赤旗で短期連載しますよ

 みなさーん、「しんぶん赤旗」でのぼくの連載が始まりましたよ。「こんなマンガもあるんですか」という連載タイトルで、2011年9月9日付から数回だけの短期連載ですが、必読ですよ。必読。


 前回5年続いた連載が終わって3年で復帰ですよ。
 すごいですね。
 偉業ですよ、これは。
 大リーグとかで、一時契約をうちきられながら、再びマウンドに上がった、みたいな立志伝中の人物といえましょう。
 不死鳥、と呼んでくれても一向にぼくのほうは構いません。40代で復帰したクルム伊達公子にならって、「クルム」、などという愛称も素晴らしいと思います。


 まーた紙屋がバカを言って……と白い目で見ているお前らに、いかにこの俺様の連載が期待されているかということについて、争い難い客観的証拠、意識から独立した物質世界の厳然たるエビデンスをお届けしたいと思います。


 ぼくが前に連載していたとき、「しんぶん赤旗」は月に2900円でした。
 それが…ぼくの連載が始まった9月から、いいですか、ここ大事ですからね、この9月からなんと「赤旗」は3400円になっているのです!



 みなさん。
 あなたがスーパーに言ったとしましょう。
 高級牛肉がそこに売られていたとします。
 同じグラムで2900円の牛肉と3400円の牛肉。
 どちらが価値が高いと思いますか?
 「お金は私が払うから、あなた好きな方選びなさい」と言われて、あなたはどちらを選びますか?
 答えは言うまでもありませんよね。3400円の方です。
 ここで2900円の方を選ぶというのは、ひとことで申し上げて「馬鹿」、あるいは、わざとデタラメを答えて教師を困らせようとする小学4年生のクソ男子レベルの悪意の持主と言っても過言ではありません。
 え? 相手に配慮して安い方を買う? いや、今お前にそういう答え求めてないから。
 なぜ世の中の99.72%と推計される人々は、このような場合、3400円の牛肉を無条件で選ぶのか。
 3400円の方が、経済的な価値が高いからです。そこに手間暇がかけられている、あるいは社会的に多くの人々が欲している――だからこそ3400円の方が高価値なのです。


 数学的に表せば、
 2900 < 3400
 とでもなりましょうか。


 つまり、ぼくの記事の価値は、前回連載時から1.172倍、117%になっているということが客観的な、動かし難いデータで表されていることは、もはや火を見るより明らかだと申せます。
 このことをわかりやすくグラフにしてみました。
 一目瞭然なのではないかと思います。


 それだけではありません。
 この3年で、消費者物価指数はほとんど変化していません。物価が変わっていないのに、ぼくの書いた文章が掲載された商品だけは価値が高騰しているというわけです。凄い話ですよね。あまりの凄さに、小便をちびって、もうどうにでもして、と体を投げ出す。それくらい凄絶な話です。
 最近日本の円高は本当に円高なのかどうかを調べる指標として、ビッグマックの価格との比較をしてるのを見かけますよね。それで比較してもいいです。「ビッグマック指数」とかいうともう専門家っぽいというか、情強決定、みたいな響きのあるアレです。ビッグマックは2008年で267円、2011年は200円です(2-3月現在。え、9月時点で比較すべきだって? しーっ)。200÷267=0.749ですね。
 

 さらにですよ。さらに。
 前回は800字という依頼でしたが、今回は1300字。
 たとえばですね、「文藝春秋」に数万字の作品が一挙掲載される作家と、ぼくみたいに書評レビューが数百字ちょこちょこっと載るライターと、雑誌としてはどちらに重きを置いていると思いますか? え、平等? きれいごとを言ってはいけません。ホンネでいきましょうやホンネで。ぶっちゃけ。腹を割って。裸のつきあいで。

 そう。
 前者であることは、賢明な読者のみなさんは、もうとっくにお気づきのはず。これは掲載字数と相関関係があることもはっきりしています。


800 < 1300


 この厳然たる数字の事実。こわいですねー、数字は。

 だから、二つの時期におけるぼくの連載の社会的価値は次のような数式で簡単に求められると思います。
 最初の時期の掲載紙の価格(円)をP1、新しい掲載の時期の価格をP2、最初の時期のビッグマックの価格(円)をB1、新しい掲載の時期のビッグマックの価格をB2、最初の時期の作品の字数(字)をL1、新しい掲載の時期の字数をL2とします。

 これを専門用語で「評論価値指数」(review value index)といいます。専門家の間では「アール・ブイ・アイ」と呼ばれています。学会とかでですよ、発表が終わった後、「たいへんいい報告でした。ところで、アール・ブイ・アイのデータはどうなっているんでしょうか? あ、簡易な数値で結構です」とか使うと完全に「ツウ」ですね。

(1.172/0.749)×1.625=2.5427


 つまりぼくの価値は前回比2.5倍なんですよ! アール・ブイ・アイでは! これね、もうホント客観的な数字。


 それでこのすばらしい連載なんですけど、ホントに短期です。一応毎週金曜日に掲載されますが、あっという間に終わります。肝心の中身はといいますと、「こんなマンガもあるんですか」という連載タイトルのとおり、ふだんあまりマンガを読んでいないような人たちにむけて、「こういうジャンルのマンガがあるんですよ」と啓蒙しつつ、1〜2冊作品紹介しながら、そこに反映された世相を読むという、誰もが感動し、「全米が泣いた」とコメントせざるをえないコーナーです。


 今回は、東村アキコママはテンパリスト』(集英社)を紹介しながら育児エッセイコミックについて書いています。


 ほっといても「金曜日に届くとひったくるように赤旗をとり、まっさきに開くのがこのコーナーです」「もっと連載を続けてほしい」「なぜこんなに早く打ち切るのか。もう赤旗はとらない」というメールや電話が殺到すると思いますが、一応その趣旨のメールを出すように、関係者のみなさまにおかれましてはご高配いただきますよう略儀ながらお願い申し上げます。
 いえ、「やらせメール」とか。そんな。そんなんじゃありませんよ。あくまで、その自主的な。ええ。その方のご判断といいますか。もう自発的な。ヴォランティーアな。はい。