拙著『“町内会”は義務ですか?』(小学館新書)が増刷(3刷)となった。書店のみなさんやお読みいただいた方々に、深く感謝する次第である。
ところで、ブログのコメント欄に次のような投稿があった。興味深いのでそのまま転載しておく。
入居して1年足らずで、輪番制のもとに行われたくじ引きで自治会長に
引き受けたからには、地域に貢献したいという思いもありつつも、次の方には負担のない形の自治会を形成したいと考え、本書を手に取りました。
まさか、如何に上手に自治会を解体するかというアンチ本だとは・・ 筆者様にはそのような考えは無いのかもしれないが、肯定しつつも否定するという本書の手法は巧みに自治会に対するアンチ意識を誘導するものです。
障害あり、激務の中間管理職、家には乳児と幼児 そんな状態で自治会長を引き受けた私ですが、ハンディを活かして上部の連合会とのしがらみを極力排除し、自治会のメリットを前面に押し出し加入率ほぼ100%の自治会をやっています。
先ず筆者様が一定の成功と言える緩い自治会を作り上げることが出来たのは、管理組合のある団地という環境だからこそではないでしょうか?
戸建住宅の立ち並ぶ環境では、町ぐるみでのフリーライダーはデメリットが大きく発生することも、もっと記述した上で、メリットとデメリットを対等に持ち上げて、自治会の必要性を読者に判断させるべきだと思います。
活動が行政の下請けのようなものが入るのに、何がいけないのか不明です。 皆が公平であるという前提がなければ軋轢が生まれて崩壊が始まるのは当然です。
会費不要という甘い汁で他力本願の団体を押し通してしまうのは、しがらみだらけの団体の対極にあるように見えますが、結果一部の責任感のある人間に面倒を押し付けるという点では、規模が小さくなっただけでやってることは同じです。
昨今、自治会の嫌な部分ばかりクローズアップされますが、それは面倒なしがらみ部分に対する思いが結局大多数の人で一致しており、メリットの部分が周知されていないからだと思います。
頑張って運営をしている人はメリットを理解しているからこそだと思います。
嫌な部分に対する意見を総意をまとめるのは簡単です。
その上で不要と思われる活動を廃しメリットを周知させれば、良いのではないでしょうか?
しがらみなし、会費あり、全員参加
成立出来ます。
http://d.hatena.ne.jp/kamiyakenkyujo/20141015/1413298801#c
偶然なのか、同じ人なのかわからないけども、ブログにコメントがあったのと同じ4月10日にアマゾンのカスタマーズレビューにも「フリーライダー推奨本」だとするレビューが投稿された。こちらも興味深いのでぜひ見てほしい。
ぼくは、本の中でも
多くの方のご意見やご批判を歓迎するものです。
としているので、まさに歓迎する。ここに書かれていることのほとんどは本の中でふれていると思うので、再論することはあえてしない。*1
ぼくの娘が通う小学校のPTAの役員と話をしたとき、その役員は昨年の春頃に出た毎日新聞夕刊の記事「PTA役員決めは罰ゲーム? やらない人はトイレ掃除も」(2014年4月21日付)などをあげて「こういう取り上げ方は困るんですよね」と苦笑していた。
この役員の方は、どちらかといえば「改革」に熱心な人で、負担が過重だった従来のあり方をリストラして、身軽な活動に変えてきた。
しかしその彼がなぜ嘆くのかといえば、こういう見出しや記事のトーンは、PTA活動に否定的な印象を先行させてしまい、ますますPTAから保護者を遠ざけてしまう、からなのだという。
たぶん、こうした人たちが望んでいるのは大塚玲子『PTAをけっこうラクにたのしくする本』のようなものだろう。大塚の本は主題がPTAの負担軽減・リストラであるが、それは負担軽減のための負担軽減、リストラのためのリストラではなく、PTAが必要とする目的を再確認・共有したうえで、その目的達成のためにはいろいろムダな部分があるよね、不要なルーティーンは見直そうぜ、ということなのだ。そして、PTAそのものをラジカルに省力化してしまう案も同書の中に出て来るが、それはあくまで「一案」にすぎない。
これにたいして、ぼくの『“町内会”は義務ですか?』は、改革のための知恵や小ネタも用意しているけども、どうしても印象の中心は「義務なし・会費なし・報酬なし」というラジカルな新自治会像の方だ。「解体」論にみえてしまう人がいるのも、まあ仕方がないかもしれない。
*1:ひとことだけ事実関係について言っておくと、ぼくの住んでいるのは賃貸のUR団地なので「管理組合」は存在しない。ただ、コメントした人の言いたいことは、「管理組合」の有無そのものではなくて、団地であれば管理組合があるか、大家=管理者がいて、その分、共同業務が少ないはずではないかという意味であろう。その点についても拙著の中でふれている。