『このマンガがすごい! 2023』(宝島社)で今年も「総勢45名 各界のマンガ好きが選ぶ このマンガがすごい! オンナ編」に回答させていただきました。
去年はぼくが選んだ5作品は1つとして20位にランクインしませんでした。
ところが今年はトップに選んだものを除いて、4作品がベスト10に入り、3作品がベスト5にまで入りました。
『このマンガがすごい!』のムックが復刊してからずっと参加させてもらっていますが、40代の途中くらいまでは「みんなの知らないこんな作品を紹介しますよ」的な意識がまさっていて、あまりに上位にランクインしないことがなんだか愉快でした。
しかし、50代前後からは自分のセンサーに不安を覚えるようになっていて、あまりに素っ頓狂なものを選ぶのもどうだろうかという躊躇が生まれるようになりました。もちろん、そういう意識は「多少」であって、去年のような結果であったとしても、「俺はこれが面白かったんだからしょうがねえじゃねえか」と開き直っていたわけではありますが。
まあ、それでもちょっとは嬉しい気持ちになるわけですよ。
しかしこの本全体を見てみると、そういう「トレンド」のセンサーは書店員に期待されているようで、ぼくを含めた「各界」の人たちにはやはり「こんな面白い本もあるよ」と紹介してもらう機能が期待されているような気がします。いや、別にその期待に無理に応える必要はないわけですがね。
ところで、この「オトコ編」「オンナ編」という分け方について、毎年議論があります。
今年も議論がされていました。
ジェンダー的な観点からの違和感もあるでしょうが、「オンナ編」にアンケート回答する方から見ると、「この作品が『オトコ編』に区分されていて推せない」というのがしばしば起きて、どうにも割り切れなかったのです。
しかし運用が大きく変わり、「オンナ編」でも「オトコ編」でも選べる、という感じに、かなり自由になりました。例えば『光が死んだ夏』『星旅少年』などはどちらでも選ばれています。編集部が相当に苦労してきたことが伺い知れます。
もちろん、そのために票が割れてしまったりした作品もあるようです。
(オンナ編でのランクインでしたが、オトコ編と票が割れてて、一票差だったようです。正直、性で分けられること自体に少し抵抗がありますが、枠の見直しの声も以前からあるようですし、今後は変わっていくかもしれないですね)
— 坂月さかな (@sakatsuki_fish) 2022年12月12日
ただ、togetterのコメント欄で
「オトコ編」「オンナ編」の区分は掲載紙(web)で分けてるはず。「今どきオトコ/オンナって区分する意味あんの?」って議論も毎年あるが、分けないとランキングが少年誌で占められて少女マンガが埋もれてしまうので便宜上こういう区分になってる。
とあり、これがはてブのトップコメ*1でも紹介されていたように、良い効果を生んでいます。これは大変重要なことだったと思います。
中3の娘が見本誌が届くなりひったくるようにして読んでいましたが、「オトコ編」には「やっぱりこれが1位」「え、これオトコ編なの!?」など激しく反応していたのに、「オンナ編」の上位の多くは「知らない」と驚いていました。
「オンナ編」という枠づくりをすることで、「数」の作用で良作・佳作が埋もれてしまうのを防ぐという文化保護的な、そして、実際に良作・佳作を世に知らせるという、いい役割を果たしていることを目の当たりにした感じです。
「アファーマティブ・アクション」がもし良い役割を発揮できるとすれば、こんな感じなのかなと少し想像しました。
編集部が区分けの存続にずっとこだわっているのはおそらくこういう理由からなのでしょう。
*1:2022年12月14日時点