OLの妄想というのが、「仕事のできるクールな男の人との恋愛と結婚」というなら、『クローバー』はまさにその妄想の核心を射ているといえる。
とくにとりえもない、ドジでマヌケな「女の子」がこういう男性に射止められるという構図は、少女マンガそのものだ。それがそのまま年をとってしまったということだ。
とくに、今月発売の14巻は、「花嫁修行」をするという設定で、主人公のOL沙耶が、婚約者でエリート社員の柘植の家に修行に出向くという設定である。「まー、君も大変だろうけど うちの人間になるためにみんなやってきたことだから しっかり頑張ってくれよ」などと柘植がいう。
「うちの人間になる」だと!?
「時代錯誤」と柘植自身がのべているからといって免罪符にはならない。なんという時代錯誤!
会話もセックスもすべて男性上位が満ち満ちている。
「会社ってこんな世界なんか~」とげんなりする。
そして女性側の(一部の)勝手な男性像も鼻につく。
憧憬的に描かれる男性像は、すべてクールで仕事ができるが、実はシャイ、というパターンで決められている。柘植しかり、冒頭の滝沢しかりである。
男性マンガでの勝手な女性の理想化と見比べると、そういう男女が一緒になるということは不幸だのう、と高見の見物を決め込みたくなる。
それでも14巻まで金を払って買いつづけているのは、OLの側の描写が非常にリアルだからだろう。
食堂でしている会話から妄想、行動パターンにいたるまで、実世界ののぞいているような面白さがある。
OL自身が、こういうマンガをどのような視線で見ているのかをきいてみたいところである。