イララモモイ「推しという免罪符」

 バイト先の同世代男性(郡山くん)に、女性である主人公(新名栞)が恋愛感情とは言い切れないが、すっごいライトな性的な関心をもっていて、そのことをバイト先の女性たちとの間だけで会話する際に「推し」という言葉で表現しているという設定。

 

 素敵な彼氏もいる主人公・新名は心の中で

あくまで目の保養的な存在で

決して付き合いたいとか恋愛感情はないんですけどね

 と自分に言い訳をする。

 「推し」というカテゴリーにしてしまうと恋愛感情が混入していてもわからなくなってしまう。このワードで同性仲間の間でだけ自由闊達に喋れるように共有化できてしまうのである。

 しかし、「推し」だからいいだろうということで恋愛感情要素が不透明になってしまうのは、新名自身もそうであって、4/7あたりの、彼氏とテレビを見ている最中に「郡山」出身の歌手を思わず写真に撮って郡山くんのラインに送ってしまい、激しい葛藤と、妄想が広がってしまうくだりが悶絶するほどいい

 八重歯の郡山くんのビジュアルも中性っぽくて、「萌える」。いや、それこそ、ぼく自身が郡山くんを見る目の中に性的要素が入っていると思う。

 

 ぼくはラインとかメールとか個別会話とかを、「馴れ合い」モード異性とやりとりする際に、相手が同性代くらいの誰であったとしても、どうしてもそこに親密な空気が発生しているように思えて、「この親密感を楽しんでると相手に思われてないか?」と不安になり(しかし他方で本当にウキウキしている自分もいるのだが)耐えきれずに早々に打ち切ってしまう。

 

 だから新名のこのどうでもいいクソ葛藤がすごくよくわかってしまう。

 郡山くん側から見た作品もある。

郡山くん視点の推しの話www.pixiv.net

 そしてやはり郡山くん視点で見るとやっぱり新名は謎行動をやっている人で「ちょっとこわい」んだな…と、あらためて自分のキモさを自覚する。