2018-01-01から1年間の記事一覧

ビルトインされたポリコレ棒 『ゴールデンカムイ』をめぐって

これなんだけどね。「ゴールデンカムイは少女が性的搾取されないから良い!」という持ち上げ方に疑問を感じる人たち - Togetter 明治時代に北海道で隠されたとされる金塊を争奪する物語、野田サトルのマンガ『ゴールデンカムイ』について。ヒロインのアシㇼ…

伊図透『銃座のウルナ』1〜4

架空の戦役とその退役後を描く伊図透『銃座のウルナ』を今日4巻まで読んだ。 本作はまだ結末を見ていない。ゆえに、作品全体をどうこう言うことは今の段階ではできない。 だけど、結末がどうなろうとも、4巻までで、引き込まれるように読んだことは事実。 …

長谷川摂子『子どもたちと絵本』・せなけいこ『ねないこだれだ』

「マンガをどう語りたいか」という問題についていえば、ぼくはまず文体や語り口へのあこがれから入っている。 よくこのブログで書いているように「関川夏央のように書きてえ」というのが出発点なんだけど、子どもを育てて絵本をいっしょに読むうちに、長谷川…

熊代亨『「若者」をやめて「大人」を始める』

これは俺のことが書いてある本じゃないのか? と思った。 「若者」のやめどきを見失い、いつまでもオタクライフの「最前線」にいるようなつもりになって、そのステージから降りられず、とはいえ実態としてはとっくにそんな第一線からはおいてけぼりをくって…

とよ田みのる『金剛寺さんは面倒臭い』1

どうしても『ラブロマ』と比べてしまった。 高校生の初々しい、しかし変なカップル、主に男子の側のエキセントリックさに焦点をあてて書かれた、とよ田の出世作。 今から自分が15年も前に書いたレビューを読み直しながら、『金剛寺さんは面倒臭い』は、最初…

娘と何歳まで一緒に風呂に入るか

親子混浴はいつまで許されるのか。 異性の親子、特に父親と娘という関係では非常にデリケートな問題だ。 すでにぼくの家ではこのテーマは過去の問題となっている。 なっているので、書く。 アメリカなどでは混浴自体が問題視され、別文化であるアジア移民系…

五味洋治『朝鮮戦争は、なぜ終わらないのか』

ちょうど一年前くらいに書いた記事の通りで、今ぼくが自分の中で一番大きな心配をしているのが米朝の衝突である。そのことはこの1年間変わらなかった。*1http://d.hatena.ne.jp/kamiyakenkyujo/20170417/1492360721 九州に住んでいる、そして日米安保条約下…

『日本軍兵士』と2つのマンガ

『日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実』(中公新書)を書いた吉田裕(一橋大学教授)が、「前衛」2018年4月号で同著について語っている。吉田裕『日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実』 - 紙屋研究所 その中に、マンガへの言及が2ヶ所ある。 一つは、武…

宇野常寛『リトル・ピープルの時代』

宇野常寛『リトル・ピープルの時代』を読み返す機会があった。 宇野は『ゼロ年代の想像力』でもそうだったけど、「大きな物語」が失効した、というストーリーにこだわるので、村上春樹が「壁と卵」の例えを持ち出して悪と正義に世界を截然と分けるようなやり…

関川夏央の予言は的中したのか

第一の見開きは突進する将兵の絵柄で、〈合戦は……〉と文字が添えられている。 第二の見開きには〈終わった……〉と文字があって、突進したはずの将兵がこぞって「ずっこけ」ている。 関川夏央『知識的大衆諸君、これもマンガだ!』(文春文庫)に出てくるみな…

『ブータンの瘋狂聖 ドゥクパ・クンレー伝』『一休伝』

100%興味本位で読んでしまった 『ブータンの瘋狂聖 ドゥクパ・クンレー伝』は、中世のチベット・ブータンの仏教僧であったドゥクパ・クンレーの伝記である。 ドゥクパ・クンレー(一四五五−一五二九)は、チベット、ブータンを中心に活躍した型破りの遊行僧…

コージィ城倉・ちばあきお『プレイボール2』

ちばあきお『プレイボール』を復活させた、コージィ城倉の『プレイボール2』。 毎巻楽しみに読んでいる。 Amazonのカスタマーズレビューを見ると、1巻が星4つで52レビュー、2巻が星3つで35レビューである(2018年2月18日時点)。 「絶賛」一色というわ…

岡崎次郎『マルクスに凭れて六十年 自嘲生涯記』

ぼくが最初に読んだ『資本論』は岡崎訳 ぼくが最初に『資本論』に接し、そして第3部まで初めて読み通したのは、大月書店の全集版である。大学の入学時に買い、卒業直後に読み終えた。 この全集版の扉には「マルクス=エンゲルス全集刊行委員会」の「訳」と記…

吉田裕『日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実』

日本兵犠牲者は戦争末期の1944年以降の1年間に9割 『日本軍兵士』というタイトルだけ聞くと、あるいはサブタイトルの「アジア・太平洋戦争の現実」までを聞いても「ふーん…」としか思えない。 この本にどこに新味があるのか。 メインタイトルで損をしてい…

仲川麻子『飼育少女』1

『飼育少女』というタイトル、首に鎖が繋がれた表紙。 初めから、性的なニュアンスを誤解させるように作られている本作には、どうしようもなく性的な空気が漂う。 いや、本作の内容は、表面的にはそのような部分は一片もないことになっている。 何しろ、1話…

ローマー『これからの社会主義 市場社会主義の可能性』(その6)

はい、ローマーの『これからの社会主義』の書評です。で、今度こそ本当に最後ですわ。もう前の話とか忘れている人が多いですかね。別にいいんすけど。 ローマーが『これからの社会主義』で紹介した「市場社会主義」は、「クーポン型市場社会主義」って言われ…

大塚志郎『漫画アシスタントの日常』

大塚志郎『漫画アシスタントの日常』を読むと、「スゲエ…漫画家ってこんな作画の苦労しないといけないの……」とアナログ作画の苦労を知らないぼくは慄然とする。 題名どおり、デビュー直前の主人公の、アシスタントとしての生活・生態、技術的苦労を描き、さ…

澤宮優・平野恵理子『イラストで見る昭和の消えた仕事図鑑』

今後の新しい雇用に耐えうるのはむっちゃ知的な訓練を受けた人か、めっちゃコミュ能力が高い人では AIは仕事を代替するけども失業は増えるのか? みたいなことを考えているときに、日経の社説を読んだ。 AIやロボットが雇用に及ぼす影響をめぐっては、経済…

大分大学経済論集で研究対象にされたぼくの2著

「しんぶん赤旗」(2018年1月16日付)を読んでいたとき、由比ヶ浜直子*1の次の文章が目に止まった。 発信されたものの多くがその場限りで流れ去っていくなか、時として何度も味わったり、眺めたり、手触りを確かめずにはいられない文章に出会うことがありま…

「EX大衆」で『電影少女』論――『エロマンガ表現史』にもふれて

双葉社から出ている雑誌「EX大衆」の2018年1月15日号に、桂正和『電影少女』について書きました。 一つはグラフィックの点から。 もともと編集の方からは、少女論としてのご依頼があったんですが、桂の場合はどうしても絵柄から魅力に迫るという点が外せな…

池谷理香子『シックス ハーフ』

志村貴子『放浪息子』2巻の感想を書いたのはもう14年前になる。 http://www1.odn.ne.jp/kamiya-ta/hourou-musuko2.html 『放浪息子』はトランスジェンダーの話ではないか、という意見に対して、ぼくは次のように書いた。 志村の漫画を「トランスジェンダー…