自公政権の高支持率は野党が連立政権としての協議に入らないからではないか

安倍前首相の考えるレガシーは経済

 20日付の読売に安倍前首相のインタビューが載った。

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 そこで彼は自分の政権のレガシーはなんだと思うか聞かれ、こう述べている。

後世に「安倍政権の時は良かった」と生活実感として言ってもらえれば、一番うれしい。2012年の首相就任時は、「日本は下り坂になっていくのではないか」という時だった。それを「まだまだ坂の上の雲を見つめることができる」という時代に変えることができたのではないか。

 具体的に、彼はアベノミクスでデフレに立ち向かい、「400万人超の雇用を作った」ことを挙げた。また、経済を好調にしたことで消費税を2回引き上げる体力を作り、幼児教育の無償化の財源を作るという好循環を果たしたとした。これが彼の考える、「安倍政権のレガシー」というストーリーなのである。

 聞き手は「政権のレガシーを何と考えるか」と聞いていて「経済分野で」などの限定を設けていない。各種の世論調査ではどこも安倍政権の政策の中では「安保・外交」が「評価する」のトップに来ていたのであるが(経済はだいたい2番目)、彼は自分が舵をとった政治全体の中で、安保でも外交でもなく、経済が自分の一番の「売り」「セールスポイント」だと考えていたことがわかり、興味深かった。もちろん、それはある程度は予想されたことだったのだが、彼自身の口から直接の質問の答えとして述べられ、確認されたことが大事なのである。そして、それはそのまま自公政権の「売り」「セールスポイント」でもあるのだろう。

 

 そして菅政権の支持率も74%と高い。

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 自民党の支持率は47%にも達し、他方で立憲民主党は合流前と変わらない4%である。

 ある野党の国会議員が行う街頭演説を聞きに行った時、その国会議員は「菅政権が支持率が高いのは安倍政権が『やっと終わった』という国民からの意思表示だ」という趣旨のことを訴えていた。ある面でそれは当たっていなくもない。長年続いた安倍政権からの刷新感があるとは思うのだが、しかし、世論調査で最終的に安倍政権を評価する声が7割もあるのだから、安倍政権が嫌で嫌でたまらずに「ようやく新しい内閣になった!」というようなニュアンスではないはずだ。

 7割の国民が、安倍政権を評価し、それを継承するとした菅政権を評価しているのである。

 

安倍・菅政権の高支持率はオルタナティブがないから

 ぼくは安倍政権とそれを継承する政権(菅政権)を支持していない。早くそれらを倒すべきだと思っている。

 安倍自身が語るストーリーをそのまま信じる必要はないし、国民が丸ごとそれを受け入れているとも思わない。「長期的に安定し、経済も好調だった」というなんとなしの雰囲気を受け入れているのだろう。そこはあまり細かく考えず、ざっくりとらえた方がより正確になる。

 安倍政権にいろんな問題が生じても、野党のターンにならないのは、ひとえにオルタナティブ、代わりになるものが示されていないからである。

 もちろん個々の野党はそれなりに示しているし、国会でも政策提起・政策論議をやっている。「野党はモリカケ系の追及ばかりで、国会では全く政策論議をしていない」というよくある議論は事実として間違っている。

 しかし、野党は果たして単独で政権を取るつもりなのか、それとも連立・連合で政権を取るつもりなのか。これまでの国政選挙では選挙協力し、政策の合意までして有権者に示しているのだから、常識的に考えれば連立して政権を取るつもりなのだろうと思える。だとすればいくら個々の政党が政策を示したとしても、政権としてどこまで実現を約束してもらえるものなのかはさっぱり見えない。「消費税を減税する」という政策一つ取ってみても、それは連立した政権の合意になるのか・ならないのか。原発はどうするのか。廃止するのか、依存度を減らして動かすのか。*1ということは、やはり各政党の政策・構想ではなく、連立政権としての政策・構想が示されなくてはならない。

 だが、実際には連立しての政権構想は示されていない。それどころか、連立して政権をつくるという合意さえない。オルタナティブ——代わりになるものが示されていなければ、有権者は託しようがないではないか。そもそも「別のものがある」という選択肢にすらならない

 ある商店で売ってるジャムがあって、それがあまり美味しくなくても、横の別の商店ではまだイチゴと砂糖しか置いてないし、ましてやこれからジャムを作るのか作らないのかわからないし、というのでは、商品としての選択肢にならないのと同じである。消費者は「横の商店に別のジャムがある」とすら思わないだろう。

 菅政権を支持する最大理由が「他によい人がいない」30%というのもそれを裏付ける。裏返せば、自公政権の高支持率が続くのは、野党が連立政権としての協議に入らず、ずーっとオルタナティブが示されてこないからではないか、と思う。

 

 このことは、根本的には以前書いた状況と基本的に変わっていない。

kamiyakenkyujo.hatenablog.com

 以前、共産党志位和夫も似たようなことを言っていた。

野党の側にも努力すべき問題があると思います。日本経済新聞が選挙後行った世論調査によりますと……「安倍内閣を支持しない」と答えている人々のなかで、「政治や暮らしが変わると思えない」という回答の比重が高く、トップとなっていることです。すなわち、安倍内閣に批判や不信をもっている人々のなかでも、一票を投じても「変わると思えない」という思いから、棄権にとどまった人々が多数いる。この事実は、私たち野党にも問題を突きつけているのではないでしょうか。/こうした状況を前向きに打開するうえでも、私は、野党共闘がいま、「政治を変える」という「本気度」が……国民のみなさんに伝わるためには、安倍政権に代わる野党としての政権構想を国民に提示することが不可欠ではないでしょうか(大きな拍手)。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2019-08-10/2019081009_01_0.html

 

 

早く連立政権の協議をしろ

 しかし、政権が変わる・変わったこのタイミングで、野党にいよいよそれが必要なのだ。つまり、連立政権の合意へと踏み込み、実際にどんな政策にするのかという協議を始めるということである。

 もうこれに尽きる。国民がアホだとか、なんでこんなに安倍・菅の支持率が高いとか、そんなことを愚痴ったり「分析」したりする前に、まず連立政権の協議に入ることだ。それをしないうちは土俵にさえ上がったことにもならない。

 特に、その柱は経済となるだろう。安倍や自民・公明がレガシーだと思い、 それを売り・セールスポイントにしている部分にはっきりと斬り込めるならオルタナティブになりうる。

 消費税減税はその一つの大事な旗印になる。

また、枝野氏から消費税の減税や一時的に税率をゼロにすることなど踏み込んだ発言があったことについて志位氏は、日本共産党が消費税廃止を一貫した目標とし緊急に5%への減税を求めており、他の野党からも「消費税減税・ゼロ」の方向が出ていることを歓迎したいと表明。「消費税減税を野党共闘の旗印に掲げ、実現を目指していきたい」と強調しました。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2020-09-11/2020091101_03_1.html

 しかし、それを単発の政策スローガンではなく、体系的な経済政策として仕上げ、さらにそれを国民向けにわかりやすいパッケージとして示すまでに練り上げられねばならない。それが安倍の述べた「経済の好循環」のストーリーよりも説得力を持つかどうかで試されるのだから。

 国民民主党に残った前原誠司は「共産党選挙協力する政党に加わることは、現実的な外交・安全保障、憲法論議を求める私の考えとは異なる」と述べている。前原は孤立しつつあると言われるが、前原が言わなくてもこの種のことは誰かが言っている。例えば連合の一部労組(UAゼンセン)だ。

 「現実的な外交・安保政策、憲法論議」を求めるなら求めるでいいんだけど、だったら連立政権協議に入って、「現実的な外交・安全保障、憲法論議」とやらを出してみればいいのではなかろうか。

 なるほど経済だけでなく外交・安保政策は政権を握るものにとって重要な柱だ。

kamiyakenkyujo.hatenablog.com

 共産党は連立政権では自衛隊の運用も、安保条約の発動も認めるといっているんけども、それだけでは連立政権の政策にはならない。

 むしろ国民民主党や前原は、「リベラル保守」の真骨頂と思って、その政策提起をすればいい。それで国民にも問うし、他の党にも問うのだ。共産党が同意すれば前原の念願は叶うわけだし、もしそれで共産党が孤立して出ていくならそれもまた前原の思惑通りだろう。

 連立政権の政策協議は、それぞれの党が政策を持ち寄り、妥協し、合意する場である。それぞれが「これは譲れない」と思って臨むわけで、一種の真剣勝負のような側面がある。共産党はぜひやろうと言っている。前原や国民民主党に限らず、他の党もやればいいではないか。

政策を置き去りにした枠組み論は不毛です。政策に主体性をもち、有権者の信頼を勝ち取ることが私たちの最重要課題です。枠組み論ありきでは議論が逆立ちしてしまう。

 誰あろう、これは前原自身の言葉である。「非共産」という「枠組みありき」でないなら、まずは政策に主体性を持ってはどうか。*2

 

 ただし、(1)このような協議が始まり、(2)合意された政策・構想として形になり、(3)それが国民に知られ、(4)さらに国民から信用してもらう、というプロセスを踏むにはかなり時間がかかる。それだけに、解散・総選挙は早ければ11月にあるかもしれないと言われているから、もうあまり時間は残されていない。本当に早く政権協議に入らなければ(少なくとも総選挙には)間に合わない。今始めるべきなのだ。

 

 共産党によれば、このような協議は前進しているようなのだが、別にぼくが国会にいるわけでもないし、枝野や志位に会ったわけでもないので、本当のところはよくわからない。

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 とにかく目に見える形で始まったと言えるものを示してほしい。

 野党が連立の政権協議に入らず、現実的なオルタナティブを示さないうちは、自公政権の高支持率は続く可能性が高い。

 

余談

 このように書いたからと言って、モリカケサクラに見られるような菅・自公政権の問題点の追及が意味がないとか、そんなことは毫も思わない。それは政権を監視する民主主義の大事な機能であり、絶対不可欠のものである。また、そこで明らかになった問題は自分たちが政権を担った時に解決する課題として浮かび上がってくる。どんどんやるべきだ。

 しかし、追及だけでは国民の支持が野党にこないのも事実で、国会活動の話ではなく、どうしたら支持を得られるかを考えた場合に、追及と同時に、連立政権の合意と構想の具体化がどうしても必要なのである。両方やれということだ。

*1:もちろん個々の政党の政策としては意味がある。政権を取ろうが取るまいが、その実現のために国会内外で活動していくのだから、仮に万年野党であっても、長年の働きかけで与党側がそれを取り入れていけばいいからである。

*2:ちなみに野党はすでにこれまでの選挙で政策的な合意はいくつもしている。また、間にいる市民連合と結んだ政策合意もある。だから、野党の連立ということ自体は枠組みありきではなく、すでにある程度の政策の方向性の共有があると言える。しかし、政権の合意にはなっていないのである。