togetterのツイートで述べられているように福岡県民は「ビジネスで使う」という。確かに、そう思う。商談など、外部の人とのちょっと硬めの場面などで使われているイメージがある。

 しかし、それは当たり前だと思っていた。

 なぜ当たり前だと思っていたのだろう。

 それは…あらたまった商談のような機会に接したのは、人生の後半、ぼくが30代後半に福岡に来てからだろうからだ、という結論にたどり着いた。東京、愛知、京都などではそのような商談に触れる機会がなかったのだと言える。だから、違和感を持たなかったのだろう。

 「なるほどですね」という「なるほど」に「ですね」を足してしまう、その感覚が変なのだろうか。

 そういえば、福岡に来て、左翼の公式会議に出ていて、公式的な発言において「文節ごとに『ですね』を入れて喋る」という人がいて、聞いていてちょっと違和感があるというか、なんだか微笑ましかった記憶がある。(この人とは今でもお会いするが、ここまで極端に「ですね」を入れる人は他にあまり見たことがない。)

今日ですね、私たちがですね、宣伝をしていたらですね、たくさんの人がですね、ビラをですね、受け取ってくれるんですよ。それでですね、やっぱりですね、情勢が良くなっている、これは違っているんじゃないか、そう感じるんですね

 まあ、方言云々というよりもちょっと緊張してそうなっちゃうのかなとは思う。

 全然別の人で公式発言をするさいに「いわゆる」とか「つまり」を連発する人がいるし(続く言葉は全然「いわゆる」「つまり」ではない)、また別の人で、「逆にいえば」というフレーズを頻繁に入れるが全く逆に言っていないという人もいる。

 

 関係ないが、「なるほど」に「ですね」をプラスさせるという言葉の作り方をみて、思い出したのは「デースケドガー」だった。

 その昔SEOコンテストというのがあって、この世にない言葉をいかにサーチエンジンの上位にランキングさせるかを競い合う場があった。1年目は「ゴッゴル」で2年目は「デースケドガー」だった。

 この「デースケドガー」は愛知県三河地方での奇妙な言葉遣いが由来になっている。

https://w.atwiki.jp/dacekedgar

「その昔・・・といっても十数年前、私が会社に入って3年目に配属された職場の大先輩(愛知県三河地方の出身)のTELに驚きました。

○○株式会社の××ですけどがぁー」と名乗る・・・。『ですけどがぁー』って否定の否定??などと思ったものですが・・・インパクトが有って、未だにそのフレーズが耳に残っています。

もう既に、その方も退職されてしまったのですが。

そんな耳に残っているフレーズをアレンジして、デースケドガーとしてみました。なんか、ダースベイダーみたいですが・・・。」

 確かに…。確かに三河でそんなふうに言う人に会ったことがある…! とそのとき思った(数少ないが。そして三河地方以外では聞かない)。

 

  そして、このtogetterのブクマのトップコメが心にしみる。

取引先の若手営業マンの「なるほどですね」にキレたクライアント→後日お取引停止になった話。「何がダメなの?」「狭量過ぎない?」

彼女のあえぎ声が「なるほど〜!」なのが困る、という人生相談を思い出した。

2023/07/15 15:12

b.hatena.ne.jp

 

 

 

*1:例えば小学館デジタル大辞泉』では「相手の言葉に対して、その通りであると同意する気持ちを表す」という語義を説明し、その用例として「―。おっしゃる通りですね」をあげている。完全に目上に使ってるだろ。