「けいおん!」と少年・少女マンガの情報量・テンポ

ちなみに、ぼくの前にアップされていたのは円堂都司昭「『けいおん!』に勝てない日本のロック」でした。
http://bisista.blogto.jp/archives/1299201.html

まったく偶然なんですが、ここ数日、「けいおん!」の1期目をずっと視ていました。
円堂は、

90年代まで、音楽は時代の先端をとらえているという感覚があったが、ゼロ年代以降はかつてのテクノやヒップホップほど目新しいムーヴメントはなく、そのぶん打ち込みではない、バンドという伝統的な形式が見直された面はあっただろう。その過程で音楽に先端性を求めるよりも、今ここでのリア充的な心地よさを求める傾向が強まったように感じられる。

と書いていますが、円堂自身が自分の感性が時代の先端をとらえられなくなったことが「音楽は時代の先端をとらえているという感覚」が失われた理由ではないのか、ということについて考えてみたことはないのでしょうか。うぉ、なんかケンカ売ってる文章みたいになったな……。よく知りもしないのに。

けいおん! 1 (初回限定生産) [Blu-ray]いやいや。というのは、ぼく自身が少年マンガや少女マンガを読むのがだんだんキツくなってきていて、それは加齢と自分の感性の保守化のせいじゃないのかと思うからなのです。かつて伊藤剛が「マンガはつまらなくなった」的言説を検討して、そういうのをマンガ一般のせいにしたり、世代間ギャップのせいにするのはよくないよ、マンガの構造の変化を見ようね、と言っていたのですが、まあその種の自己反省は誰にでも要るんじゃないかって話なんです。

んで、「けいおん!」を視ていて思ったのは、けっこうイケるということでした。クサい話や単純な話も少なくないのに、最終回まできちんと楽しめるんです。他方で、いま尾田栄一郎ONE PIECE』を全巻精読しているのですが、マンガでよむと非常にキツい。主人公の仲間の一人で、主要キャラとなるサンジが出立をするシーンは名シーンと言われていますが、全然ダメでしたね。ひょっとしたら『ONE PIECE』をアニメや映画で観直したら、まったくちがった感覚で視られるのかもしれません。

つまり、アニメがぼくに与える情報量やテンポというものがマンガとはまったく違っている、という基本的な事実だと思うんです。だから、少年マンガがキツいな、少女マンガが読めないな、と思ったら、一度アニメを視てみる(アニメ化されていれば、ですけど)という方法があるのかなと思ったのです。

ただ、たとえば「けいおん!」の原作マンガへの評価というのは、アニメにくらべてひどく低いのですが、
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こういう傾向というのはたとえば「らき☆すた」なんかでも同じなわけです。
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まあ、マンガとアニメの差みたいな話じゃなくて、アニメになった場合のスタッフの力がすごい、というだけの話かもしれません。いずれにせよ、その間にある差異がどうして生まれるのかナゾのままですし、そもそもマンガで面白くなかった作品はアニメの方が楽しめるというのは普遍的な現象なのかどうかわからないのですが。