連れあいから、「あんたは女性に幻想をもっている」と言われる。女性を神聖視したり、崇拝視したり(転じて蔑視したり)するというのだ。昔からどうも抜け切らない。
はじめて、女性が自分とは別の生き物だということをマンガのうえで教えてくれたのは、高校のときに読んだ石坂啓『安穏族』だった。セックスにもとめるものが、女性と男性でまったくちがうということを知ったこと自体が当時は衝撃だった。
あまり例話をリアルにかくと、品がなくなってしまうのでかけないけど、安彦麻理絵のマンガは、女性に対する幻想をいっさい破壊する。
セックスや、コンプレックス、自尊や自虐にいたるまで、容赦がない。精神科医の香山リカは、しかし、そのなかに「痴態の裏にある微妙な気持ち」まで表現されているんだといっているんだが。
作者自身が「みにくい顔を描くのが好き」といって、自分自身がじっさいにみにくい顔を鏡の前でしてみて、それがうまく描けた時には爽快感を得るのだそうであるが、美人を一方で描きながら、他方でこれでもかというくらいみにくい顔を描き続ける。
それが嫌味な攻撃にならないのは、多分に自虐や自嘲が入っているからで、この自省感がぼくには気持ちいい。
(秋田書店)
採点72点/100
年配者でも楽しめる度★☆☆☆☆
2003年 2月 1日 (土)記